隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 91話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 新たなる場所。

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 ~ 湯にのぼせて 91 ~

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 さっきよりは息が落ち着いてるから。
 そんな言い訳を頭の中でぼそりと呟いて自分を正当化して、私は再び愛羽さんの胸へと顔をよせた。

「ちょ、待って……もすこしっ」

 先程と違うのは胸の頂きではなく、いわゆる胸の谷間。そこへ舌をピトリとあてて、彼女の抵抗の言葉を封じる。
 寝転がると胸の谷間は谷間でなくなるけれど、愛羽さんの胸はおおきいから、横へ乳房が流れても谷間がある。ゆるやかな谷の間を上へ抜けて、鎖骨と鎖骨の間に到着すると、愛羽さんの口からフッと息が漏れた。

 感じそうで、まだ感じていない。一歩手前で、でも期待が高まる。そんな吐息だった。

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 左か、右か。結局はどちらも行くつもりだから、どちらからでもいい。だけど迷って、鎖骨の間の窪みをくるりと舐めることで時間稼ぎをした。

「んぁっ」

 あ。

 彼女の声に、私のセンサーが反応した。
 ここ、結構スキなんだ。と内心で新たなる発見を喜ぶ。

「やぅっ」

 くるりくるり、と舐めてみせると、愛羽さんの手が私の肩の浴衣を引っ張り、その窪みから遠ざけようとしているみたいだった。
 今まで、鎖骨はやはり性感帯として一般的に有名な部分だし、愛羽さんも鎖骨は性感帯指定部位だったから愛撫はしてきた。
 だけどこの窪みに着目はしてこなかったと思う。

 盲点だった。

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 うーん、失敗失敗。
 今度からいろんな所を手広く愛撫してみる必要があるな。

 彼女の性感帯を見逃していた事を反省しながら、窪みの肌を軽く吸う。

「はっ、ぁ、アん…ッ」

 やっぱり、抵抗するみたいに浴衣を引く愛羽さんが可愛くて、目を細める。
 両腕を首の横辺りについて、愛羽さんの顔を覗き込む。

「愛羽さんの気持ちいいトコ、また見つけました」

 嬉しくて、思わずにっこり笑ってしまう。

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 そんな満面の笑みの私に対して、彼女は切なげに眉を寄せて、快感の余韻を耐えるような表情。そんなカオもまた、そそるんだけど。

「ぞ、くぞく…する……」

 私の笑みが、崩される。
 彼女のたった6文字の言葉で。泣きだしそうなくらい潤んだ瞳で。泣きだしそうなくらい切なげな表情で。泣きだしそうなくらい震える声で。

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 虚を突かれた私の、崩れた笑顔は真顔に近いような妙な顔だったに違いない。だけど、それを気にする余裕が急速になくなっていくのを私は自分の中に感じた。

 肩の浴衣がもう一度、愛羽さんの手によって引かれる。

 遠ざけるのではなくて、今度は、引き寄せるように。

「…気持ち、ぃ……もっと……」

 愛羽さんの言葉に、私の息が、震える程だった。

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 どうしよう。やばい。
 目に焼き付いて離れない。

 さっき見た彼女の表情。たまらない。

 伸ばした舌を窪みから少し外れた場所にあてる。そのままじりじりと窪みへと向けて進ませながら、頭の中で呪文を唱える。「ゆっくり、ゆっくりだ。落ち着け」と。

 急な動きよりも緩慢な動きの方が愛羽さんは好きなのだ。だからこそと私が呪いのような呪文を胸中で唱えていると、先程私の浴衣を引いた手が、後頭部に触れた。

 え? と思った瞬間だった。

 きゅうと髪を握るようにして頭を抱えられ、意図的に、頭の位置をずらされた。そうされるともちろん、私の舌は合わせて動く。そしてその照準は、窪みへ。

「やっ、んンンっ」

 自ら頭を引き寄せて舐めさせたくせに、愛羽さんはイヤイヤをするように首をふった。

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 舌を突き出しているせいもあって、口呼吸をするとモロに熱気である呼気が肌に触れる。だから出来るだけ、鼻でゆっくり息をしようとしていたんだけど、無理だ。
 こんなエロい愛羽さんを目の前にして、興奮するなっていう方が無理。

 勝手にこっちの息もあがっていく。

「はんっ、ァッ、や、ぁっ」

 あの、愛羽さんが。
 窪みに舌を埋め込むように押し付けながら、頭の中で独り言を呟く。
 だって、普段、感じたら無意識に逃げようとするような人だ。そんな人が、私を引き寄せて、強引に自分自身の性感帯を愛撫させた。

 その事実を目の前に、猛烈な興奮が込み上げてくる。
 冷静になんてなれない。でも、冷静に、同じ性感帯ばかりを愛撫しているとやはり人間、順応が生まれてしまう。
 だから、鎖骨や首筋をうまく交互に愛撫して、この新しい性感帯を可愛がらなくては。

 そんなふうに冷静に行動計画をたてる自分がいる一方で、獣のように興奮に支配されて彼女を食い散らかしたい。いっそのこと、泣くほどに喘がせて、いや、泣くほどなんて言わず実際に涙を流させてしまいたい。

 そんな狂暴で凶悪な考えすら浮かんできてしまいそうだった。

 大好きなひとの、どんな顔も姿もこの目に映したい。

 でもだからといって、ひどい事はできない。

 ジレンマが苦しかった。

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