※ 隣恋Ⅲ~夕立騒ぎ~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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中指。
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~ 夕立騒ぎ 3 ~
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他の指は置き去りにして、蕾を乗り越え、あたりに散らばる愛液を纏いながら柔らかくて温かい場所を進んだ。
例えナカへ入っていなくとも、ここは十分温かい。
指の腹側へ感じる彼女の体温や、温もりを纏う愛液の滑り。それらにゾク、ゾク、と背筋が興奮を訴えてきた私は、自分の息に熱が籠るのを感じた。
もちろん、口付けの最中だから私の息の熱は、彼女も察知したことだろう。
薄目をあけて窺ってみると、愛羽さんは眉をきゅうと寄せている。
耐えるようなその表情を見た私が、手加減を思い出す人間ならよかったのだけど……。
湧き上がるのは、加虐心。征服欲。
このまま指を挿れたら、どんな反応を見せてくれるのか。
もっと感じてくれるのか。
それが知りたい。
貴女の反応が見てみたい。
身勝手な欲に後押しを受け、私は更に中指を奥へと進めた。
「……ァっ、ぁ……っ」
入口の縁を見つけた指先の感触に目を細めつつ、徐々に関節を曲げる。
置き去りにした他の指との距離が開けば開くほど、動き辛くなるけれど構わない。
攣った時は攣った時だ。どうにか誤魔化すしかない。
もしもそうなった時にはきっと過去の、考え無しに突き進んだ自分を恨むのだろうなと未来の自分を容易に想像できる。けれど、ここで止める事もできずに、私は中指を曲げながらゆっくりと入口の縁を乗り越えた。
普段の行為よりも格段に早い。
こちらの挿入の意思と動きを感じ取った愛羽さんは、迫る指から間違いなく快感を受け取っている嬌声に、若干の焦りをまぶして喘ぐ。
もう……? と云わんばかりに、私の右手首を咄嗟に掴んでくる仕草に、何故か、こちらの腹の中が熱くなる。
征服欲、支配欲。
大事にしたいひとなのに、このひとの全てを自分の中へおさめたい。
私だけのものに。
独り占めをしたくなる。
言う事をきいて欲しいし、私の事だって同じように求めて、独り占めして欲しい。
だけど、私と彼女の意見が合わないときは、自分の言う事を強要したくなる。
そんな悪質でぐちゃぐちゃの心が煮えている。腹の底はカッカと熱を持って、私の全身をさらに加熱してゆく。
そしてその熱のせいか、焦ったように私を制止する動きがあれば、彼女の意に反する行動を取りたくなってくるのだ。
早いと言われたらより早くしたくなる。
待ってと言われたら一秒だって待ちたくなくなる。
そうして攻め立てた方が、相手は、私に縋る手を伸ばすと知っているから。
だから待ちたくなくなるんだ。
そう思っていた。
けれど。
元々私は早く挿れたかったんだ。
愛羽さんに止められたから、挿れたくなったとかじゃあない。
彼女が発端ではない。元々だ。
思考が霞掛かってぼんやりしている。
自分が言いたい主張はなんだっけ? と首を傾げたくなる一方で、そうそうそういう事と納得しかけている自身も居る。
正直自分の脳味噌がよく分からない。
けれどもう中指の爪の根まで愛羽さんのナカに入っている。
――もっともっと根本まで。
求めて、欲しがっている声が脳に響くし、指の先端だけ温かいのはとても寂しい。
「愛羽さん」
声に出して、呼んだ名前。
恥じらいと、焦りと、若干の快感を匂わせる甘声を零すひとが、私を見上げてくる。
至近距離で、目があった。
いつもより潤んだ瞳が綺麗。そう思っただけでまた体内の熱があがって、このひとが欲しくなる。
どう、言えば伝わるのか。
上手く伝える術が……否、言葉が分からない。
知っている言葉の内の、どれを選べばいいんだ。
まとまらなくなってきた思考で考えて、私は言った。
「いれたい」
飾りも、整えも、気遣いも出来ないで吐いた欲望。
貴女にいれたい。
だから脚を緩めてとも、早く風呂を済ませてベッドに行こうとも、言えてない。
ただ、いれたい、とだけしか、告げられなかった。
自分勝手な要求を、愛羽さんはどう思ったのだろう。
それを尋ねる機会は、彼女からの口付けで奪われた。
ふにりと柔らかな感触が私の唇へ重なってきたかと思えば、愛羽さんの手が、肩へ触れた。これは私の二の腕を掴んでいた方の手だ。
指は細くて、手のひら自体も小さくて可愛いそれは、肩を支えにするようくっと力みながら掴まった。
重みがかかる、と言い表すのを躊躇うほどの軽さだったが、それが私の肩へ加わったあと、すぐ、中指以外の進行を妨げている壁が……緩んだ。
両脚の緩みが何を示しているのか。それを理解した瞬間、私は離れてゆく彼女の唇を追いかけずにはいられなかった。
だって、私がただ一言、己の欲望のみを告げた。それだけで彼女は私を、私の要求を受け入れてくれたのだ。
脱衣場から浴室へ引っ張り込まれた愛羽さんが、嫌がる素振りを見せなかった。それは行為の受け入れの表れ。その時から、結局は、私の要求は受け入れられるべきものとして確定していたのかもしれない。
相手の動きを察知してその先の展開を想像。それを元に応じた動きで行為を進めてゆく。
これは、セックスにおいて当然なのかもしれない。
だからなんら驚くことも、感動することもない。
そういう類の、当たり前のことだったのかもしれない。
けれど、私にとって、自分のしたいことを、したいタイミングで受け入れてくれた。この現実は、どうしようもなく心が震えるものだったのだ。
飾りも出来ず、整えもせず、気遣いもない欲望を受け入れて、脚を開いてくれた恋人に、私はこのうえなく、熱いものが込み上げるのを感じた。
「あいはさん」
名前を呼んだ。
それだけでやはり、胸が苦しくなるのは何故だろう。
苦しいだけではなくて、熱い。胸を中心に、突き抜けた背中も、肩も、首も、顔も耳も頭の中だって、胸から下だって、手の、指の先だって。
なにもかもが熱いと感じたけれど、私の指以上に、中指の先が埋まっている彼女のナカの方が熱かった。
大好きなひとの名前を呼ぶ折に離した唇は、彼女の忙しない呼吸がはふはふと吹き付けられている。
まだ、そこまで太い物体を挿れている訳でもないのだが、彼女の息があがっている。その原因は……?
分からなかったけれど、彼女がピタリと閉じていた太腿が緩んだ意味はすなわちゴーサイン。
まぁ……本人は「ゴー」と言うほど大歓迎の心境ではないかもしれないけれど、申し訳ないが、こちらは我慢がもう出来ない。
身体中が熱くて仕方ないのだ。
貴女のナカに入りたくて仕方ない。
私は愛羽さんの唇をちゅうと吸ってみせたあと、中指を追いかけるようにして人差し指を入口の縁からゆっくりと進め、二本指を彼女へと挿し込んだ。
「ぅ……、ぁ……っ」
異物感を感じてだろうか。愛羽さんの眉間には耐えるような力みがこもり、皺を作る。
こちらからのキスを拒否する訳ではないだろうが、応じる余裕が途端に失われた様子で、彼女が顎を引き、顔を伏せがちに「ンんん……」と私の肩へ爪を立てた。
立位という慣れない行為をさせているからだろうか。入口がひくついている。拍動よりも速いペースだ。この痙攣にも似たひくつきを、何と言い表せばいいのか。
強いて……いや、言える確かな事があるとすれば…………えろい。それに尽きる。
歓迎かと勘違いしそうになる程、彼女の入口がひくつきながら二本指を招くよう蠢く。
奥へ奥へ。もっともっと。
そう誘われているような錯覚をおぼえながら、私は錯覚をあえて錯覚と認識せずに指を進めていく。
肘と手首を上手く曲げながら、ぐぅぅ……っと押し入る愛羽さんのナカ。
熱いと言うよりも、あったかいと言いたくなるそこは溜め息が零れそうな場所だ。
「ん、ぁあぁ……っ……」
一方浴室に響き渡ったのは、本当に溜め息を零したような、肺の中身を全部出すみたいな喘ぎ声だった。
しかしそれは甘さがない訳ではなく、でも、焦りがゼロになった訳でもない。
感じていない訳でもないし、期待がなかった訳でもない。
なんとも複雑な感情を乗せた嬌声は、暴走を引き起こしそうな程、私をくらくらさせる。
俯きがちとは言えど顔と顔の距離は近く、彼女が喘げば蒸し暑いくらいの浴室内でも私の肌は呼気の熱を感じ、リバーブの強い甘声は鼓膜を通って脳を揺さぶった。
寒くもないのにゾクゾクとする背筋やうなじには、攻め手だけが得られる独特の快感が広がり、私は奥歯を噛み締める。
「ァ…、はっ……ん……っ」
浅い呼吸は相変わらずだが、その合間に堪えきれず零れてくる上擦った声は極上だ。
どうしよう、かわいい。
どうしよう、えろい。
どうしよう、どうしよう。
大事にしたいのに、強引にしたい。
そんな矛盾まみれで凶暴な考えを抱くのは昂っているせいもあったけれど、何しろ彼女自身が先程そういう誘い文句を告げたのが一番の原因だった。
『……強引にしても、いいから』
彼女は確かに先程こう言った。
言ったけれど、強引にしてもいいだなんて、ほんと、言っちゃだめだ。
普段からそうしたいと良くない欲望を抱いてるバカな私に、言っちゃだめ。
鬼に金棒を渡しちゃだめだ。
不用意にそんなものを渡せば、貴女の身の安全が脅かされるのに。
ほら。今だってこの通り。
調子に乗って抑制の利かなくなったバカな私に、二本の指を先から根本までずっぽりされてしまったんだから。
煽るのはもちろんだけど、下手な許可だってしちゃ駄目だと思う。
けど。
その一方で。
もっと可愛いとこ見せて欲しい。
そう願っているのも事実で、自分にはほとほと呆れる。
更に求めてしまっている自分をコントロールしようと努めるも……なかなかどうして、魅力的な恋人を前にしたら、上手くいかないものである。
思いきった挿入に襲われ、忙しなくひくついている入口は、侵入物を確認するみたいに一度ひっくんと大きく波打った。
同時に奥では二本指を握るみたいにきゅっと窄まる内側の壁。
「……っだめ、ぇ……っ」
いやいやをするよう頭を振って私に額を擦り付けてくる彼女が、可愛くない訳がない。
でも、愛羽さん。
だめって言ってるけど。私は動かしてないよ?
愛羽さんがひとりで、締めて、動いて、感じただけ。
そう言って現実を教えてあげたいのに、あまりの婀娜に眩暈が起きる。そして込み上げた衝動のままに彼女の顎を引き上げて強引に唇を奪ってしまった。
そのうえ、二本同時に沈めた指で内壁を掻くよう動かしながら、顎を持ち上げていた手を胸へ移し、尖りきったその頂を撫でる始末。
自分に対するコントロール力はどこへ行ったのか。捜索願を提出したい。
「っん、ふ……ぁあッ」
重ねていたはずの唇は、大き過ぎる快感でいやいやとかぶりを振った拍子に外れ、途端に零れるクリアな嬌声に、私はゾクリとした。
――やばい……でも。
それでも、足りない。
ああぁ……。
もっと、めちゃくちゃにしたい。
腹の底で煮立っていた欲望が噴き上げる。
だめだと自制を掛けたけれど、そんなもの効きやしない欲望の噴火。
「ぁん……んっ、は、ぅ……っ」
この噴火を止められるのはきっと愛羽さんだけなのに、彼女は私の肩へ爪を立てながらいっそう、可愛い声を聞かせてくれるので堪らない。
「もっと……きもちよくなって……?」
恋人へ話しかけているはずなのに、うわごとみたいなふわふわした自分の声。
いやいやそうじゃなくて。もっとじゃなくて、休憩とか、違うことを言うべきなのに。自分の暴走が止められない。
それどころか、ちゃんと、伝わったのかな……? と自分の言葉が伝達できたか不安になる。
続ける気満々な自分の頭に、冷水をぶっかけてやれば多少は彼女を気遣うことが出来るだろうか?
「もっ……と、って……」
はふはふと忙しない呼吸の間に、愛羽さんは紡ぐ。
それまで目を閉じていた彼女が切なげに寄せた眉の下でうっすらと瞼を開き、「きもちぃ……のに……っ」だなんて言ってくれてしまうから、私はついつい、だらしなくへらりと笑った。
多分愛羽さんは、既に気持ちいいのだからもっとだなんて……、という意で発言したのだと思う。
だがそんな嬉しい事を言われて、こちらがより意気込むと、賢い彼女は気付けなかったのだろうか?
疑問は湧くが、それを口にすることもなく、私は背を丸め、身を屈めた。
目的は、胸の頂の片方を咥えるため。
両胸の頂を、それぞれ手と口で。
ナカを二本指で攻め立てる。
頭の中にはもう自分を制止する動きも考えもなくなっていて、私はただ、彼女を気持ちよくしてあげたい。その欲に忠実だった。
途端、浴室には愛羽さんの喘ぎ声が反響して、私の耳を、脳を、かき回す。
肩と手首に突き立てられた彼女の爪。
そんな痛みにすら、欲情をかき立てられ、ゾクゾクがとまらない。
「ひぁっ、ア、やだぁっ、や、ぁ、ァアアッ」
「……ハ、ぁ……っ」
彼女の喘ぎ声に紛れて、私の口からも、僅かだが声が漏れる。
愛羽さんの乱れる姿が、声が、私を刺激する。
腰の奥に響く快感が、その大きさを増すけれど、それに浸っていたい訳じゃない。
私はただ、愛羽さんに気持ちよくなって欲しい。
こりこりになってきた尖りを舌で転がしながら、もっと。もっと、と、底なしに、彼女の嬌声を欲しがる。
だが、「なんか今日……すごいエッチな気分」と言っていた愛羽さんだ。
その時は、早かった。
「やっ、や、イっちゃいそ…ぅ…っ!」
浴室にある様々な音を掻き分けて、彼女の報告を受け取った私は、舌をべろりと尖りに擦り付けながら「いつでもいいから」と告げた。
不明瞭な発音でこちらの言葉がきちんと伝わったかどうか定かでなかったけれど、切羽詰まった嬌声が上擦って、跳ねて、震えたはじめた頃。
「ぁ、ぁっ、ア……~~~~ッイ…クッ……!」
乱れた姿を、晒して。
めちゃくちゃに、なって。
最後に、声にならない声で、私を呼びながら、愛羽さんは身体を痙攣させ、絶頂を迎えた。
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