隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 30話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 目隠し。

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 ~ 湯にのぼせて 30 ~

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「ぅ、んんっ」

 わたしのキスで唇を塞がれた雀ちゃんは、忍び込んだ舌に苛められて、くぐもった声をだす。
 もちろん、苛める場所は上顎。
 しつこいと怒られてしまいそうだけれど、やめられない。だって、雀ちゃんの反応が良すぎて、やればやるほど感じてくれて、何かこう……煽られるものがある。

 それでも、呼吸の合間は作ってあげて口付けを解く。

「……雀ちゃん、可愛いすぎる……」

 彼女よりは落ち着いた呼吸だけれど、整える必要のあるそれを吐く。5回もすれば正常呼吸に戻り、わたしは蕩けた表情の雀ちゃんを見つめた。

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 ああもう……可愛い……普段あんなにわたしの事苛めてくるくせに、いざ自分がされたら、一瞬でこんな蕩けた顔になるとか反則的に可愛い。

 濡れた口元を拭ってあげる間も、どこか恥ずかしそうに目を泳がせる彼女。

「もっと可愛い顔みせて?」

 今度はちゅ、と触れるだけの口付けをして、そのまま頬から耳へとキスを移していく。そうしながら、彼女の浴衣の腰紐の結び目を引いて緩め、耳元で、小さく言った。

「布団、行こっか」

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 大人しくわたしの言葉に従った彼女が、無駄な抵抗なのに、移動する為立ち上がりながらさりげなく腰紐を結び直した。

 見つからないようにやったつもりだろうけれど、見咎めたわたしは彼女の背後で目を細めた。

 移動と言っても、数歩で完了する。
 布団の上へ来たわたし達は向かい合って座った。

「コレ、なんで結んであるのかしら?」

 解いた筈なのに、と続けて言いながら彼女の腰紐を引く。
 簡単に解けたそれを手元へ手繰りながら、意地悪な視線を向けた。

「……だって」

 言い訳するような口調でそれだけ言って、後が続かず口を噤む。
 まぁ確かに、腰紐解いたまま歩いたら浴衣の前が開いてそりゃあもう恥ずかしいでしょうけれど。
 気持ちは解るけど、駄目。

「いけない子には、お仕置きが必要ね?」

 解いた腰紐片手に笑んでみせるわたしの表情は、たぶん、かなり意地悪だ。

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「痛くない?」
「いたくは、無いですけど…」
「そう。なら、これでいいわね」
「良くないですよ!」

 噛みつくように言う彼女だけど、貴女が腰紐を結い直さなければこうはならなかったのに、と思う。でも、もう時すでに遅し。
 目隠しをするよう3周頭に巻かれた腰紐の余りを側頭部から垂らして、まるでリボンをつけた子みたいに変身した雀ちゃん。

「雀ちゃんが無駄な抵抗するからこうなってるのよ?」
「だからってなんで目隠しなんですか」
「んー、紐があったから?」
「山があったから登ったみたいな言い方しないでくださいっ、ていうかこれ外して……!」

 言いながら自分で紐を解こうと結び目を手探りで探し始める雀ちゃん。
 まだ、立場が分かってないみたい。

「紐、もう1本あるから、手も縛ろっか?」

 自分の腰紐をシュルルと解くと、雀ちゃんは音で察したのか、ピタリと動きが止まった。

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「あ、の……愛羽さん?」

 まさかそこまではしませんよね、なんて響きの声に笑みが濃くなる。

「いい子にしてたら、すぐ解いてあげるから」
「……ホントですか?」
「ええ。その代わり、抵抗したら手も縛るけど」
「う……」

 ふふふと笑えば、雀ちゃんの手がゆっくりと目隠しから遠ざかった。
 どうやら、無駄な抵抗はあきらめたみたいだった。

「いい子ね」

 さらりと髪を撫でてあげる。

「じゃあ解いてくれます?」
「まだダメ」

 ぴしゃりと言うと、唇を尖らせる彼女が可愛かった。

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「ところで何でこれ、横で結んであるんです?」

 目隠しを触って、その結び目が側頭部に来ていることに疑問が沸いたのか、雀ちゃんが首を傾げる。

「だって、ハチマキみたいに後ろで結んだら、寝転がった時痛いでしょ?」
「あ、そうか。…………、なんでそんな手慣れてんですか……」

 しまった。失言。
 初めてやったから結び目がヘンな所きちゃったとか言っておけばよかった。これじゃあ目隠しプレイ経験済って言ってるようなものだわ。

「詮索禁止」

 言って、これ以上会話が広がらないようにわたしは彼女の唇を塞いだ。

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 目隠しをされているせいなのか、キスだけでも甘い声をさっきよりも漏らす雀ちゃん。
 このまま愛撫をしたら、彼女はどんな甘い声を聞かせてくれるんだろう。

「雀ちゃん、可愛い」

 キスを解いて、耳元で囁く。
 目でわたしの位置を確認できない彼女には、突如、耳元で囁かれた状態なのだろう。ビクリと肩を揺らした。

 ――そういえば、そうだ。

 わたしは胸中で密かに、昔やった目隠しプレイについて思いを馳せた。
 目隠しは、簡単に言えば視覚を失う代わりに、聴覚と触覚が敏感になる。だから、まだ理性が大半残っている段階でいきなり相手に立ち位置を変えられると、快感よりも驚きが勝って、なかなかエッチに集中できないんだった。

 随分昔の経験で、そういう細かい事を忘れていた。

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 数瞬でそれを思い返したわたしは、彼女の左頬に右手を当てて撫で、右耳に囁く。

「ごめんね、びっくりした?」

 ふるふると首を横に振ってくれる彼女に続けて言う。

「浴衣、脱ごっか」

 脱ぐと言って腰紐の無い浴衣を肩から滑り落とすだけ。
 ぱさりと彼女の背後に落ちたそれを布団の外へ放り、わたしはゆっくりと彼女を押し倒した。

 彼女の身体を跨ぎながら自分も浴衣を脱ぎ捨てて、覆いかぶさる。
 この状態ならば、肌の触れる感覚で大体の位置と体勢が掴めるはず。無意識にでも相手の体勢が把握できれば、安心感が生まれてえっちに集中しやすくなる。

 なんとなく、身体を緊張させている雀ちゃんにキスして、頬を撫でる。

「昨日いっぱい気持ちよくしてくれたから、今日はわたしがいっぱい気持ちよくしてあげるね?」

 見えていない雀ちゃんに微笑んでしまうのは、愛しさから。
 唇、頬、耳とキスして、一段低くした声で、囁いた。

「だから、気持ちいいことだけ、雀ちゃんは考えてて?」

 喉奥で、小さく唸った。
 これは彼女の癖。こう……グッときたりしたら、「ぅ」と言う癖が彼女にはある。

 それが出たということは、この目隠しされた状況が、そこまで嫌ではないということ。
 流石に、お仕置きに託けて彼女の嫌なことを強いたりはしない。

 わたしは唇の端で笑んで、耳たぶにキスをした。

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