※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 21 ~
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「お礼言われるようなことじゃ……」
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照れくさそうに鼻の頭をかく彼女の感覚では、自分が飲むコーヒーをもう1杯余分に淹れた、くらいにしか思っていないのだろうか。
特別なことなんて一つもしてないのにお礼を言われるのは……まぁ嬉しいけど、そんな大したことは自分、してないのに。
なんて考えを顔に書いた雀ちゃん。
そういう、謙遜しがちな所も、わたしの目には、好ましく映る。
さっきみたいな事を元カレに言うと、口では謙遜しつつその顔に「褒められたって事は俺、すげぇじゃん」と書くような人だったから、余計、雀ちゃんが可愛く思えるのかもしれない。
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「雀ちゃんはコーヒー淹れることくらい、って思ってるかもしれないけど、わたしはとっても癒される時間なのよ」
膝にチョコレートの小袋を置いて、コーヒーカップを片手に。
空いた方の手を彼女の頭に伸ばして、ぽすと柔らかな髪に置く。そのまま指を軽く曲げて、手櫛で軽く髪を梳くと、雀ちゃんは気持ちよさそうに目を閉じた。
まるで撫でられたワンコみたいなその反応も可愛い。
きっと、雀ちゃんがどんな行動をしても、わたしは可愛いと思ってしまうんじゃないかと思う。
溺愛というか、目に入れても痛くないというか。
「コーヒーを飲む間は、こうやって貴女に触れられるしね」
小さく笑いながら言うと、ぱちりと閉じられていた瞼が開いた。そして、顔がこちらを向いて、ちょっと驚いたみたいな表情で、雀ちゃんに見つめられる。
ん? と首を傾げて、何に驚いているのかを尋ねた。
「私に触りたいんですか?」
ド直球に、問いを、返された。
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驚きの色は混ざっているけれど、真面目な顔をした雀ちゃんが投げて寄越した質問。
その真面目な顔に、笑っていいものかと悩むけれど、微笑まずにはいられない。
――まったくもぅ……この子は。
彼女は、わたしの事を恋人だと認識しているのだろうか?
恋人なら、大好きな人に触れたいと思うのが当たり前だろうし、さらに言えば、そうして触れたら癒されたり、ほっとしたり、安心するものだと思うのだけれど。
「雀ちゃんに触れたいわよ? わたしがそう思うのは、変?」
「あ、いや変とかじゃなくて……その」
慌てたように首を振る彼女を横目に、コーヒーカップと、膝の上のチョコレートの小袋をテーブルに戻していると、雀ちゃんが少し、口籠った。
テーブルから彼女へ視線を戻してみれば、先程よりもずっと照れくさそうにしながら後ろ頭をかいている。
「私も愛羽さんに触れたいって思ってるから、一緒だったのが意外っていうか。愛羽さんはもっとサバサバしてるのかなと思ってて……」
目を、丸くした。
彼女がそんなことを思っていただなんて。
触れたいと思っていてくれたのは素直に嬉しい。雀ちゃんに好かれているんだなと改めて確認というか、実感できた。
だけど、その後だ。目を丸くした一番の原因は。
わたしが、サバサバしてる……?
嘘でしょ……?
自己評価としては、「べたべたに甘えたいタイプ」だと思っていたんだけど……全く逆。
サバサバという言葉が表すのは、滅多に触れ合わない。触れていてもすぐ止める。必要最低限の触れ合いしかしない。などなど、淡泊なものばかりだ。
――雀ちゃんにそんなふうに思われていただなんて……。
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ショックだ。素直に。
「わたしってサバサバしてる……?」
どうにも信じられずに再度、彼女の言葉を確認してしまう。
「え? 違うんですか?」
優しいとは思うんですよ? こうやって撫でてくれたりするし。でも相手に触れるとなると、違ってるのかなぁと。大体家に帰っても仕事とか、仕事してない時は雑誌や文庫本読んだりして、なんか仕事に使える情報仕入れたりしてるのが大抵だし……。
と、淀みも迷いも悪気もなくつらつらと教えてくれる雀ちゃんの言葉に、我が事ながら、「ものすごくサバサバしてる」と思わざるを得なかった。
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