※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 戦場へ 47 ~
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うん? 揺れた……?
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何か走行と違う揺れを感じて、意識が浮上した。
そして、はっとする。
「ねてた!」
「ぅわびっくりした!」
絶対寝たくないと思っていたのに、彼女の優しいドライブテクニックでいつの間にか意識が飛んでいた。
わたしの叫びに、隣でビクンと体を強張らせた雀ちゃんが、体から力を抜きつつ笑う。
「そんな元気良く起きれたんですね、愛羽さん」
低血圧なので、朝いつもぼーっとしているわたしを見ている雀ちゃんからしたら、中々面白いものだったのかもしれない。
クスクスと笑みを零したあとに、エンジンを切りながら、彼女は外を指差す。
「着きましたよ」
そこはマンションの敷地内にある駐車場だった。
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昨日車が停めてあった場所だ。
雀ちゃんが車を降りたので慌ててシートベルトを外して降りる。
「ごめん、寝ちゃって」
「いいですよ。徹夜したんですしお酒も飲んで、余計眠いでしょう?」
ほらほら、早くおうちに帰りましょう。
雀ちゃんに促されて、わたしはマンションの入り口へと歩き出した。
「愛羽さん、一人でお風呂入れます? 途中で眠っちゃうとかしません?」
「うー今日はお風呂浸かるのやめる。シャワーだけなら多分、起きてられるから……」
「髪もちゃんと乾かせます?」
「うーん……」
心配性だなぁと苦笑が浮かぶと同時に、想われてるなぁと胸が温かくなる。
つい、疲れているのもあって甘えたくて、乗り込んだエレベータの中で彼女を見上げた。
「途中で寝るかも」
「じゃあ、お風呂からあがったら……いや、その前がいいか、もしもの為に。家に入ったらベランダの鍵開けて、それからお風呂入ってください。私もお風呂入ってから様子見に行きますから」
「うん。ありがとう」
そう言ってくれると踏んで、途中で寝るかも、と言うような策はまだ、考え付く元気は残っているようだった。
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玄関で別れて、それぞれの家に入り、まっすぐ向かったのはベランダ。
彼女の言いつけを守ってから鞄はソファに放り投げて、アンケートはテーブルの上に置く。
「あ、いけない。鞄の中に券あるのに乱暴にしちゃった」
あわてて鞄の中を探ると、宿泊券の入った封筒は綺麗な状態のまま。
まーを見習って、わたしもスケジュール帳にその封筒を挟んでみるけれど、彼女のスケジュール帳よりも一回り小さいわたしのものでは、すこしだけ封筒がはみ出していた。
とりあえずはこれでいいや、とテーブルにスケジュール帳を置いて、着替えを持ってバスルームへと向かった。
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やっぱり、湯船にお湯をはらなくて正解だった。
お湯をシャワーで頭から浴びていると気持ち良くて、数回フラリと眠りかけた。
立ったままでもそんな芸当ができるのだから、お湯に浸かってまったりすれば、確実に眠りに落ちて、溺れる結果になっただろう。
なんとかお風呂を終えて、毎日している体重計測もせず、パジャマを着る。
濡れた髪もあまり拭かずに、バスルームから出ると、湿気の少ない空気を胸いっぱいに吸って、吐いた。
「さっぱりしたぁ」
独り言のつもりだったのに、リビングのドアを開けばソファに座って携帯電話を弄っている雀ちゃんがこちらを向く。
「おかえりなさい」
お風呂も入って、髪も乾かしている彼女の行動は随分と速い。
きっと、わたしの為に急いで済ませてきてくれたのだろうと思う。
その予想はもしかすると違うかもしれないけれど、わたしの為にそうしてくれたんだ、と思うことで、”好き”も感謝も生まれるのだから、別に答え合わせをするまでもなく、そう思い込んでおけばいい。
「ただいま、雀ちゃん」
お風呂に入って眠気が飛んだので、ちゃんとまっすぐ、彼女の顔を見て笑った。
車の中では、会話してても白目をむきそうな程眠かったので、ろくに彼女の顔を見られなかったのだ。
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