隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 66話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 お風呂。 

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 ~ 湯にのぼせて 66 ~

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 えっちをした後のお風呂。そんな状況で大浴場に入るなんて人生で初めて。
 気のせいだとはおもうけど、なんだか気になる人の目。
 ここでおどおどしていても逆に怪しいだけだし、時間的にそこまで人が多い訳でもない。

 さっと脱衣を済ませて、二人でしっかり身体を洗う。
 さすがになんだか大浴場のお風呂に入るなら、念入りに身体を洗わなくちゃ。

 それでも先に洗いを済ませた雀ちゃんは、湯船へと歩いていった。

 わたしもじきに洗い終えて、お風呂セットを持って雀ちゃんの後を追いかける。

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 見回していると、やっぱり大岩の傍に雀ちゃんの姿を見つけて、近付く。
 どうしてもこの大岩が好きみたいで、源泉の近くですごくお湯が熱いのに、ここによくいる。

「雀ちゃん」
「あ。愛羽さん、いらっしゃいです」

 こちらを振り向いた雀ちゃんの頬は、お湯でほんのり上気している。濡れた髪から滴る滴もあって、なんだか色っぽい彼女に少しドキリとしながら、一応、かけ湯をして、隣に座る。
 んー、あつい。

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「このお風呂とも、今日でお別れなのね」
「そうですねぇ」

 少しとろみのある湯を手ですくって肩にかける。
 数日このお湯の熱さを浴びているせいか、だんだんと慣れてきたような気がする。

 明日はもう午前中にチェックアウトしなきゃいけないから、多分、これが最後のお風呂になるだろう。

「明日で帰らなきゃいけないんですねぇ……」

 物憂げに言う雀ちゃん。
 わたしも帰りたくないのは山々だけれど、休暇の終わりはもうすぐそこまで来ている。

「でも、楽しかったし、滝も見れたし、ゆっくり出来たし。いい旅行だったよね」

 隣をみると、わたしの言葉に満面の笑みを浮かべた雀ちゃんが、頷いた。

「またここでもいいですし、他の所でもいいですし、旅行、一緒にしましょうね」
「もちろん」

 わたし達は笑みを交わした。

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 それから程なくしてお湯からあがって、昨日のように身体に水を浴びせて冷ます。
 数日間連続で源泉に浸かったお肌はすべすべ。

 満足して、脱衣場で浴衣を着て、鏡前で髪を乾かす。
 わたしよりも髪の短い雀ちゃんは、さっさと済ませて鏡前から退いて、壁際にあった自販機でスポーツドリンクを購入して、チビチビと飲んでいる。

 雀ちゃんが待っているし、早く髪を乾かして行かないと。
 とはいうものの、備え付けのドライヤーの威力なんてたかが知れている。こんなことなら、自宅からドライヤーをもってくればよかった。

 ぼんやりとそんな事を考えながら、髪にドライヤーをあてていると、ペットボトルを片手に、雀ちゃんがこちらにやってきた。

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 髪の先がまだ少し濡れているけれど、まぁいいか。
 鏡越しに雀ちゃんに視線をやりながらドライヤーのスイッチを切って、テーブルに戻す。

「愛羽さん」

 ちらちらと脱衣場のロッカーの方を振り返る雀ちゃんの様子がおかしい。
 なにをそんなに気にしているのかしら。

「ん? どした?」

 鏡前を片づけて、自分の落ちた抜け毛もささっと集めて近くのゴミ箱に捨てる。
 そうしてから彼女を見上げると、視線でロッカーの方を見るように促された。

「あぁ、あの仲居さん」

 雀ちゃんの示した先に居たのは、夕食を部屋にもってきてくれたり、滝の場所を教えてくれたあの仲居さん。

 ……でも、どうしたのかしら?
 この時間に従業員である彼女が入浴とは考えにくい。
 見たところ、お客さんに何か説明しているみたいだけど……?

「愛羽さん、通訳してあげたほうがいいですよ」
「…通訳?」
「あのお客さん、金髪でもなくて日本人っぽい顔立ちですけど、どうも日本語喋れないみたいです」

 雀ちゃんの言葉に驚くと同時に、得心がいく。

 仲居さんがここに居る理由は、大浴場の利用方法を教えるためだ。
 雀ちゃんが言うように、日本語が分からないなら、部屋で一通りの説明をするより、この現場でジェスチャーを交えて説明するほうが遥かに理解度が高まる。

「あの仲居さんも、英語喋れないっぽいですよ」

 わたしを待っている間にずっと観察していたのだろう。そこそこの事情をわたしに説明する雀ちゃんをチラと見上げて、肩をすくめる。
 ここまで事情が分かっていて、人助けしないのはよろしくない。

 わたしは雀ちゃんの手からペットボトルを奪い、ドリンクで喉を潤すと、ペットボトルと自分の荷物を雀ちゃんの手に預けた。

 なんだか羨望の眼差しをこちらに向けている雀ちゃんに小さく笑って、仲居さんと、パッと見、日本人の出で立ちの外国人さんの元へと歩き出した。

 一肌脱いできますか。

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