隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ 13話


※ 隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 湯冷めた頃に 13 ~

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 こちらを見下ろす瞳は熱い。

 けれども、燃え上がっているというよりは、焦れて燻っているように見受けられた。

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 わたしが雀ちゃんの指に舌を這わせながら、上目遣いに見上げて視線を合わせたとき、彼女は確かに「う」と言った。
 あの喉の奥で呻くような声は、わたしの色気を感じ取った時によく発せられるものだ。

 そして手首から読み取る脈拍が数秒前と比べて速くなったのが何よりの証拠。

 明らかに彼女は興奮している。

 ……いや。確かに、さっきまではわたしの耳を攻めたり、その前は深いキスしたりと興奮する要素はたくさんあった。それは確かなんだけど。
 指を舐めさせるという行為を自ら命じたくせに、それを見て余計興奮するだなんて。

 人のことをヤラシイだとか言う前に、自分だってヤラシイじゃないの。と思ってしまう。

 そして同時に、わたしが雀ちゃんを興奮させているのかと思うと、嬉しかった。

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 わたしは彼女と合わせていた視線を外して目を伏せ、目の前の立てられた二本指を一緒にぱくりと咥えた。
 人差し指の第一関節までを口内へ招き入れて、舌をべったりと広げて指の甲にあてる。爪のツルリとした感触とその向こうにある皮膚のざらりとした感触。指の関節の所は皺が寄っていて余計ざらついて感じる。

 歯をあてないように気を付けながら舌を持ち上げるようにして二本の指の背を舐める。そうしながら顔を少し引いて、指の第一関節あたりまでの外周をくるりくるりと舌撫でた。左回し、右回し、と舐めていると、自分の舌のやりやすい回し方があるのに気が付く。

 多分、食べ物を食べるときにもそちら側で噛んでいる事が多いのだろう。

 雀ちゃんの指の先をわたしの唾液で濡らし尽くしてから、口を離す。

「ねぇ……気持ちぃ?」

 脈動を捕らえている手とは反対の手を自分の口元へやって、唇を濡らす唾液を拭いながら彼女を再び見上げた。

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 目が合うと、明らかに動揺した様子ですぃ、と目が泳ぐ。でもすぐに視線がわたしの顔へと戻ってきて、彼女は言う。

「指舐められてるだけなのに、なんでこんな気持ちいいの」

 気持ちいいんだけど……拗ねる。納得いかない。不思議だ。照れ隠し。等々がごちゃ混ぜになった、ちょっとだけ不機嫌な声音。

「わたしの好きがいっぱい詰まった行為だから、気持ち良くて当たり前なの」

 にっこりと笑んでみせて、更に何かを言われる前に、目を伏せて再び指を咥えた。

 だって、こういうのが上手っていうのは多少なりとも経験がモノを言うのだからそこを突っ込まれて聞かれると……過去の経験人数とかの話になるからまた雀ちゃんが嫉妬しちゃいそうなんだもの。

 世の中、知らない方がいいコトも、たくさんあるのよね。

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 咥えた指を今度は喉奥ギリギリまでゆっくりといれてゆく。はっきり言って、これは苦しい。嘔吐反射が出てもおかしくないくらいは、口の中へ入れてるんだから。

 昔、男の人のを気持ち良くしてあげたいからって奥まで入れ過ぎて思わず「うっ」となった瞬間に頭を押さえつけられて、そのまま噛んでやろうかと殺意が芽生えた事があった。いくら自分が気持ちいいからって、アレはない。
 その苦しさが分からない男は、一番太い魚肉ソーセージを喉奥まで自分でいれてみて欲しいと思っている。

 その点で言うと、雀ちゃんは優しい性格だからか、むしろ彼女の方が焦って指を引き抜こうとした。
 多分、そんなに入れたら苦しいでしょ、とか心配してくれたんだろう。

 まぁ男性と違って舐めることで理性が保てなくなるような快感は生まれないから、そういう余裕も出来ているんだろうけど。

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 余裕のある状態の彼女の指を、心配させるやり方で舐めても仕方ない。ある程度に留めて、気持ち良くしてあげることだけに集中しよう。

 奥からずるると指を引き抜く。その際にも、指と指の間に舌を捻じ込むみたいにして舐め上げながら指を抜いた。そのまま爪の先にキスをして、今度は指の腹側に舌を這わせてゆく。

 ゆっくり、ゆっくりと手の平方面へと舐めながら、手で、折り曲げられている状態の三本指を広げさせる。
 指の根元までたどり着くとそのまま通過して、手相で言うところの感情線の端にぶつかる。舌先にその線の窪みを感じたら、舌先を固く尖らせて、感情線を小指の方へ向かって舐めていく。

「……っ…」

 詰めていた息を開放しては、また詰めて。頭上で雀ちゃんの呼吸がかすかに荒くなってゆくのを音と、頭や肩にかかる息で察知する。

 もっと、もっと、気持ち良くしてあげたい。

 さっきまで腰が疼いて、挿れて欲しいとさえ思っていた体なのに、どうして相手を気持ち良くさせたいなんて感情が湧き上がるのか。
 こんなにも胸が熱くなるのだから、答えが分からない訳がない。

 雀ちゃんが、好きだからだ。

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