隣恋Ⅲ~宿酔の代償~ 31話


※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 宿酔の代償 31 ~

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 ――卑怯。

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 呟いたのは、胸の内。

 顔は真っ赤だし、体は熱いし、背中はゾクゾクするし、心臓はバクバクするし、胸は切なくて痛い。

 こんな状態にわたしを追い詰めた人物は、世界一優しい顔をしてわたしを眺めている。

 ずるい。
 卑怯だ。

 わたしが、雀ちゃんをどれだけ好きなのか、理解した上でやってる。
 あんなふうに言われたら、もう、抵抗なんて、できない。

 理性なんてすぐに溶けてしまう。

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 雀ちゃんへの愛しさも、募れば指まで震わせるようになるのか。
 そんなことに驚きを感じつつも、彼女の服の裾を掴んでいた手を解いて、覆いかぶさるそのひとの首へ巻き付けた。

 腕で雀ちゃんを引き寄せながら、わたしは潤んで今にも涙が零れそうな目で、彼女を見上げた。

「わたしも、すきよ」

 声も、震えるだなんて。

 年下にここまでしてやられて、それでも彼女に虜で、年上の立場なんてものは無いに等しいけれど、今回ばかりは本当に、完敗。

 負けてあげるわ、だなんて強がりさえ出てこないくらいに、負けだ。

 そんなに大して離れていた距離ではない唇同士が重なるのに、時間はそうかからなかった。

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 なんの変哲もない、唇を触れ合わせるだけのキス。
 その筈なのに、彼女の柔らかさを感じ取った瞬間に、脳に走る痺れのような幸福感。

 ただ、くっつけただけなのに、どうしてこんなにも甘く、切ないのか。

 片腕では足りなくて、彼女の首に、両腕を絡めて、わたしは自ら、顔を傾けた。
 ほとんど片手で自分の体重を支えている雀ちゃんには酷かもしれないが、もっとくっつきたくて、雀ちゃんを引き寄せる。

 自然と、互いの唇が薄く開いて、その奥から舌を覗かせる。
 相手を求めて、唇の外へと出てきた舌は、目標を見つけて、すぐさま、絡み合った。

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 互いの唾液を交換するように、擦り付けるように、舌先が絡み合う。

「ン、ん……っ」

 熱い。
 わたしの体温だって上昇してると思うのに、雀ちゃんの舌の方が、ずっと熱い。

 チョコレートみたいにわたしの舌まで溶けてしまわないかと、妙な心配さえ浮かんでくる程、熱っぽいそれに、舌の下側をゆっくりなぞられて、思わず、腰が疼く。

 わたしに覆いかぶさる雀ちゃんの脚が、閉じたわたしの両脚を跨いで膝をついている。だから、脚を擦り合わせでもしていれば、すぐに気が付かれてしまうのだけど……。

 燻るカラダに籠った欲が、処理しきれていない。

 さっきから、ことあるごとにキュンキュンさせられて、子宮が疼いているというのに、体に対しての愛撫は少ない。

 その落差もあって、正直、今すぐにでも、触れて欲しかった。

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 触れて欲しいと思う今でも、シャワーを浴びたい気持ちはある。
 ただそれ以上に、雀ちゃんの口説きに陥落してしまったのと、わたしの抱かれたい気持ちが膨張し過ぎた結果、アソコを舐められないようにすればシャワーなしでもいいか、と妥協してしまったのだ。

「ん、う……ンッ」

 わたしの舌の下側を舐めていた雀ちゃんの舌が、その身を引きつつ、ねっとりとわたしを舐めて出ていく。

「……愛羽、可愛い」
「か」
「わいくないとか言ったら、どうなるか分かってる?」

 いつものように、言い返すのを封じられて、言葉に詰まる。
 言うくらいタダなんだしいいじゃないの、と思うけれど、それを口にして反抗できる雰囲気じゃない。

 そんな事言おうものなら、今の雀ちゃんには、ありとあらゆる手を使って反省と躾をされてしまいそうだった。

 恨めしく彼女を見上げていると、雀ちゃんは小さく笑って、わたしの頬に小さくキスをした。

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