隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 29話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 待ってあげられない。

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 ~ 湯にのぼせて 29 ~

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 お酒を飲む少し前からそうだったけれど、今日はなんだか、わたしと雀ちゃんの立場が逆転している。
 彼女の揺れる瞳を見つめながらそんな事を思う。

「だめ?」

 再度、彼女に問うと雀ちゃんは小さく、首を振った。

「だめじゃ、ない…です」

 恥ずかしさを湛えたその瞳がゆっくりと瞼に覆われたのを確認して、わたしは彼女と唇を重ねた。

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 恋人とのキスはどうしてこうも飽きないのか。
 飽きるどころか、もっと欲しいと、更に深く長く、求めてしまう。
 彼女はわたしの唇を柔らかいとか言うけれど、そっくりそのまま言葉を返したい。

 ――やわらか……。

 啄むそれはわたしが唇で挟むようにすれば、ふにゃりと形を歪めながら甘い感触を伝えてくれる。上唇も柔らかいけれど、下唇の方がさらに、柔らかくて啄み甲斐がある。

「……は……」

 つい、零れた自分の声。
 自分が思うよりも自身が興奮していて、事を急ぎ過ぎてしまいそうな気すら抱く。

 普段、される側だけど、たまにこうしてする側になった時は正直まだ、手探り状態だった。

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 それでも、愛しさと触れたいという欲求を頼りに、彼女の唇を割り、舌を差し込む。
 洩れる彼女の吐息さえ甘く感じて、頭が痺れた。

 口内へ滑り込ませた舌で雀ちゃんの舌を撫でるように舐めれば、彼女のそれは誘われるままに伸びて、わたしに絡みついた。
 唾液で滑りの良い舌同士を絡め合ったあと、歯列をなぞり、上顎へと舌を伸ばす。
 固くした舌先でそこをくすぐれば、彼女は首を竦めるようにして逃げようとする。

 ――可愛い。

 弱点である上顎を刺激されると、彼女はこうして逃げようとする。それを捕まえて、更にねっとりと舐めてあげると、雀ちゃんは切なげな声を漏らした。

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 一旦、舌を抜き、唇を離すと、銀糸が二人の唇を繋いだけれど、雀ちゃんが俯いて、それはプツリと千切れた。
 乱れた息を整えようとする彼女の俯く額に口付ける。
 一見それは優しいキスに思えたのかもしれない。絆されたようにこちらを見上げた雀ちゃんに胸中で小さく謝って、わたしはもう一度、唇を奪った。

「んっ」

 唇を重ねられ、舌を入れられた彼女は声を小さくあげて目を見開いた。瞳を細めて笑んで見せると、雀ちゃんは照れたように瞼を閉じる。
 純粋なその反応に気をよくして、わたしは再び彼女の弱点へと舌を伸ばしていく。

 その気配を察知したのか、雀ちゃんは身体ごと後ろへ逃げようとした。でも、背には座椅子の背もたれ。逃げようがない。

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 チロチロと舌先で擽れば、ぴくん、と跳ねる肩。宥めるように手で擦ってあげながら、今度は大きく、ねっとりと上顎を舐め上げた。

 人よりも長い舌は滑舌を僅かに失う代わりに、こういう時に役に立つ。
 まぁ、普通に喋るぶんには全く支障がないから、むしろメリットだらけの舌の長さかもしれない。

「ンッ…ん」

 小さな声が快感を零して、わたしを満たしてゆく。
 彼女がわたしの愛撫に反応すればするほどに、わたしの中にある欲求が満たされてゆくのだ。

 けれど、まだ、足りない。

 もっと、彼女の可愛いカオを、声を、とわたしの中の欲求が渦巻きながら膨らんでゆく。

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 舌をギリギリまで伸ばして、上顎の奥からずるると、歯列裏まで舐め上げ、そのまま舌を引き抜くと、気持ちよすぎて声にもならなかったのか、雀ちゃんは首を竦めて、肩を震わせた。

「そんなに気持ち良かった?」

 親指で彼女の唇を拭って、そのまま指先で首筋を撫でる。過敏な快感神経が反応して、彼女は小さく声をあげる。

「ふぅん? ココも、いいんだ?」

 手を返して、爪で浮き出た首の筋から鎖骨までをなぞると、まるで止めるように、雀ちゃんがわたしの手首をパシリと掴んだ。
 まるで無意識に思わずというような彼女の仕草にすこし驚いたものの、意地悪なわたしはすぐに笑みを浮かべた。

「どうして、止めるの?」
「ぁ、いや……その…」

 自分の行動すら把握できていないのか、はたまた、説明するのが恥ずかしいのか。
 予想は後者だけれど、と内心ほくそ笑みながらも、捕まれた手首と彼女の顔を見比べながらもう一度問う。

「嫌だった?」
「い、いやってことじゃ……ないですけど」

 尻すぼみな声でもごもごと言う雀ちゃんはゆっくりとわたしの手首を解放しながら、視線を彷徨わせた。
 挙動不審なそれも、理由のアテがあれば可愛く目に映るもの。

 わたしは指先で彼女の顎を掬い上げ、わたしの目を見るように促した。

「気持ちよすぎて、待って欲しかったの?」

 見透かしたように言ってみると、雀ちゃんは重なった視線も解けない程に動揺を顕わにして、口をぱくぱくさせる。その顔は言わずもがな赤い。
 言葉は出ないけれど、その仕草と表情だけで、図星だったと判る。

 でも、本人に肯定させたくて、答えを促すように「ん?」と首を傾げてみせると、彼女は口をへの字にしながら、頷いた。

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 ぞわ、とまるで風邪を引いたときの悪寒に似たものが、背中を駆け上がる。
 満足なのか興奮なのか、それが混ざり合ったものなのか。

 なんにせよ、さらに、彼女が欲しくなってしまった。

「ごめんね、雀ちゃん」

 先に、謝っておく。

「待ってあげられないくらい、雀ちゃんが欲しいの」

 わたしの言葉に、大きく瞳を揺らした彼女の唇を噛みつくようにして奪った。

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