※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 47 ~
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指先が、脇腹を撫でる。
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「ぁ、く」
部屋着の裾から簡単に侵入してきた雀ちゃんの手は、キャミソールの中にも簡単に侵入してきて、さわさわと脇腹を撫でた。
思わず漏れた声に目を細めたわたしが口を閉じると、雀ちゃんは悪戯を思いついた子供みたいな目をこちらにむけて、小さく笑う。
「なんか、いつもより感じてない?」
指一本。たぶん、人差し指だと思うけれど……その指がぴとりと脇腹に触れて、そのまま上へツツツとのぼってくる。
やがて人差し指はブラジャーの生地にぶつかって、直角に進行方向を変えて、背中へブラ伝いに這ってゆく。
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「ン、ぁ」
いつも綺麗に短く整えられた爪をもつその指でも、立てる角度によっては爪が肌に触れる。
雀ちゃんはわざとそうしているようで、背中へ向かう指から硬めの感触が伝わってくる。
どうやらわたしの気は随分と昂っているようで、彼女が言うよう、敏感になっているみたいだ。
指一本の爪の刺激でも、膝立ちで彼女の頭に腕を回して、ぎゅっと抱え込んで、身体に走る甘い稲妻に耐える必要があった。
「す、……め、ちゃ」
「んー?」
彼女が愛撫を始めた途端、これだ。
はぁはぁと息を乱し、縋るように彼女の名を呼ぶしか、できなくなる。
骨抜きにされるとはこのことかもしれない。
わたしが抱き込んだせいでくぐもった彼女の声が、余裕に満ちているのは、きっと、わたしを簡単に陥落させられる事を知っているからだ。
正直、わたし自身、今夜ほど素直に「抱いて」と言ってしまいそうな日は珍しいと思う。
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――……ていうかすでに、ベッドがいい、までは言ってるんだから……えっちしたいの認めてるようなものよね……。
脳内での呟きは彼女に知られる事はないけれど、今夜のわたしの行動を見ていれば、心境など手にとるように分かるだろう。
そしてその上、雀ちゃんの指一本の愛撫で、膝立ちがくにゃりと崩れてしまいそうな姿を見れば、何をどうすればいいのかも、火を見るよりも明らかだ。
「ねぇ、愛羽」
くぐもった声でも、呼び捨てにされると手が震えた。
いつもはきちんと「さん」を付けて名前を呼んでくれる子が、呼び捨てにしてくるのは随分と破壊力が大きい。
さらにそれに加えて、いつものような丁寧な喋り方でない彼女が珍しくて、新鮮で、さっきから胸がざわついて仕方ない。
「今から、どうされたい?」
問われた意味が分からなくて、頭の中で反芻しながら、腕を少し緩める。
わたしの返事を待つ間は、どうやら愛撫も中止してくれているようなので、ゆっくりと彼女の顔が見えるところまで腕を解いて、その顔を覗き込んだ。
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膝立ちのわたしを上目遣いで見上げる瞳は、どうにも、欲情成分が強いようで、見下ろしただけで、クラリとする色気がある。
――どう、されたいって……そういう、意味……?
ヒントを貰うまでもなく自分で辿り着いたその質問の意味に、顔を赤らめる。
「さっきは、ベッドがいいって言ってたけど」
肌から離れた彼女の一本指。
それが向かった先は、ブラジャーのホック。
「ベッドで、どうされたいの?」
片手でさも簡単に外されたブラジャー。
下着特有の締め付けから解放された胸が、ふわっと軽くなるに合わせて、わたしの顔は、ぶわっと赤らんだ。
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ブラジャーのホックを外したからと言って、肩紐から腕を抜かなければ、完全に脱ぐことはできない。
部屋着とキャミソールの下でぶらんと不自然にぶらさがったブラジャーにきもちわるさを覚えるけれど、それどころじゃない。
「ね、愛羽?」
赤い顔を覗き込まれて、首を傾げられて。
口元にちょっとだけ意地悪な笑みを浮かべられて、わたしは、陥落した。
じわ、と下腹部に溢れる愛液の感覚に後押しされるみたいに、口を開く。
「…………抱ぃ」
ヴーッ、ヴーッ、と携帯電話のバイブが着信を知らせて、ローテーブルをその振動が打ちつけ、けたたましく音を立てた。
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