※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 50 ~
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きゅうぅと真綿で心臓をきつくきつく、締め付けられた気分だった。
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わたしだって、離れたくない。
放してほしくない。
このまま雀ちゃんに組み敷かれて、火照った身体に手を這わせ、舌を這わせ、隅から隅まで食べ尽して欲しい。
中心が燃えるように熱い身体をどうにかできるのは、雀ちゃんだけなのだ。
そんな想いからか、鳴り止まないバイブの音たちをBGMに、わたしはいつも以上に長いキスを止めることが出来ないでいた。
体勢的に、上になっているわたしが切り上げないと、この愛を交わす行為は終わらない。
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耳の奥にこびりついたように何度も脳内で再生される先程の台詞。
今日聞いた中で一番熱のこもった「放したくない」だった。
普段遠慮がちで、自分の欲求など後回しにするタイプの雀ちゃんが、ああも熱心にわたしを求めてくれたその台詞に応えてあげたい。
その想いが、息継ぎで一瞬離れた唇を、磁石のように引き合わせる。
啄む唇に味なんて無いはずなのに、甘く甘く、砂糖菓子のような味を脳に伝えてくる。
「……ふっ、ぁ……ンン」
声が漏れると同時に腹圧がかかったのか、体内からまたドロリと愛液が溢れた。
もう、本当に、そろそろ終わりにしないと、雀ちゃんの太腿にさえ、染みを作ってしまいそうな程に濡れている。
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「……愛羽」
口付けの合間に、そっと名を呼ばれた。
甘くて柔らかな声色にじんと胸を痺れさせていると、雀ちゃんは胸の膨らみにあてがってその先端を弄っていた手を服の中から抜き取った。
離れた温もりに寂しさを覚えていると、その手はわたしの頬へ近付き、添えられる。
「仕事がひと段落するまでだから」
「……ぇ?」
口付けで乱れた呼吸を整えながら、彼女の言葉の意味を探る。
「今すぐベッドに連れていきたい愛羽を、放してあげられるのは、仕事がひと段落するまで」
雀ちゃんの瞳には炎がいつも以上の熱をゆらめかせているというのに、彼女は、優しく甘く、穏やかな声色で、わたしに猶予を与えてくれた。
「それ以上は待ってあげられないし、待つ気もない」
「……」
「戻ってきたら、私が満足するまで、絶対止めないから」
穏やかな声音なのに、わたしの身体にブルリと震えが走る。
その理由は言わずもがな、彼女の瞳と台詞。
そして、期待。
電話をとって、緊急の仕事を片付けて、彼女の腕の中へ戻ってきたら、わたしはどうされてしまうのか。どれほどの愛情と快感を注ぎ込まれてしまうのか。
無意識にそれを想像して、唇から熱っぽい吐息を漏らした。
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そんなわたしを見上げた雀ちゃんは、満足そうに瞳を細めて、再度、頬を撫でてくれた。
「だから、ちゃんと覚悟して、戻っておいで」
甘く、甘く、甘く、わたしの胸を締め付ける台詞を告げた雀ちゃん。
わたしよりもずっと年が下のくせに大人びたことをする彼女に、そして、自身の色欲に、支配されていたわたしは、冷静さを幾分か取り戻すと同時に、恋人の魅力にノックダウンされた。
だって、さっきまであれだけ互いに昂り、求め合っていたにも関わらず、一足先に冷静さを取り戻し、こちらにもそれを優しく移してくれた彼女は、弱冠二十歳。
自分がその年齢のときに同じことが出来たかと問われると、否と即答せざるを得ない。
これを優秀という一言で片づけても良いのかは分からないが……この優秀すぎる恋人の魅力を十二分に見せ付けられたわたしは、幼子のようにこくんと頷くことしか出来なかった。
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