※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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キス。
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~ 湯にのぼせて 79 ~
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首に回された腕に引き寄せられ、軽く背伸びした愛羽さんに唇を奪われたその状態で、私は、本気で鼻から血が噴き出すんじゃないかと心配した。
そのくらい、3秒前に言われた言葉に興奮したし、血が滾った。
だからだと思う。
口付けを解いて、浮かせていた踵を畳に着けた愛羽さんの唇を追いかけて、覆いかぶさるような体勢でキスをしてしまったのは。
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身長差が5、6センチくらいの場合はこんな事態に滅多にならないが、そこそこの身長差があると、低身長の方が真上を向いてキスする体勢が出来上がる事がたまにある。
聞くところによると、この体勢、結構辛いらしい。
せめて、45度くらいでキスしたいと昔愛羽さんは言っていた。
そんな彼女の言葉さえも思い出せずに、私は愛羽さんに襲い掛かるようなキスをする。
「…っん」
愛羽さんが短く声をあげたけれど、気持ち良さからあがった声とは違って、どちらかといえば呻き声に近い。
加えて、私の首にまわしていたはずの腕がいつのまにか、私の胸と肩の間くらいを押し返すようにぐいぐいと突っ張っている。
明らかに、苦しいから止めてと言われている。
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そこでやっと、このキスの体勢が苦しいのかと思い当たり、ああそういえばこういう体勢でするキスは苦しいから好きじゃないと言っていたんだったと思い出す。
上から覆いかぶさるようなキスを解いて、少し身体を離すと、愛羽さんは詰めていた息を吐き出し、苦しそうな呼吸を繰り返した。
そんな彼女も、可愛いとさえ思う私はやはり重症だ。
「雀ちゃんは分からないかもしれないけど、真上向いてキスするの苦しいのよ?」
呼吸が少し落ち着いて不満げに眉を寄せた愛羽さんの忠告。
一度それに頷いてから、私は彼女の両腕をがしりと掴んだ。
「え?」
何事? と愛羽さんの目が語っていたけれど、もう、十分待った。
襲い掛かるような苦しいキスをしてしまったから息が整うまでは待とうと思って、必死に自制心を効かせていたけれど、もう限界だ。
早く、彼女が欲しい。
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「ごめんなさい」
流石に短く断ったけれど、我慢と自制心の限界を迎えた私は、問答無用で愛羽さんに裾払いをかけた。
裾払いというのは相撲技の一種で要は足払いを掛けることなんだけど、そんなことをされるだなんて思っていなかった愛羽さんは当然、軽く悲鳴を上げて体勢を崩した。
揺れた上体を掴んでいた腕で支えて、ゆっくりと彼女の身体を布団の上に倒すと、目をまんまるにした愛羽さんが仰向けのまま、私を見上げる。
「なに、今のイリュージョン?」
どうも、自分がどうなって布団の上に仰向けに倒されているのか分かっていない顔をしている。
私は小さく笑って、愛羽さんの腕から手を離す。
「ごめんなさい、乱暴にして」
「ん、それはいいけど」
身体を跨ぎ、布団に膝をつき、彼女に覆いかぶさった私は言う。
「この体勢だったら、いくらキスしても苦しくないでしょう?」
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「ご、強引ね…?」
「強引に押し倒したくなるくらい焚き付けたのは貴女ですよ?」
鼻同士が触れる距離で好戦的に言葉を交わす。
どちらが優勢かと聞かれると、まぁ、贔屓目せず見ても、私が優勢だろう。
「ここにソファかベッドがあれば普通に押し倒したんですけど」
「無いからって、足払いかけて恋人に押し倒されたのは生まれて初めてよ」
「それは光栄です」
愛羽さんの初めてを貰えたなら、どんな事だって光栄だ。たとえそれが裾払いでも。
そんな考えを抱く私は、愛羽さんが好き過ぎて随分といかれてる。
「ねぇ、愛羽さん」
押し倒したせいで乱れた前髪を指先で払って横へ流してやりながら、彼女の瞳を覗き込む。
少しムードはなくなったかもしれないが、その瞳は潤んだまま。
「この旅行、連れてきてくれて本当にありがとうございました」
多分、このタイミングでこんな事を言われるだなんて思わなかったのだろう。
ほんの一瞬、虚を突かれた表情をみせたけれど、すぐに目元を和らげた彼女の手が私の頬へ添えられた。
「また、一緒に旅行してくれる?」
「もちろんです。今度は私が計画立てますよ」
今回は愛羽さんにほとんど任せっきりだったから。次の旅行は私が、と意気込んでみせると、彼女は嬉しそうに指の腹で頬を撫でてくれる。
「無理はしなくていいのよ?」
「無理じゃなくて、したいんですよ」
肘をついて自分の体重を支えたまま、頬に添えられた手を取り、指先へ唇を寄せる。
綺麗に整えられた爪、細い指に窪んだ関節。白肌に透けて見える血管。すべてにキスをしていく。
私がどれだけ貴女を好きでいるのか、このキスで少しでも好意が伝わればいいと願う。
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視界の端で、愛羽さんの瞳がきょろりと動くのを捉えた。
相変わらず彼女の手にまんべんなく口付けながら、目だけでそちらを見遣れば、バチリと出会った視線。
――なんか…照れてる……?
重なっていた視線を無理矢理に解いて目を逸らした愛羽さんに羞恥の気配を感じて、片眉をあげる。
彼女の手へのキスを一旦やめて、何で照れているのか尋ねようと口を開きかけた私に、愛羽さんはチラとだけ目線をくれて、また、逸らした。
「雀ちゃんって……たまに物凄くキザなことへーきで…するよね」
「……」
えー…と。
「いつ、キザな事しました?」
思い当たる節もなく、真面目に首を傾げる。
彼女が照れた原因が、それこそ精巧な作りをした割れやすいガラス細工を扱うように手をとって、何度もキスをすることだなんて、私は気付きもしない。
そんな私に思わず苦笑を零した愛羽さんは、紅潮した頬もそのままに、布団から頭を軽く浮かせて私の額に口付けた。
「鈍感」
……そんなつもりも、全くないのだけど。
どうも私はいろんなことに、自覚がないようだった。
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