※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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冷ます方法。
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~ 湯にのぼせて 25 ~
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「お、お風呂入りにいこっ」
照れの中からなんとか絞り出した言葉。
”照れているけれど何とかしたくて発言した感”がものすごくあったけれど、雀ちゃんはそこをツッコむことはせずに、最後にわたしの手をきゅっと握ってから、解放した。
「行きましょうか」
「……ん」
まるで、いつもと立場が逆転している。
なによこれ。ほんと、も、むり……恥ずかし過ぎる。
解放された手でぱたぱたと熱い顔に風を送るけれど、冷めやしない。
むしろ、その様子を彼女に微笑まれて、余計、熱くなった。
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お風呂の道具を持って、大浴場へと向かう。
道すがら、雀ちゃんからまるで子供みたいに注意をうけた。
「昨日みたいに長湯しちゃだめですよ?」
「はぁい」
自分でもそうしないように気をつけなきゃ、と思っていた所だったので、軽く首を竦めてみせた。
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大浴場へ到着すると、まだ早い時間のせいか、あまり人は多くない。
やっぱり早めの時間だとすいてていいね、なんて雀ちゃんと話ながら服を脱いで浴場へと向かう。
昨日と同じく、雀ちゃんの方が頭と体を洗うのは早い。
「先に行ってますね」
「はーい」
横で待っていられるよりも、そうして行ってくれた方がありがたいわたしは緩く返事をした。
それからしばらくして、使い終えたシャワーや鏡まわりをお湯で流して、立ち上がる。
雀ちゃんを探すと、昨日と同じ場所にちょこんと頭が見えた。
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近づいていくと、やっぱり昨日と同じように、源泉が溢れ流れ落ちる大岩を見上げている。
「雀ちゃん」
声を掛けると、こちらを振り向く彼女。お湯が掛からないようにゆっくりと湯に脚をつけるけれど、そこで動きが止まる。
「あ、つ……」
熱いお湯が苦手なわたしにとって、ここの湯は熱過ぎる。浴槽のもっと端の方なら温度は低いかもしれないけれど、雀ちゃんがここに居たんだもの。
別々の位置でお湯に浸かっているというのも変な話だし、湯の温度に慣れれば入れなくもない。
だからゆっくりゆっくり体を温度に慣れさせながら、お湯に浸かった。
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肩まで浸かって、深く深く息を吐く。
この瞬間が一番、「温泉!」って感じがする瞬間だとわたしは思う。あ、あとは硫黄の匂いを嗅いだときかしら。
でも、硫黄の匂いはそこらじゅうに漂って、もう鼻が慣れてきちゃったから、やっぱりお湯に浸かったこの瞬間ね。
「気持ちいいですね」
昨日は悪戯してきた雀ちゃんだったけれど、今日はしなかった。いい子。
彼女に相槌をうちながら、大岩へと視線を遣る。
「あの岩、そんなに気に入ったの?」
「え?」
「だって昨日もここから見てたでしょ? 岩」
なんかこう、修学旅行生が初めて東京タワーを見上げてるときみたいな感じの顔で。
「大きいなぁって思っただけですよ」
ハハハ、と笑ってみせる雀ちゃんの言葉に、何かひっかかりを覚えたけれど、わたしの弱点である熱いお湯に浸かっているこの時に問い質すような勇気は無かった。
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3分もしないうちにわたしは湯船から立ち上って「あがる」と宣言した。自分にしては早めに退出宣言したはずなんだけど、この瞬間でも、ちょっと湯あたりっぽくて、視界がぽわぽわしていた。
「愛羽さん、こっちおいで」
そんなわたしを見かねたのか、雀ちゃんが手を引っ張ってくれる。そして連れていかれたのは、脱衣所の前に、体を洗うシャワーの所。
「え?」
「水で体冷やしてから出たら楽じゃないですか?」
言いながら、温度を調整してぬるま湯くらいにして、体にかけてくれる雀ちゃん。
確かに、芯まで温まっているから体の表面温度だけでも少し下げると楽。すごい。よく思いついたわね、雀ちゃん。
わたしは暑すぎて、頭がまわらなかった。
「ありがと」
「いいえ」
少しだけ思考がクリアになってきたのでシャワーを受け取って、元に戻しておいた。
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「すごい、昨日より全然違う。楽」
昨日は浴衣を着るのも一苦労だったのに、今日はささっと着れる。
暑いけど。
「それは良かったです」
にこにこしながら、濡れた頭をタオルで拭く雀ちゃん。
なんか色々、わたしの事考えてくれてるなぁって実感する。こういう細かい事だけど、雀ちゃんの得にもならないような思いつきをしてくれるのは、わたしの為を思ってくれての結果だろう。
ふたりきりなら確実にキスしてるのに。なんて考えながら、彼女に倣うように自分の頭にタオルを被せた。
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