隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 51話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 両手の自由の利かぬ場所で。

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 ~ 湯にのぼせて 51 ~

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「ほ、ほんとに?」
「ん?」

 笑顔で、首を傾げられる。
 またその笑顔が、たっぷりとした悪戯心を含んでいるのがとてもよく解る。

「お布団、押入れに入れてあるから出したら…」

 いいのに、と続けようとしたわたしのお尻にぴたりと手を当てられて、口を噤む。

「テーブルが良いんですか?」

 にっこり満面の笑みを濃くした彼女に、わたしは慌てて首を横に振った。

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 まさか、旅館のいわば備品であるテーブルの上でえっちするだなんて、とんでもない。
 ということは、わたしに選べるのは畳の上でのえっちのみ、という事になる。

 でも絶対に背中が痛くなるのは予想できるし、こんなところで、という頭が働かなくもない。だから押入れの布団を、と言い掛けたけれど、どうやら雀ちゃんは今すぐわたしの身体を開きたいらしくて、黙らされた。

 これからナニをする為の場所の相談だなんて恥ずかしさがわたしの顔を赤くするけれど、雀ちゃんは特に気にするわけでもなく、むしろ、恥ずかしがるわたしを眺めては口元に笑みを浮かべている。

「あ、そうだ」

 いいコトを閃いた、とその顔に書いてあるけれど、雀ちゃんのいいコトは今のわたしにとって悪いコトな気がしてならない。

「このまま、私の上でするって手もありますけど?」

 ほら、やっぱり。
 悪いコトだった。

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 雀ちゃんが胡坐をかいていて、その膝の上に対面する形で座っているわたし。
 彼女の首に腕をまわして、掴まっていないと不安定で仕方ない。

 もしもこの体勢でするとなると、わたしはずっとこうして両手で掴まっていなくちゃいけないから、手を使って抵抗することもできないし、声を抑えるために口を塞ぐことも出来ない。

 つまり、無抵抗。

 対して雀ちゃんは、両手が空いていて、わたしからの抵抗もないし、多少の動き辛さはあるものの、好き放題できる。

 これがわたしにとって、いいコトな訳がない。

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 けれどわたしの悪い予感は的中するもので、お尻を柔らかく撫でていたその手が、意図的に、わたしを感じさせようとしながら、それまでよりも緩慢な動きで背中を撫であげ始めた。

「ンっ」
「意外と、この体勢が現状では一番かもしれないですね」

 思わず、小さく声をあげてしまったわたしにクスリと笑みを零して、雀ちゃんは低くそう囁く。
 その声質はもう、行為が始まったことを合図するように優しく甘く、そして意地悪だ。

 彼女の眼差しさえ、声質に比例するよう意地悪さを増して、わたしを熱く射貫く。

「待って、た、畳でいいから」

 こうなってしまうと、布団だなんて贅沢は言わないからせめて、両手が自由になる状態でしたい。

「ね? お願い」

 可愛く言ったら聞いてもらえるかもしれない。
 そんなわたしの考えを見抜いたような顔で、雀ちゃんは唇の端をあげる。

「駄目ですよ、ちょっと、遅かったですね」

 細められた目に却下を告げられたと同時に、胸の締め付けが軽くなった。

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 何をされたか1秒後に理解して、赤らんだ顔で彼女をじとりと睨む。

「ばか」
「だって、外さなきゃ出来ないじゃないですか」

 服の上から簡単にブラのホックを外すだなんて、どれだけ手慣れてるのよ。
 器用さに素直に感心できずに、手の早さに眉を顰めていると、彼女の顔がゆっくりと近付いてくる。

「そんな怖い顔しないで。イケナイ事の続き」

 鼻の頭同士がくっつきそうな距離で、「しませんか?」と少し掠れた甘い声で言われると、数分前の興奮の欠片が蘇ってくる。
 わたしが彼女の膝の上に乗っているから、視線の高さでいえばこちらが上。
 雀ちゃんを見下ろす点では先程と一緒なのに、主導権は完全に握られている。

「ほら」

 顔を傾けて、じり、と距離を詰められて、もうあと数センチで唇が触れそうになる。
 わたしが瞼を閉じれば、イケナイ事の続きが始まるのは目に見えている。

 それを想像して、先程の興奮をまた思い出している自分のはしたなさ。

「愛羽さん」

 吐息で名前を呼ばれると、一瞬、自分でも分かるくらいに瞳が揺れた。
 そんなにも雀ちゃんを、快感を、欲しているのかと動揺して、隠すようにわたしは急いで目を閉じた。

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