隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ 9話


※ 隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ は成人向け作品です ※
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 じれったいほどにゆっくり動くその手を、私はじっと見つめた。

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~ 待ち合わせは企みの香り 9 ~

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 何を言われたの分からない。
 そんな表情を一瞬浮かべた彼女は、次の瞬間にはその明晰な頭脳で理解して、眉をハの字にした。

 きっと反抗するんだろうな。
 そんな予測が簡単に出来る。
 だから彼女から何かを言い返される前に、私は唯一残っているショーツへ手を伸ばし、その薄布と肌との境に、爪を這わせた。

「ぁっ……」

 小さな声だった。けれども、彼女の息は既に乱れきっている。
 このまま敏感な場所に愛撫を続けていれば、きっと、堪えきれずに可愛い声をもっと聞かせてくれるだろう。

 それに、私の要求にも、いつか、従ってくれるはず。

 ――今度は絶対に、イニシアチブを渡さないぞ。

 私は心の中で決意しながら、彼女の脚の付け根に、指を這わせた。
 柔らかな肌や、下着の布。それらを交互に行き来しながら、囁くように名前を呼ぶ。

「愛羽さん?」

 ん……ん、と乱れた呼吸の合間に零す甘声は、反抗心と服従心どちらをも含んでおり、もう一押しだと私に覚らせた。

「ねぇ、愛羽さん……もっと――」

 昂らせる為の動きに、きっちりと反応する身体が可愛くて仕方ない。

「――もっと気持ちよくなりたいでしょう?」

 滲みの部分を人差し指で軽く撫で、この先の快感を示唆してあげれば、彼女から堪え切れないよう吐息が漏れた。

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「脱いで?」
「っ……」
「脱いで」

 怯んだ様子の彼女に言い重ねじっと視線を送れば、愛羽さんがおずおずと、動き始めた。

 縋るようシーツを掴んでいた手が解け、ゆっくりと向かう先は、彼女が唯一身に纏っている下着。
 私は覆い被さっていた体を起こして、彼女の腰の横あたりに座ったんだけど――

「な……んでそっちいくの……!」

 座り直した私を、真っ赤な顔で咎める愛羽さん。

 そりゃあそうだろう。
 覆い被さっている状態ならば、下着を脱いだって下半身はそうそう見えないけれど、横たわる人の隣に腰を下ろせば、秘所は容易に覗き込める。

 まさか私が座り直すだなんて予想してなかったんだろうな。
 私は少し笑いながら、動きの止まった彼女の手をとった。

「こうしないと見えないでしょう?」

 悪びれもせず言ってみせ、彼女の手をショーツへ導く。

「ちゃんと言いましたよ? 脱いで見せて、って」

 日本語とはなんとも曖昧で、言い逃れのしやすい言葉だと思う。
 そんなことを頭の隅で考えながら、絶句している愛羽さんの顔を見下ろす。
 そのまま、彼女の秘所へ手を伸ばして、布の上から蕾をゆっくり撫でた。

「ふ、ぁっ」

 とっさに上がった声。
 可愛い。

 その声を、もっと、聞かせてほしいのだ。

 恥ずかしそうに下唇を噛んで私をにらむ愛羽さん。
 そんな表情も可愛い。だから、もっと可愛がってあげたくなる。

 唇の端で笑った私は、再び、布の上から蕾を撫でた。円を描くように、くるり、くるりと緩慢な動きで指の腹を這わせる。

「はっ……ぅ……」

 そんな緩慢な動きから生み出されるだけの快感でも、貴女はそうやって息を乱すのだ。
 もうすでに、理性なんてほとんど残っていないくせに。

 理性に従って抵抗なんかせずに、私の言う通りにして、快感を貪ればいいのに。

「これ、なくなったら、もっと気持ちいいですよ」

 下着を軽くひっぱると、躊躇っていた愛羽さんの手がやっと、それにかかった。
 目を細め、唇をちろりと舐めた私の顔はたぶん、凶悪で意地悪そのものだと思う。

 そんなカオで褒める言葉を吐いて、果たしてそれは……効果があるのだろうか?

「そう、いい子」

 しゅる……、とシーツとの衣擦れを立てながら、愛羽さんの膝が立てられる。
 ゆっくり、ゆっくりとその身から離されていく最後の衣を眺め、私は愛羽さんの顔に視線をあてた。

 耳まで赤くして、下唇を噛み、ハの字の眉で、目を泳がせている。
 そんな顔をしながらでも、私の言う事を聞いている。

「かわいい」

 心底、そう思う。
 手を伸ばして頬をさらりと撫でれば、熱いくらいの温度だ。
 それがまた私を満たして、胸を熱くした。

 ついに、彼女の手が、脱いだ下着をベッドの外へ落とした。その直後、自分の顔を覆う彼女は、可愛い存在以外のなにものでもない。

「恥ずかしさで……しねる……」

 くぐもった声でそう言う愛羽さんに少し笑って、私は、ゆっくりと彼女の足を撫でた。

「そのまま、顔隠してていいですよ」

 一見、親切に聞こえるそれの本質は、ただの傲慢な支配欲だ。
 恥ずかしい、という理性を、私は剥ぎ取りたい。支配したい。

 私に与えられる快感だけで、理性など微塵も残らない状態にしてしまいたい。

 自分の好きな人をそうしたいだなんて、どうかしている。

 けれど、どうもならない。

 今夜は。

 今夜だけは。

 貴女の全てが、私のものだと認識させてください。

 私が全てを支配していい存在なのだという事実が、欲しいのです。

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