隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 31話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 悪寒にも似たその感覚。

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 ~ 湯にのぼせて 31 ~

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 いつもされる側だと、する側に回ったとき、頼りになるのは記憶。

「可愛い、雀ちゃん」

 いつも、どうされているのか。
 いつも、どんな言葉を掛けられているのか。
 雀ちゃんの行為を思い出しながら、耳に熱く、甘く囁いた。

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 彼女の右耳に舌先をあてて、つるりとした感触を楽しむ。
 耳裏もゆっくりと舐め上げれば、雀ちゃんの呼吸が乱れていく。その様子もまた可愛くて、耳をそばだてて彼女の快感を感じ取る。

 過去、恋人は居たのだろうけれど、多分雀ちゃんはする側の人間だったんだろう。そう思わせる行動が節々にあって、例えば彼女は、喘ぐ事に慣れていない。

 だから、極力声を我慢して、息だけで喘ぐ。
 わたしの目標は、彼女を思う存分、気兼ねなく喘がせてあげることなんだけど……いかんせん不慣れなもので、その目標が達成されるのは遠い未来のことと思う。

 でも、こういう事は慣れだし、焦ってもいけない。
 そう開き直って、時折訪れるこういうチャンスで、わたしは精一杯愛を伝えるのだ。

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 外耳を辿り尽くしたら、終わりではない。次は、耳の穴だ。

「雀ちゃんの耳まっか。かわいい」

 冬の日の外で駆けまわった子供のような耳に微笑みが零れてしまうけれど、わたしとは対照的に雀ちゃんは呼吸を整えるのに必死だ。そんなの、無駄な抵抗なのに。

 ――ふと、気が付いた。今更だけど。

 わたしは自分がこういう側に回ったとき、かなり、意地悪な部類に入るかもしれない。
 だって、彼女がいじらしく乱れた息を整えようとすれば、それを阻止してやりたくなるし、待ってと言われたら待ちたくなくなってしまう。

 ――意地悪が過ぎて鬼畜にならないように、しなきゃ。
 

 そんな考えをもった自分に、「意地悪を止めはしないんだ」と胸中で小さく苦笑した。

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「雀ちゃんの耳可愛いから、もっと舐めたくなっちゃう」

 視覚を失っている彼女に、宣言するよう伝えてから、再び耳へと舌を這わせる。
 耳の中のヒダ一つずつを丁寧に舐めていくと、雀ちゃんの手が、布団のシーツを握った。縋るような仕草を目にすると、また、ぞわわ、と悪寒にも似たあの感覚が沸き上がってくる。

 興奮を落ち着けようと息を吐いたつもりが、彼女の濡れた耳を擽ってしまったみたい。

「んっ、ぅ」

 濡れた皮膚は風に敏感だ。気付いて、わたしは口元へ笑みを浮かべてもう一度、今度は意図的に彼女の耳へと息を吹きかけた。

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 身体を捩るようにして、わたしのそれから逃げようとした雀ちゃん。覆いかぶさる体勢を利用して、その動きを封じると、わたしは彼女の左側頭部に手を添えた。

「可愛い過ぎ、雀ちゃん」

 囁きながら、彼女の頭が逃げないように添えた手でしっかりと捕まえた。

「もっと可愛いとこ、見せて?」

 伸ばした舌を耳の穴へと捻じ込んだ。
 予想通り、快感から逃げようとする雀ちゃんを捕まえて、わざと音がたつように舌を蠢かせる。
 ぐちゅと立つ音にわたしまで興奮しながら、舌を引き抜いた。

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 目隠しをしていると、彼女の目辺りの表情は読めないんだけど、大体の顔付きは判る。
 例えばこうして、見下ろす彼女が今、物凄く蕩けた顔をしているのかどうかだって、分かる。

 わたしの愛撫で、雀ちゃんが気持ち良くなってくれていると思うと、ぞくぞくして仕方ない。けれど、その感覚はすぐに渇いて、また更に、彼女を感じさせたいと動きだしてしまう。

 短く浅い呼吸を繰り返している雀ちゃんの左側頭部を抱える腕を外して、反対の手で濡れた右耳へと触れる。

「ん」

 それだけでも声をあげる雀ちゃんの敏感さに笑みを浮かべながら、耳から顎のラインを辿り、首筋、首の中央、鎖骨の間の窪みへと指を這わせた。
 そうしていくことで、次に狙うのはここだと伝える。

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 鎖骨の窪みをくるりとひと撫でした指を退けて、ゆっくりと顔を近付けていく。
 首を傾けてゆっくりと鎖骨にキスを落とし、中央から外へ向けて唇を押し当てたまま滑らせてゆく。
 乾いた肌と唇とではあまり滑りが良くないせいか、彼女の吐息は乱れないし、漏れ出る声も聞こえない。

 肩までたどり着いた唇を薄く開き、舌を伸ばす。
 濡れたそれをぴとりと肌へ押し付け、唇が辿ってきた道を逆戻りする。

「ぅ、く……」

 ――そう、その声が聞きたかったのよ。

 我慢しきれなくて漏れたその声に、じわと充足感を感じる。が、それも一瞬。再び渇きを感じたわたしは、反対の鎖骨にも舌を這わせていく。
 唇よりも、やはり舌での愛撫の方が気持ちいいらしい。先程よりも随分いい反応をくれる雀ちゃんを観察しながら、わたしはゆっくりと彼女の胸へと手を伸ばした。

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