※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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深い口付け。
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~ 湯にのぼせて 80 ~
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私の額から柔らかな唇が離れて、ぽすんと愛羽さんの頭が布団に沈む。
それを追いかけるようにして私は顔を近付け、先程額に感じた柔らかさを求めて唇を重ねる。
やわやわと啄む口付けを交わしながら、先程キスをした愛羽さんの手を放す。その手を彼女の側頭部に触れさせて、ゆるく髪を指に絡めた。
口付けながら頭を撫でられると、愛羽さんは嬉しそうにする。とはいっても、あからさまな反応がある訳じゃなくて、目元が和らぐ程度なのだけれど。
それでも、愛羽さんが少しでも喜ぶなら、気持ちいいと思ってもらえるのならと、時折こうしてキスしながら、手を頭にやる。
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そうこうしていると、いつの間にか、愛羽さんの唇が薄く開き、更なる口付けを求めてきた。
自ら舌を伸ばすのではなくて、唇を緩め隙を作ってねだる行為が、私の目にはたまらなく可愛く映る。
欲しいと思ったらすぐ行動に移すような直情的な行為ではなく、ゆったりと構え、キスそのものだけでなく、それに至るまでの経緯すら前戯に変えてしまうような大人の魅力。
どちらかと言えば直情的に求めてしまいがちな行為の多い私は、一晩に何度、頭の中で”ゆっくり”という呪文を唱えているか。
その呪文を唱えてもなお、愛羽さんの魅力に負けて、ガツガツと求めてしまうに至るのだが。
多分、愛羽さんは知らない。
私がどれだけ理性を働かせてわざとゆっくりと動いているか。
今すぐにでも貴女のナカに指を捻じ込んで啼かせたいと思っているか。
愛羽さんは一生知らなくていいことだけど、欠片くらいは気が付いて欲しいと思ってしまう。
そのくらい貴女が魅力的で、そのくらい私が貴女に惚れ込んでいる事に、気が付いてほしいけれど、気が付いて欲しくない。
妙なジレンマを抱えたまま、私は彼女の口内へと舌を伸ばす。
ゆっくりと。
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薄く開かれているとはいえ、私の舌がすんなり入る程の空間は作られていない。
愛羽さんの唇を舐めるようにぬるりと舌を入れ込むと、鼻から抜ける声が微かに私の鼓膜を震わせた。
何の言葉も形成できていない単音だったけれど、それを聞いただけで、脳がジンと痺れる。
その痺れに唆されるように伸ばした舌で愛羽さんのそれを探しあてて撫でる。
――あぁだめだ、”ゆっくり”、だ。
また呪文を唱えて理性を呼び起こす。
だって、どこかで聞いたことがある。じれったいくらいにゆっくりの動きが、快感を増幅させるって。
あれは、どこで聞いたんだったっけ……。
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そんなどうでもいいことを考えながらじゃないと、すぐに理性が持っていかれてしまう。
濡れた舌同士が触れて、まるで挨拶するみたいに互いを撫でる。先端が触れあっているだけなのに、身体が熱くなってくる。
小さく吐息を漏らした愛羽さんが苦しいのかと、舌を引き抜きかけたとき。
「ん」
キスが途切れる気配を感じ取ったのか、愛羽さんの腕が私の首へとまわり、後頭部を抱えた。
離れかけた頭を抱き寄せられて、その拍子に、鼻同士がぶつかる。けれど、そんなこと、もう、お互い気にもしていない。
呪文を唱えることも一瞬にして頭から吹き飛び、求められた喜びと、いっそう深くなった口付けに身体の芯が痺れた。
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首を傾けてより深いキスを交わしていると、愛羽さんの手が私の後頭部の髪をくしゃりと握った。
求めているのか、縋っているのか。その意図は掴めないけれど、そんな仕草に弱い私は閉じた瞼の裏がチカチカと白く光るのを見た。
この光を見ると、余計、背中がゾクゾクしてくるのだ。
目を開くと、その光はどこかへ消えてしまうのだけれど、背の悪寒にも似た快感はそのまま。
呼吸の為に唇を一旦離すと、いつの間にここまで息があがっていたのだろうと気が付く。
すぐにでもまた口付けたかったけれど、私以上に息が乱れている愛羽さんを見るとそうもいかない。
薄く開いた唇で酸素を求める彼女に微笑んで、愛羽さんの髪を撫でてやりながら脚を動かす。仰向けに寝ている愛羽さんの脚を撫でるようにして膝で割って、彼女の両脚の間に片膝を着く。
どうして脚の間に膝を入れたのか、その理由を察した愛羽さんは口を噤むみたいに濡れた唇を引き結んで私から潤んだ瞳を逸らした。
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「雀、ちゃん…」
私から視線を逸らしたままで、愛羽さんは小さく名前を呼んだ。
見下ろす彼女に「ん?」と返事をして首を傾げると、そろり、と愛羽さんの手が宙に浮いた。
ゆっくりと天井を指差して、彼女は言う。
「ね……電気…消して…?」
……どうしてこの台詞は、定番でありながら、こうも胸をドキドキさせるのだろうか。
これからの事に対する期待が高まるからなのか。それとも、相手がこれからの事に乗り気である事を示唆するからなのか。
何にせよ、拒否するなんて考えが起きないくらいに、鼓動を速める呪文に違いはなかった。
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