隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 39話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 滝のそばで。

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 ~ 湯にのぼせて 39 ~

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 わたし達二人は、滝が目の前に現れると、歓声をあげた。
 雰囲気はもう、「探し求めていた秘宝が!」と同等。
 二人できゃっきゃとはしゃいでいたら、滝見物を終えたのだろうか、すれ違うハイキングの格好をした老夫婦に微笑ましく見物されてしまった。

 ……いい年して、ちょっとはしゃぎ過ぎた。
 赤くなりそうな顔で反省していると、隣では、口を開けたまま滝を見上げている雀ちゃん。

 その口に指でも突っ込んでしまいたくなるけれど、流石にそれはしない。

 道の先を見れば、まだ少し滝に近付けるコースがある。

 わたしは、彼女の手を引いた。

「ね、もうちょっと近付いてみよう?」

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 近づけばより、滝はその存在感を増す。
 見上げる程巨大な滝が、滝壺へ水を叩き落とすその光景は、目を奪われ、いつまでも眺めていられそうな魅力があった。

「凄いですねぇ……」
「……うん……」

 わたしの語彙力が少なくて、この素晴らしい光景を表現できる言葉を持たない。見上げるその滝に、心を奪われる。

「凄い……」
「はい……」

 同じ言葉をわたしたちは繰り返しながら、立ち尽くした。

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 どれくらいそうして滝を見ていたのだろう。
 ちょっと、首が痛い。見上げ過ぎた。

 顔を顰め、首の後ろへ手をあててゆっくりと顔を正面に向けた。2、3度首を揉むと、雀ちゃんはまだ見上げてるのかしら? とそちらへ視線をやると、ばっちり目が合った。

「へ…?」

 まさか、雀ちゃんがこっちを見ているだなんて思わなくて、素っ頓狂な声が出た。
 ぽかんと口を開けたままきっちり3秒は見つめ合ったと思う。

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「ちょ! なんでこっち見てるの。恥ずかしいでしょ」

 彼女の腕を軽く叩きながら言うと、その口からは予想もしない言葉が述べられる。

「愛羽さんが綺麗で見惚れてました」
「な……」

 言葉の意味を理解すると同時に、顔に熱が集まってゆく。
 な、なんでそんな事そんなサラッと言えるのっ。

「た、滝見たらいいじゃないっ」

 しかも、何その笑顔。このマイナスイオンより爽やかなんだけどっ。
 恥ずかし過ぎて彼女から顔を背けると、視界の端で雀ちゃんがこちらに身を寄せたのが見えた。

 滝風に靡くわたしの髪をふわりとかき上げて耳元へ口を寄せる。

「滝より愛羽さんの方が綺麗で、キスしたくなります」

 ――なっ、あ……なん…で……っ。

 俯いた顔に、更に赤みがさして、多分耳も相当赤くなってると思う。
 少し肌寒いとすら感じていたこの場所で、汗ばみそうな程、熱い体。

 心臓の音は滝の音に負けないくらい大きくなって、雀ちゃんに聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいだった。

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 わたしがあまりにも、カチコチに体を固めてしまうと、雀ちゃんは耳元に口を寄せたまま、少し笑った。
 そして、わたしの名前を呼ぶ。

「今なら、誰もいません」

 その言葉が何を意味しているかは、理解できる。

 でも。

 この真っ赤な顔を、自分の意思で上げるのは至難の業。

 動かないわたしに、雀ちゃんはまだ攻め込んでくる。

「キス、したい。愛羽さん」

 そのキーワードを聞いただけで……心臓が跳び上がった。

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 ――ほんと、普段はぽやっとしてるくせに……っ。

 これでも年上なのに、わたしをこうして翻弄してくる。
 こんなにも、動揺させてくる。

 先程も、老夫婦とすれ違ったように、ここは誰も来ない訳じゃない。ただ人通りが少ないだけ。
 人が途絶えた今が、その絶好の時だとは理解してる。

 けど、どんな顔して、彼女を見上げればいいのか分からなかった。

 耐えかねて、彼女の腰あたりの服を、俯いたまま、掴む。

 体ごと彼女に向きあうように一歩移動する。

 これが、わたしの精一杯だった。

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 わたしが体を向き合わせたせいで、髪をかき上げていた手が外れてぱさりと頬に掛かる。
 雀ちゃんはゆっくりとわたしの顎へ手をかけて、掬いあげた。

「好きです、愛羽さん」

 見上げた彼女は真面目な顔つきでわたしを見てくる。その整った顔に胸がざわつく。

 告げられた言葉に胸が締め付けられる感覚を覚えながら、瞼を閉じると、柔らかな感触が唇に触れて、すぐに離れた。

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 キスを終えた雀ちゃんは、わたしの頭にぽふと手のひらを置いて笑う。

「愛羽さん、真っ赤。可愛い」
「……るさい。かわいくない。ばか」

 キッと睨むと、さして気にもせず、彼女はまた笑う。それはそれは嬉しそうに。

「こんな所で人が来たらどうするのよ」
「来てないからしたんですよ」

 ほら、と言って周囲を見るように手で促してくる。
 見回せば、確かに、今はどこにも誰もいないようだけど。

 女同士だからとかでなくて、わたしは元々二人きりでないとイチャイチャしたくない派。
 恥ずかしくて仕方ない。

「……ばか」

 恥ずかしさを込めてもう一度、言っておいたけれど、彼女はまた、嬉しそうに笑った。

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