※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 29 ~
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――い、た……っ
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首筋に、この痛みを感じるのは、どのくらい振りだろうか。
とっさに、キスマークを付けられたのだと理解したのは、いつもえっちの度、体にこの痛みを感じていたからだ。
”見えるところは駄目”という言いつけをいつも守ってくれていた雀ちゃんが、こんなにもあっさりと、見えるところである首筋にキスマークを施すなんて、少し信じられない気もするが、考えてみれば、わたしが帰宅後、一度、彼女はえっちな雰囲気に浸かっているのだ。
燻るものがその体内にあったのならば、こうもあっさりと一線を越えた理由付けにはなる。
「雀ちゃんっ」
「煽るから」
まるで、わたしのせいだと言わんばかりの雀ちゃんは、どうやらもう、いつもの謙虚で天使な雀ちゃんではないようだ。
満足げに、キスマークに舌を這わせる彼女は、ここがベッドの上だと言わんばかりに、右手をわたしの胸にもっていく。
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「ちょ……んっ」
乳房に手のひら全体をのせて、やわやわと揉まれるだけなのに、ブラジャーの生地と胸の頂きが擦れて、甘い痺れが生じる。
素直に快感を受けてしまうわたしも、どこか、燻るものが体内にあったのだろうか。
「可愛い、愛羽さん」
可愛いくない、と言い返そうとするわたしを見計らって、雀ちゃんの舌が首筋を舐め上げる。
「っ、あ……ぁっ」
「その声、聞くだけでゾクゾクする」
わたしの行動を先読みして愛撫してくる雀ちゃんを、にらんでやりたい。
だけど、身体は、ジンジンと痺れの波紋を広げて、わたしの反抗的な態度を封じてしまう。
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ゾクゾクするのは、こっちの方だ。
なんて口には決して出さないけれど、身体は完全に、雀ちゃんの虜。
「もっと声聞きたいから、口は塞ぎたくないけど」
だけどキスはしたい。
言いたいことが理解できてしまうと、わたしもキスしたいと考えているようで、恥ずかしい。
けれど同じ事を考えている事実は……くすぐったくて、嬉しくて、甘酸っぱい。
自分の喘ぎ声を聞きたいとは思わないけれど、キスしたいという想いが同じなのは、やっぱり、嬉しいものがある。
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首筋に埋められていた顔がゆっくりと持ち上げられて、わたしの頬に小さなキスが落とされる。
それは、合図のようなもの。
阿吽の呼吸というか。
暗黙の了解というか。
雀ちゃんが口付けた頬側へと、自然と顔を傾けた自分がいて。
それを客観的に「あぁ自分だってキスしたくて、迎え入れたな」とみるもう一人のわたしが居て。
なによりも、キスの前に、チロリと口角を舐められた事に心臓が跳ねて、妙に女心をくすぐるその行為に胸がきゅっと締め付けられた。
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彼女は、喘ぐ声をキスで塞ぎたくないと言っていたけれど。
「ふ……っ、ん……」
たとえキスをしていたって、くぐもっていたって、声は出せてしまうもので。
ブラジャーをしているのに的確に胸の頂きを引っ掻かれてしまうと、感じたままに声帯を震わせてしまうのだ。
一体どうして、そんなに的確に位置がわかるのか。
まるで何か目印でもついているかのように、ひたと当てられた指先。
捻じ込むように真っ直ぐ押し込まれて、圧力に負けてわたしの胸の膨らみは形を変えた。
それと同時に、やわやわと啄まれていた唇を舌先が霞めて、ここを開けてと訴えてくる。
――きっと……開けたら。
ここで、そういうコトが始まってしまうんだろうなと、容易に想像はできた。
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