隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ 10話


※ 隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 湯冷めた頃に 10 ~

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 彼女の瞳の中に、何かが燃え上がるのを、わたしは目にした。

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 ふっと笑みの吐息を吐いたその口元には、やはり笑みが浮かべられていて、なにか良くない予感がわたしを襲う。
 この負けず嫌いな性格が時としては役立つけれど、今回ばかりは、逆効果だったかもしれない。

 というか……思い返せばいつもそうだ。
 こういうえっちな場面で何か雀ちゃんに挑発的な事を言われたりすると、それを上回るような相手を煽る物言いや行動をしてしまう。

 実際こちらも十分に興奮しているし、もっと触れて欲しい想いがあるせいか、毎度毎度、反省もせずにそんなことをしてしまう。

 その果てに、翌日足腰が生まれたての子鹿のような状態になるのは、分かりきっているのに。

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 反省なのか、悟りなのか。頭の中でぐるぐるとそんな考えが浮かんでは消えた。
 彼女の燃え上がる瞳を見つめたままのその思考は、雀ちゃんからのキスによって途絶える。

「ん……む…」

 先程と比べ強引なその口付け。望むところだとばかりに、彼女の後頭部に回した手でさらに引き寄せる。……と、こういう所が、負けず嫌いで良くないとさっき反省したばかりなのに。

 あぁほら。挑発を受けたせいなのか、キスの合間に熱い吐息を漏らした雀ちゃんが、今日の中で一番深いキスを与えてくる。

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 ジン、と痺れる後頭部と、胸、腰。
 深くまで舌が侵入してきて、くちゅりと音を立てるけれど、浴槽の湯が壁にぶつかる音にかき消されて、浴室には反響しない。
 けれど、確実にわたしの耳には届いたし、脳を揺らすほどの色気を感じた。

 いつの間に閉じていたのか、瞼の裏が一瞬白くなったほど、その強引さに酔いしれた。

 思う存分、わたしの口内に侵入した雀ちゃんは、気が済んだのか息が苦しくなったのか、ずるりと舌を引き抜いた。
 もちろんわたしの息はあがりきっていて、解かれた口付けにあわせて瞼を開けながら、荒く息をつく。

 酸素を求めて大きく息を吸うわたしを見下ろす彼女の目は、まだ、まだまだ、鎮火しそうにない。

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「愛羽さん、どうしてさっきから、キスだけなのに、腰動いてるの?」

 お湯に浸かっているせいで火照っているのに、更に、カッと頬が熱くなる。
 キスに夢中になっていたせいで、自覚がなかったのも、余計恥ずかしさが増す要因だ。

「そんな強請るみたいに動かして」

 詰る言葉を甘い声音で告げる雀ちゃんが、わたしの耳にぐっと顔を寄せる。唇がキスをするように軽く耳たぶに触れて、彼女がすぅっと息を吸う音さえ聞こえた。

「かわいいね」

 低く低く。それでもまだ掠れるほどではない低音で、囁かれる。
 熱い湯の中なのに、背中をゾクゾクしたものが走り抜けて、くっと眉を寄せた。

 キスで濡れた唇が耳朶を下から上へと舐めるように這い上がってゆく。耳の皮膚は薄いせいか、その熱と柔らかさがダイレクトに伝わってきて、耐えきれずに、彼女の後頭部の髪をくしゃりと握った。

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 声が漏れそうになって、思わず息を詰めて、それを止める。波をやり過ごした所で止めていた呼吸を復旧させて、酸素を体内に取り込んだ。

「声、我慢せずに聞かせて欲しいんだけど?」
「や…だ……」

 こんな場所で声をあげれば、反響して、どうしようもないくらい大きく聞こえてしまうはず。そのくらい、この快感にとろけた頭でも考え付く。
 耳のすぐ傍で聞かされる大好きな人の声にまた腰を疼かせながら彼女の要求を拒否すると、雀ちゃんの口がゆっくりと開かれた。

 その後、自分の耳がどうされるかは、考えなくとも予想がつく。

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 わたしの体温も随分と上昇しているはずなのに、彼女の舌はそれよりも熱い。何度なんだろうと頭のどこか冷静な場所で考えながら、わたしは首を竦めた。それによって一度離れた舌が後を追いかけるようにしてまたわたしの耳を捕らえて、ねっとりと這う。

「…ん、ぁっ……ク、ぅんっ……」

 我慢しようにも出来ない。けど、せめて、漏れ出る声の音をさげようと息を詰めた。

「駄目。こんなとこで息止めたらのぼせるよ」

 わたしが呼吸を止める原因を作っているのは貴女なのよ、と言ってやりたいけど、与えられる快感に頭が蕩けそうだし、彼女が言う通りにのぼせかけているのか、上手く頭がまわらない。

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 雀ちゃんの忠告を無視し続けていると、ずっと握り合っていた手がするりと解かれた。そしてその雀ちゃんの手がわたしの口元へ近付いてきて、人差し指が唇の間に捻じ込まれた。

「開けて」

 命じたあと、彼女はまるで唾液を耳全体に擦り付けるように舌を平べったくして舐めてくる。はしたないまでのその行為に煽られたように、わたしは思わず合わせていた筈の歯を開いてしまった。

「そう。いい子」

 舌に触れる指の腹と、甘やかな褒め言葉に視界が揺れた。

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