隣恋Ⅲ~宿酔の代償~ 46話


※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 宿酔の代償 46 ~

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 鳴り続ける電子音を無視して、わたし達はキスを続けた。

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 いや、正確に言えばわたしは完全無視はしていないし、雀ちゃんの携帯電話が鳴り続けているのはとても気になるんだけれど……。

 強く抱き締められて、”電話なんかよりも貴女が欲しいのだ”と言わんばかりに求められると、誰だか知らないけれど着信の主に申し訳なく思う反面、優越感と喜びがじわじわと胸の内に増殖してゆく。

 そして、窘めることもなく、彼女からのキスを受け入れて、さらにはこちらからも啄み返す次第だ。

 先程自分は、迷うことなく電話に手を伸ばし、彼女を傷付けたというのに、わたしはこうして、雀ちゃんに守ってもらっている。
 その事を痛感した瞬間であったし、これがどれほど嬉しい事なのか理解した瞬間だった。

 その分、雀ちゃんに対する”好き”が増して、キスの熱も増す。

「ん……ふ、は……っ」

 ところどころに甘声を漏らしながら、体重の重心をお尻から膝に移してゆく。
 キスをしながらもわたしの動きを察したように、抱き締める腕を緩めてくれた雀ちゃんのスマートさに、胸が甘く締め付けられる。

 その心地良い痛みに瞼を震わせながら、雀ちゃんの肩をやんわりと押した。
 ソファから背中を浮かせていた彼女のそれが、背もたれに沈み、柔らかな素材に包まれて止まる。

 彼女をソファに寄り掛からせる事に成功したわたしは、軽く膝立ちになりながら、一度、唇を離した。

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 ほぅ……と乱れかけた息を整えながら、真上を向くに近い体勢の彼女を見下ろす。
 甘くて、優しくて、大好きなひと。
 優しい表情をしているけれど、黒眼な日本人にしては色素の薄い彼女の茶眼には、欲情の色が宿っている。

 それを見下ろしながら、わたしは、告げる。

「さっきは、ごめんなさい」

 色欲に、微かな驚きが混ざり込み、溶け込む。

「それと、ありがとう」

 色欲と驚きに、追加されたのは、柔らかな色。
 それが愛情なのか恋情なのか優しさなのか、何かは分からないけれど。

「それと、雀ちゃんが大好き…です……」

 キスをしながらのうわごとなら、何度でも恥ずかしくなかったのに。
 こうして目と目を合わせて、改めて言うとなると、途端に恥ずかしさが増すのは、どういう仕組みなのか。

 赤みの増したであろう顔で彼女を見下ろしていると、三色混ぜた色を浮かべていた瞳がゆっくりと弧を描く。
 全てを優しくて嬉しげな笑みで包み込んだ雀ちゃんは、緩めていた腕でわたしを抱き締め直しながら、頬にキスをする。

 柔らかにほっぺを啄まれて、ちぅと微かな音を立てて離される。
 そんな仕草ひとつひとつにさえ、「貴女が好きだ」と込められているようで、胸がきゅんとする。

 あぁもう今日のわたしはどうしてこうも、恋に初心な女子高生みたいな反応しか出来ないのか。
 彼女に翻弄されっぱなしの自分を叱咤しようとしても、なかなか、上手くいかない。

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「惚れた?」

 抱き締めていた腕の片方を外して、わたしの頬にかかる髪を梳いて、耳に掛けながら、雀ちゃんはお道化たように尋ねる。

「……惚れ直した」

 だってもう惚れてるもん、と後から付け加えながら、お返しのように、彼女の頬にキスをした。

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 頬、唇、鼻、瞼、額、と顔のあちらこちらにキスを落としながら、そういえば、いつの間にか電話が鳴りやんでいると気付く。

 彼女は友好関係も広いようだし、バイトもしている。
 だから誰からの着信だと確信をもつことは出来ない。だけど、そのどれよりもわたしを選んでくれたのだという優越感と罪悪感が、なんともいえず心地いい。

 キスを唇に戻しながら、彼女の髪に指を差し込んで指の腹で頭皮を撫でるように髪を梳く。啄むキスの合間に、満足そうな吐息が彼女から漏れて、わたしは小さく微笑む。

「気持ちいい?」

 問い掛けに、はっとしたように目を開いた様子を見れば、どうやら先程の吐息は無意識だったのだろう。
 気持ちイイ、と少し照れくさそうにはにかんだ後、雀ちゃんはさわり、とわたしの背を撫ぜる。

「気持ちいいコト、お返ししたげる」

 服の裾から、彼女の温かい手がするりと侵入してきた。

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