※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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この冷たい唇に熱を。
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~ 湯にのぼせて 5 ~
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夕食で満腹になった腹が少し落ち着いてから、再び向かった大浴場。
お酒飲んでるんだし、長湯は絶対駄目ですからね。と言い聞かせて早めに切り上げた湯。
もっとツルツルになりたかったのに、と頬を膨らませる愛羽さんを宥めながら部屋へ帰ると、二組の布団が敷かれていて、冷蔵庫には酒とつまみ。
うーん、やっぱり素晴らしい腕だ、あの仲居さん。
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布団を敷く関係で壁にぴたりとくっつけて端に寄せられたテーブルにお酒とつまみを乗せて、ふたりで隣合わせに座椅子へ座って、緩く飲む。
するとやっぱり、出現するのは愛羽さんの癖。
私のバイト先でやっているのは見た事ないから、家でのみ、発動される癖なんだろう。
暑いと服を脱ぎ始めるこの癖。
まぁ……外でやったら一大事だけど、その辺りの線引きを彼女は忘れていないんだろうな。
この癖は、完全に気を抜いてお酒を飲んだ時だけのようだ。
まーさんの前でもやっているのは、見た事がない。
でも、私と家で飲むときは、結構、ある。
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今夜、この部屋に仲居さんが訪れる事はもうない。次にこの部屋へ人が来るとしたら、明日の11時以降だろう。そういう約束を愛羽さんが仲居さんと取り付けていたのを聞いた。
だからだろう。目の前で、浴衣の腰ひもを中途半端に解いて、浴衣の肩を肌蹴て、暑い暑いと繰り返している彼女の醜態が晒されているのは。
「愛羽さん、飲み過ぎたんじゃないですか?」
「そんな、飲んで、ないもん」
ゆらん、ゆらん、ゆらん、と左右に揺れる彼女の体。
肌蹴けて見える胸元まで肌が赤いのはアルコールに犯されているからだ。
風呂に入って体温が上昇した所に、お酒を投入したのだ、回り易くて当然。
苦笑しながら、夕方買ったスポーツ飲料の蓋を開けて差し出す。
「ありがと」
まだ、会話は成立するくらいの酔っ払いようだから可愛いものだ。
これが次のステージまで酔いが進むと、差し出したスポーツ飲料を見て「コレ、お酒? お酒じゃなきゃ飲まないわよ」とか言い出すのだ。
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中身が大分減って戻ってきたペットボトルに蓋をしながら、愛羽さんに視線を遣れば、にへあ、と笑う彼女。
締まりのないその表情が可愛くて、頭を撫でる。
私の手にすり寄る愛羽さんは猫のようで、つい、捕らえてしまう。
猫は、犬と違って気まぐれだから、捕まえておかなければ。なんてつらつら考える私も、大分、酔っ払っているんだろう。
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彼女の項に手の平をあてるようにして捕らえ、引き寄せる。いつもなら、こうしたら私に抱き着くように首に腕を回してくるのに、今日は平衡感覚がひどく麻痺しているのだろう。ぱたんと両手を畳について、自分の体を支えた愛羽さん。
その拍子に、彼女の着乱れた浴衣からちらりと覗いた膨らみ。もう数センチで桃色のそこも見えてしまうかもという程に肌蹴たその光景に、沸き上がる感情はただひとつ。
項へあてていた手を彼女の頤へ。指をかけて掬い上げるように上向かせて、瞳同士を繋ぐ。
アルコールに溶けたその瞳は、なめらかな光を湛えていてどこか妖艶というよりは幼さがある。
「あい、は……さん」
自分の声が掠れたのは何故だろう。
彼女の瞳の、その幼さにすら欲情してしまった事への罪悪感か。いや、そもそも、どうして私よりも年上の彼女へ罪悪感を抱く必要があるのか。
そんな事を自問しても、答えは出ぬままで私は吸い寄せられるように彼女と唇を重ねた。
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さっきまで冷酒を舐めるよう少しずつ飲んでいたせいなのか、彼女の唇は少し冷たい。それに反するように私の唇は熱くて、彼女へ熱を移すように口付けを長引かせた。
アルコールのせいで速くはない頭の回転。そんな思考でも真っ先に思うことは、彼女の唇を離したくないということ。
この柔らかな唇をもっと、感じていたい。
頤を掬っていた指を頬へとすべらせ、そのまま掌で顔を包み込むように捕らえた。
すると愛羽さんが何かに反応するかのように、キスの合間に微かに強い呼気を漏らす。それは私の濡れた唇を乾かすように通り過ぎて、頬へと滑っていった。
伏せてあった瞼が開き、何か言いたげな瞳がこちらを見上げるけれど、離れてしまった唇が欲しくて彼女に尋ねることもせずにまた唇を重ねる。
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愛羽さんの唇にこちらの熱が大分移った頃、やっと私は彼女を解放した。
若干、息の乱れた彼女は大きく肩を上下させてから、困り顔で私を見上げてくる。
「……すずめちゃんのせいで」
まだ舌も絡めてないのに、呂律が怪しい彼女は咎めるような視線をくれる。
「……心臓が……どきどきする」
天然の小悪魔なのか、このひとは。
そんな可愛いことを言われたら、余計燃えるということを分かっていて、やっているんだろうか。
私は彼女の頬を包む手を両手に増やして、彼女の揺れる瞳を覗き込む。
「のぼせた時みたいに?」
揶揄うように言ってみれば、思わぬ反撃。
「……のぼせた時より、ずっとどきどきする……」
可愛さに、こちらがやられそうになる。
その困ったようなハの字の眉、忙しなく彷徨う視線、上気した頬。総動員で、私を煽りにかかっているのか。
なら、そのとおり、煽られてしまおう。
余すことなく彼女を頂こう。
私は再び、彼女と唇を重ねた。
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