隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 93話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 自分が身に着けないものへの一種の憧れ。

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 ~ 湯にのぼせて 93 ~

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「何を?」

 間髪入れずに聞き返したのは随分と意地悪だったかもしれない。
 愛羽さんが喉の奥で唸った。

 いつもの私ならば、ここで質問を重ねて彼女を追い込むのだが、今夜は気分がいいから止めておこう。
 口をパクパクさせてどう言おうか言葉を選んでいる最中の彼女の頬にキスをした。

「分かってますよ」

 やけに熱かった頬の感触が残る唇を、目的の場所へと移動させた。

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「いっ、いじわる……!」

 頬から首、鎖骨、胸、腹とキスを降らせながら体をずらしてゆく私に、愛羽さんはくやしそうに恥ずかしそうにした。
 少しだけ、拍子抜けしたようにも、見えたけれど。

 ……もしかして、ホントは、言いたかったとか?
 内心沸いた疑問をすぐさま打ち消す。流石にそれはナイだろう。
 いや、でも、愛羽さんって意地悪されるの…好きだしな……?
 いやいやそれでも流石に……なんて考えを繰り広げながら、彼女の滑らかな肌を撫でて、脚を開くように促す。

「……」

 でも、開かれない脚は伸ばした状態のまま、ぴたりと内腿同士をあわせている。
 いつもだったら、促せば開いてくれる脚なんだけど……。と不思議に思って視線をあげると、愛羽さんは両手で顔を覆っていた。

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「……愛羽さん?」
「今猛烈な羞恥心と戦ってるから……っ」

 どうやら、あの顔を覆う手の下には、真っ赤な顔が隠されているようだ。
 彼女が何を恥ずかしがっているかって、多分、アレだろう。

「ホントは舐めて欲しいところ、言えたりして?」
「~~~っ言わないでっ」

 ビンゴ。
 愛羽さんはさっき、私の意地悪ま質問に答えようとしてくれていたみたいだ。まぁ、いつものパターンならそうくると思っていて、心の準備があったと考えてもおかしくはない。
 だからたぶん、あと少し待っていたら、愛羽さんの口からあの言葉が聞けたかもしれない。もったいないことをした。

 そして愛羽さんは、その言葉を言おうとした自分が恥ずかしくてたまらないみたいだ。

 あんなに顔を隠して、可愛いったらない。

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 愛羽さんがピタリと脚を閉じているせいで、彼女はまるで直立しているみたいな恰好だ。羞恥心を収める儀式が終わるまで私は彼女の浴衣と下着の相手をすることにした。

 浴衣は愛羽さんが腕を抜かないと完全に脱がす事は出来ないから、腰紐を体の下から抜き取って、布団の外へぽいと放る。浴衣の裾を広げるようにしてみると、なんともエロい。

 残っているのは下着で、色はたぶん薄いピンク。暗いからはっきりとは分からないけど。
 女性らしい色も可愛いけれど、そのレースの飾りと、サイドの紐が可愛いさと大人の色気を醸し出す。

 てか……こんな下着もってたっけ……愛羽さん。
 もしかして、これも新調したのか。

 旅行の為に下着の新調とか可愛いすぎる。
 そして何より、紐パンが……ぐっとくる。

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 この光景を眺めているだけでも興奮度が増しそうだ。
 ちら、と彼女の顔を窺えば、まだ手で覆われていた。

 この扇情的な光景を目に焼き付けていたいけれど、やってみたい事もある。
 下着の両サイドにある蝶々結び。その結び目を、解いてみたい。

 それは誰しもが憧れる瞬間ではないだろうか。
 男性なら特に。

 私も、自分が紐パンを履かないから、男性とこの心理状況は一緒ではないだろうか。
 その魅惑的な結び目を解いたとき、どんなに胸がときめくだろう。

 期待に胸を膨らませて、私はゆっくりと手を伸ばした。

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 腰の横の蝶々結びの紐。その一本を人差し指と親指でつまみ、引っ張った。
 少しだけ弾力のある紐で、結び目ごとこちらへ引っ張られたけれど、もうすこし力を加えると、ツ……ッ、と結びが解けた。

 紐に引かれて布がはらりとめくれる。脚の付け根あたりまでが露わになって、心臓がドクドクいい始める。
 もう何度も見たことはある。あるはずなのに、鼓動が速まった。

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 反対も、と思った瞬間だった。

「物凄くえっちな顔してる」

 いつから見ていたのか、愛羽さんが言った。
 思わず、叱られた子供のように動きを止めた私を、愛羽さんは小さく笑う。その笑い方はどうも怒っていたり咎めようという気があるひとのそれとは違った。

「……愛羽さんが、こんな可愛い下着で、私の事誘うからです」

 ああどうして私はこんなときにこんな言い方しかできないのか。これじゃあ相手を責めるような言い回しに聞こえてしまうじゃないか。
 私が興奮しているのは、愛羽さんの責任じゃなくて私の責任なのに。

 例えば「可愛い下着だし、これ履いてる愛羽さん見てるだけで興奮しちゃいます」とか言えばよかったのに。
 いやでもこの言い方だと下着だけが可愛いみたいな言い方か…!?

 脳内でもう一人の私が大暴れしている。
 そんな状況を露知らず、愛羽さんは軽く握った拳の、手の甲を口にあてるようにして半分顔を隠したまま私を見ている。

「…………誘われて、くれる……?」

 一瞬、言われた意味が分からなかった。

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