※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 49 ~
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まるでそれが分かっていたかのように、再びローテーブルがガタガタと音をたてるのを、雀ちゃんは呆れた顔をして、見つめた。
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けれど、おいてけぼりを食らわされたのは、鳴る携帯電話の主であるわたし。
だって、雀ちゃんてばあんなふうにリアルに想像できるような愛撫で煽ったあとに、放置なんだもの。
鳴っている携帯電話を睨むのに忙しいと言ったほうが妥当かもしれないけど。
「雀ちゃん……」
貴女がほんの1分足らずでわたしに与えた愛撫や言葉だけで、わたしはこんなにも息を乱して、心臓を走らせているというのに。
おまけに、下腹部は何もされていない今でも、ヒクヒクとその孔を疼かせている。
下着がどうなっているかなんて容易に想像できるくらいには、あの身体の中から液体が溢れる感覚を味わっている。
まるで生理二日目のようだな気分だ。
「なんであんな鳴るかな」
いらいらをぶつけるように、雀ちゃんはわたしの呼びかけを無視して、首筋に噛みついた。
「アッ」
短く上げた嬌声は、どうやら彼女の情欲を更に煽ってしまったらしく、肌を挟む歯が離れたあと、熱の篭った舌でべろりと舐められた。
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まだ整っていない息を再び乱されて、わたしは首を竦めた。その瞬間にはプツリと着信が切れて、部屋は静かになった。
「今度は私のが鳴る気がする」
「ぁ………え…?」
舐められた肌には独占欲の印のように唾液が擦り付けられていた。そこに掛かる熱い息。その呼気によって肌は一瞬温められるが、すぐさま唾液の蒸発と共に肌に冷気を宿す。
めまぐるしく変化を与えられる肌に思わず目を閉じるけれど、彼女の言葉にひっかかりを覚えて、薄く瞼を開けた。
「まーさんじゃないかなぁ。電話」
執拗なコールの主を、雀ちゃんはげんなりした顔で推測してみせた。
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わたしと雀ちゃんの電話が交互に鳴っているし、その両者の電話番号を知っている人物と言えば、森真紀だ。
確かに言われてみればそうだし、と思う一方、雀ちゃんが予言している彼女の携帯電話への2度目の着信はまだない。
「あーーー……鳴ったらまーさんのこと嫌いになりそう」
げんなりした様子でわたしの肩口に頬を寄せ、名残り惜し気に鎖骨を舐める雀ちゃん。
それと同時に、相変わらず、胸の頂きを親指で撫でているその器用さに感心したいけれど、舌の動きに似せたその感覚に身体が跳ねるから、ちょっと、その手をお休みして欲しい。
でなければ。
「ァ、や……ぁ……っ、は……んっ……」
息を詰めて声を堪えようとしても、それこそ、快感を与える手が止まってくれなければ、わたしは抗いようもなく、声を漏らしてしまうのだから。
「こんなに可愛い声で誘ってくれるのに」
ちが……誘ってない。与えられた快感に、ただ喘いでるだけだ。
言い返そうとするけれど、鎖骨を噛まれて、さらに胸を撫で回されてしまうと、背を出来るだけ丸めて、声を堪えることしかできない。
まぁそれも、背中にまわっている彼女の片腕で、猫背程度にしかできないのだけど。
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そうこうしていると、本当に雀ちゃんの携帯電話が鳴り始めて、ディスプレイも見ずに雀ちゃんはぼそりと呟いた。
「まーさん、きらい」
もういいゲーム紹介してやんない、とか、貸してるゲーム早く回収しに行かないと、とかぶつぶつ言っている。
そんな中でも、手だけはしっかりと胸を揉んでいるから、抜け目ないというか執念深いというか。
どうやら雀ちゃんは、ここまで電話が鳴るとさすがに、何か仕事で緊急連絡かもしれないと察してくれたようだ。だけど、心の整理が追い付いていないようで、悪あがきのようにわたしの胸から手を離してくれない。
きっと、次にわたしの携帯電話の着信があったときには、手を離してくれるのだろうけれど……。
「ん、ぁ……っ、す、ず……め、ちゃ」
そんな執拗に攻められると、息があがってすぐに電話に出られないのではと一抹の不安を覚える。
息も絶え絶えに、訴えるよう彼女の名を呼ぶと、こちらを見上げる茶色の瞳。
「放したくない」
告げられた心根と、向けられた熱っぽい瞳に、吸い寄せられてわたしは彼女に口付けた。
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