※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 48 ~
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肩を跳び上がらせてから数秒間、驚きに固まった。
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正常な向きでソファに腰掛けていないわたしは、携帯電話が置いてあるローテーブルに背中を向けていた。
その状態でまさに「抱いて」と告げようとしていた……というか、もう途中まで言い掛けていたのに。
突然バイブとそれによってガタガタとローテーブルが打ちつけられる音を浴びせられると、心臓が止まるかと思う程には驚いた。
そして、それ以上に。
「……チッ」
と舌打ちをする人物が、わたしの肩越しに携帯電話を鋭く睨んだことにも、驚いた。
天使だとか、優しいだとか思っていた雀ちゃんがまさか、舌打ちをするだなんて。
普段あんな丁寧な喋り方をするような子が、忌々しそうに眉間に皺を寄せて、慣れたように舌打ちしたのだ。
着信にも驚いたが、それ以上に彼女が舌打ちしたことに驚いた。
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目を丸くして見下ろしていると、雀ちゃんがごそ、と手を動かした。
服の中でブラジャーを外した手が、前へ回ってきて、ぺたんと手のひらを胸のふくらみに押し付けられる。
「ひゃ」
素手で素肌に触れられるとなると、やはり服越しとは違う。
指の凹凸から温もりまで、ダイレクトに伝わってくる雀ちゃんの感触に、一瞬にして携帯電話に奪われていた意識が、目の前の恋人に戻ってくる。
それでも相変わらず、携帯電話はけたたましい音を立てているが。
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「邪魔、入り過ぎじゃない?」
「そ、そう?」
鳴っている回数はわたしの携帯電話が多いので、「雀ちゃんの携帯電話だって鳴ったじゃないの」と言い返すことはできない。
誤魔化すような相槌を打ってみせると、不機嫌さを隠しもしない彼女はクイと片眉を持ち上げてから、わたしの胸の尖りを指と指の谷間に挟んだ。
人差し指と中指の間か、もしくは中指と薬指の間か、どちらかだろうが、その正解は分からない指の谷間に捕獲されて、口を噤む。
「せっかくいい雰囲気だったのに」
確かにいい雰囲気すぎて「抱いて」と言い掛けていた。それを遮られてしまったのは何とも言えない後味の悪い恥ずかしさを残す結果になったけれど、と考えていると、雀ちゃんの指が、きゅうぅと胸の尖りを挟んだ。
「アッ、んぅっ……!」
いきなり強い刺激を与えられる。
許容範囲外の快感に背中を丸めて逃げようとするわたしの背には彼女の片腕がまわっていて、逃げることが叶わない。
「なんで、あんな、鳴る訳かな」
きゅうっと締め上げた尖り。解放されたかと思ったら、刺激で僅かにその硬さを増した尖りを指で小刻みに弾かれて、震わされる。
「ぁ、ぁっ、つ……、ぅんんっ」
時折、わざと爪でひっかくようにもして、小刻みに弾かれる尖りは、ますますその硬さを増して、与えられた刺激に喜ぶ様子をみせる。
わたしの口と違って正直な身体は、もう、焦らされたり、電話に邪魔されたりして、愛撫を後回しにされるのは我慢ならないようだ。
胸からビリビリと走る快感の雷が、腰や脳をジンジンと痺れさせて、口からは嬌声を絞り出す。
「こんなに愛羽が欲しがってるのに、邪魔するだなんて」
「ん、やっ」
最後に大きく弾かれて、雀ちゃんの攻めの手が緩む。
きっと、これは、小休憩なのだろうけれど、それだけでも十分ありがたいくらいに、身体が感じ過ぎていけなかった。
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雀ちゃんに翻弄されていたわたしには、いつ、携帯電話の着信が鳴り止んだのかは分からなかったけれど、息を整えながらそれが今は鳴っていないことに気付く。
けれどまだ、雀ちゃんの顔は晴れやかではなくて、眉間に縦皺を刻んだまま。
どうやらまだ、彼女の機嫌は直っていない。
「……あーもー……早く全部脱がせて、めちゃくちゃにしたいのに」
部屋着の上から背を抱き締めていた手が、わたしに爪を立てる。焦燥を表すようなその行動に、強く求められる喜びを覚え、下腹部からまた、じわ、と愛液が漏れた。
「ここだって」
掌で包まれていた胸の膨らみ。その中心を親指が円を描くようにねっとりと撫でる。その動きは舌さながらの柔らかなもので、彼女の口に含まれたときの記憶を彷彿とさせる。
「もっとかたくなるまで舐めて、嫌って言うまで喘がせたいのに」
ねろぉ、と親指が下から上へと尖りを撫でて、背中が総毛立つ。
項や後頭部まで悪寒にも似た快感が走り抜けて、舐められてもいないのに、熱い息が零れた。
「でも、たぶん」
言葉を区切って、雀ちゃんは溜め息を吐く。
「また、掛かってくるよ」
やれやれと、彼女は首を振って、もう一度溜め息を深く深く吐いた。
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