隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 48話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 イケナイ事。

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 ~ 湯にのぼせて 48 ~

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 可愛い彼女が、自分を取り戻す為に壁に打ちつけた額。赤くなっていたけれど、少し、赤みが引いてきた。
 二人で床に座って、わたしは体を乗り出すようにして、また、その額へと口付けた。

 唇を押し付けて、ゆっくり離れると、こちらを見上げる瞳が至近距離にある。
 小さく微笑みかけてみると、わたしの頬へ片手が添えられて、引き寄せられた。抵抗する訳もなく、彼女に誘われるままに唇を重ねると、柔らかなそれがわたしを啄んだ。

 わたしの唇を小さく何度も啄んだ雀ちゃんは、それでも足りない、と言うように頬に添えていた手をするりと項まで回して、口付けを深くしてくる。

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 わたしを好きか、という問いかけに即答で、大好きです、と答えるだけあって、キスからも好意が伝わってきて、脳が甘く蕩けてゆく。
 互いの呼吸と、唇を食む音。そして微かに鳴る唾液の音で、旅館の部屋はいっぱいになる。

 ついさっき、わたしの体を壁に押し付けて、棘のある瞳で睨み下ろしていた人物とは思えないほどの柔らかな口付け。
 雀ちゃんの舌の愛撫がたまらず、「んぅ…」とだけ声をあげれば、項を引き寄せていた手が後頭部へと回り、くしゃりと髪を握るように撫でられた。

 ――…ま、ず……ぃ。

 雀ちゃんの甘い手付きに背中が痺れ、肩の後ろにぞわりとした快感が湧く。
 彼女と付き合うようになって随分慣れたけれど、まだまだ、頭を撫でられる経験が不足していて、すぐに快感に浸されてしまう。

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 女特有の繊細さがあるからなのか、はたまた、安藤雀という一個人が持つ優しさなのか。
 キスしながら手で撫でるこの行為をされる心地良さと、一瞬にして出来上がるムードのクオリティの高さを、わたしはこの人から初めて知ったのだ。

 そんな事を考えていると、いつの間にか、雀ちゃんの舌がわたしの舌の下側へと潜り込んでいた。
 普段、食べ物でさえそこに触れる事はまずなくて、慣れない刺激に、体が熱くなる。

 思わず、彼女の空いている腕に縋るよう、服を掴むと、口内でくちゅりと音を立てて、舌がわたしの中から抜けていった。

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 たった1分か、長くて2分程度のキスだったのに、息があがっている。
 酸素を求めて呼吸を整えていると、彼女の腕の服を掴んだ手を雀ちゃんが掬い上げるようにして、自分の首に回させた。

「こっちも」

 優しく言う彼女に促されて、わたしは両腕を雀ちゃんの首に絡ませ、体を密着させた。すると、満足そうに口角をあげた彼女がわたしの腰に両手を回して、そのまま畳へと仰向けに転がる。

「わ、ちょっと……!?」

 当然ながら、腕を絡めているわたしは、彼女の体の上に乗り上げる。

「あ、ぶないじゃないの」
「大丈夫ですよ」

 いきなり体勢を変えられて、ほぼ全体重を彼女に掛けてしまったけれど、雀ちゃんは笑顔のまま。重たくないのかしら…?

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 自分の体重負荷が心配になるけれど、そんな優しい笑顔を見せられていると、なんだか彼女が余計愛しくなってくる。
 ジン、と胸が締め付けられるような痛みを覚えて、髪が顔にかかるのも気にせず、雀ちゃんに覆いかぶさって、唇を重ねる。

 ずり、と体を上にずらして、両肘を雀ちゃんの頭の横について、体勢を安定させた。

「ん、ぅ」

 口付けの角度を変え、彼女の口内へと舌を滑り込ませると、迎えにきてくれた彼女の舌。ざらつく表面を覆う唾液を交換するように舌同士をゆっくりと擦り合わせる。

 頭を傾けたせいで、わたしの髪が垂れ下がり、まるで暗がりの中キスしているような感覚になりそうだった。

 まだ、夕方で、日も落ちていない。
 なのにこうして、熱く、深く、口付けを交わすわたし達。

 背徳感は時として興奮材料にも成り得る。

 一旦、彼女との口付けを解いたわたしは、潤む瞳で大好きなひとを見下ろした。

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「まだ夕方なのに、いいの?」

 どちらかと言えば、わたしから仕掛けているキスなのに、悪びれもなく言ってみる。
 少し口角を上げた雀ちゃんは、わたしの髪を耳にかけてくれる。

「誰も見てないし、構いませんよ。多分」

 おどけたように、多分と最後に付け足した雀ちゃんのジョークに乗ってみようかしら。

「イケナイ事、しちゃうの?」

 強引に迫られた時、お風呂、と喚いたのはどこの誰だったか、なんて、記憶の彼方。
 婀娜めいた声で言ってみせると、雀ちゃんはわたしの後頭部を優しく引き寄せながら、声を潜めた。

「そう。内緒で、イケナイ事しましょう」

 誰に咎められる事でもないのに、わざとイケナイ事と言い合って小さく笑う。
 傍から見ればただのバカップルだけど、当人達はこれで楽しいし、幸せだし、ばかげているけれど、催眠術のように背徳感を自身に植え付けて、興奮するのだ。

 わたしはゆっくりと彼女の唇へと自分のそれを重ねた。

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