隣恋Ⅲ~宿酔の代償~ 37話


※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 宿酔の代償 37 ~

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 本当に。

 本当に、一体どこで、そんな台詞を覚えてくるのか。

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 羞恥心という羞恥心を全身からかき集めたくらいに、顔が赤いし、熱い。
 鏡なんて見ていないけれど、絶対そうだ。わたしの顔は真っ赤だ。

 けれど雀ちゃんは、そんなわたしに小さく微笑んで、顔を傾けながら近付いて、軽くキスをして、「可愛いよ」だなんて囁くのだ。
 そして、事もあろうか、更に、わたしに要求するのだ。

「舌、出して?」

 と。

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 このタイミングで。
 そんな要求を。

 呑める訳がない。

「むりっ」
「無理じゃなくて」
「やだっ」
「やだでもなくて。出来るよ、ほら」

 取り付く島もない。
 わたしの言葉は全部否定しておいて、さらりと唇を重ねてくる雀ちゃんは、本当に日本で育ったのだろうか。
 どこか海外で、それこそ、イタリアかフランスあたりで育ってきたのではないだろうか。

 内気だシャイだ口説き下手だと言われる日本人とはかけ離れた話術と手つきで、こうやってわたしを翻弄する。

 抵抗する暇もなくキスされて、軽く啄まれて、固まっているわたしの半開きの唇の間に、軽く、舌先を差し込まれた。

 そのまま、左右にゆっくりと舐められて、いつもの焦らされる手順を踏んでいることにゾクリと悪寒にも似たものを覚える。

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 思わず零れた吐息に、雀ちゃんを焦らしながらわたし自身も興奮を高めて、期待を募らせていたのだと覚った。

 浅く挿し込まれた舌にもどかしさを感じて、自ら舌を伸ばしてしまうと、するりと、躱されて、右の口角を舐められた。
 その、タイミングも、舐めた右口角も、さっき、わたしが彼女にしたのと同じ行為で……。

 ――ぇ、待って、まさか……。

「誰が、ひとの真似したキスしていいって言った?」

 降ってきた声に、ヒヤリと、背中を冷たい感覚が滑り降りた。

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 いつから気付いていたのか。
 いつから演技になっていたのか。
 そもそも、彼女が感じていた様子は、演技だったのか、本気だったのか。

 まさか、わたしだけが、彼女を感じさせられて、焦らすことに成功していると舞い上がっていたのか。
 そんなわたしを、雀ちゃんは冷静に見ていたのか。

 お腹の奥からせり上がってくる羞恥心とバツの悪さに、目も開けられない。

「舌、出してごらん?」

 柔らかな声が降ってきて、瞼が震える。
 雀ちゃんの言葉に、抗う術もなく、わたしは唇を開く。

 そこからおずおずと、舌の先を覗かせれば、予想していた言葉が、降り注ぐ。

「もっと、出せるでしょ?」

 その見透かすような声に、抗う術は、ない。

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 人と比べて、わたしは舌が長い。
 自分の顎に余裕で舌先がつく。
 それを彼女も知っているから、余計、要求は緩まない。

「ん……」

 ゆっくりと舌を伸ばすと、ひんやりとした外気に触れた舌がゆっくりと体液を蒸発させ始める。

「いい子」

 目を閉じていて、雀ちゃんの表情は分からないけれど、優しい声に褒められて、彼女の呼気に舌を晒す。
 雀ちゃんからみれば、さぞ不細工な顔で舌を突き出しているんだろうけれど、それを見ていい子だと褒めてくれるあたり、こんな意地悪を言ってきても、やはり彼女は天使のように優しい。

 そんな子が、よくもこのわたしの恋人になってくれたものだ。

「いい子は、いっぱい気持ちよくしてあげなきゃね」

 台詞と共に、舌に空気が触れる。
 乾ききる寸前で、ピトリと当てられたこの熱は、きっと、彼女の舌だ。

 たっぷりと彼女の唾液を含み、湿り気のあるそれが、わたしの舌先から、側面をゆっくりと下ってくる。
 それだけでも、下腹部はジンと痺れ、疼きを訴えるのに、雀ちゃんは酷にも言い放つ。

「動いちゃ駄目だよ」

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