隣恋Ⅲ~宿酔の代償~ 14話


※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 宿酔の代償 14 ~

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「う?」

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 さっきも思ったけど、どうしてこうも身長差があるのか。

 本当なら、雀ちゃんを両腕ですっぽりと抱き締めて抱え込みたい心境なんだけれど、いかんせん、体格差がそうはさせてくれない。

 だからせめてもと、後頭部に回した手で、彼女の頭をわたしの肩口に押し付けるように抱え寄せて、もう片方の腕で背中をぎゅっと抱き締めた。

 突然そんな抱き締められ方をされて、くぐもった声をあげた雀ちゃん。
 彼女のしっとりとした髪がわたしの頬に触れて、すこし冷たい。鼻先でそれをよけて、現れた耳にそっと唇を寄せる。

「気付けなくて、ごめんね?」
「え、あ、いやそんな」
「でもね、雀ちゃん」

 この天使のことだから、「いやそんな私が勝手に不安になっただけで。そもそも、私が限度を考えずに飲んで二日酔いになったのが原因ですから」とでも言い募ろうとしたんだろうけれど、わたしは遮って彼女の耳に声を吹き込んだ。

「ばか」

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 自分の出来得る限り優しい声で。

「ばーか」

 と繰り返す。
 その後、もっと優しくなるように、声を丸くまぁるくして、言う。

「貴女がだいすきよ」

 息をのむ音が、微かに、わたしの耳に届いた。

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「例えばこの先、貴女がまた飲み過ぎても、わたしは好きでいる自信ある。例えばうちのベッドの上で飲んでて、気持ち悪くなって戻しちゃったとしても、好きでいる自信ある。それでお布団全部ダメになっちゃったとしても、好きでいる自信ある」

 お酒に関しての失態で思いつくのは今はそれくらいかなぁ。と区切っておいて、何も言わない雀ちゃんの背を撫でながら、わたしは諭すように続けた。

「貴女が不安になるのは、わたしの事大好きな気持ちの裏返しだから、大いに不安になって構わないわ。だけど、それを自分の中だけに溜め込まないで?」

 優しい性格だから、余計、人一倍、溜め込むタイプだろう。

「不安にならないで、とは言わない。だから、せめて、わたしに教えて?」

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「それこそ、わたしは自分がキスしたいと思ったら、帰ってきて1分もしないうちにあんなキスするような人よ? 雀ちゃんだって、遠慮せずに、わたしが仕事中でも不安になったら電話かけてきていいのよ?」
「それは、さすがに……」

 やっと喋った。
 肩口に、熱い息がかかる。
 その熱にすら、愛しさを感じるくらい、雀ちゃんのことが好き。

「仕事中で電話に出られなくても、履歴が残っていれば、わたしからかけ直して貴女の不安を取り除いてあげられるでしょう?」

 さっきよりも少し赤色が増したその耳に、軽くキスをした。

「わたしは、貴女の不安を知らないまま過ごしているのは、いやよ?」

 察するように努力はするけれど、全部は無理だから、教えてほしい。
 そう伝えてから、雀ちゃんの後頭部を抱く手を退けた。

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 ゆっくりと頭を起こして、雀ちゃんがわたしを見下ろす。

 ――やっぱり。

 予想していた通り、潤んだ瞳と、視線が絡む。

「この間も、素直な気持ち教えてね。不安な事があったら言うように。って、言ったでしょう?」

 こく、と頷いた雀ちゃんに微笑んで、その頭を撫でた。
 まだ少し髪は乾いていない。

 きっと、雀ちゃんにとって、”我慢をしない”という事は、わたしの想像を絶するくらい、難しいんだと思う。
 例えばわたしが仕事をサボる。というのが難しいように、雀ちゃんは自分の気持ちを表に出すということが難しいのだ。

 ついこの間、嫉妬したらちゃんと言うようにする、とか、素直な気持ちを伝えられるよう努力する、とか宣言したのに、早速我慢をするんだもの。
 人間すぐに変わることは難しい。
 それこそ、自分にとって一番難しい事項は、変化に時間がかかって当然だ。

「ちょっとずつでいいから、貴女の気持ちをわたしに教えて? ね?」

 頷く彼女の頬を撫でると、わたしの手に、雀ちゃんの手が、重ねられた。

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