隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ 10話


※ 隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 顔を覆うその指の隙間から漏れ出る呼吸と喘ぎ声。

 それをもっと乱したいと思うのは私が……狂っているからだろうか。

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~ 待ち合わせは企みの香り 10 ~

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 愛羽さんの一糸纏わぬ姿は、素直に、きれいだなと思う。
 線が細くて、かと言って、骨が浮き出るような細さではなくて、滑らかなラインで全てを形成されたような身体は、綺麗だ。

 初めて抱いた時は、触れるのを躊躇ったくらいだったのに、私はどうやら愚かにもこの身体に慣れてしまったのかもしれない。

 見惚れたものの、すぐに腕を伸ばした。

 ――触れたい。

 その衝動を、欲望を、抑えられずに指の腹を白い肌へとあて、ゆるりと撫ぜた。
 シーツや服といった布が擦れるいわゆる衣擦れの音よりも、もっと繊細な音が立つ。
 
 肌を撫でる、その音。
 繊細で、細やかで。

 撫でているこちらの方が心地良さを覚えるこの肌は、さらさらだ。けれど、私が本当に求めている肌は違う。
 もっと、汗ばんでいて、手にしっとりと吸い付くようなそれだ。

「……」

 どうすれば、このひとの肌が汗ばむのか。
 その方法を私は既に理解と習得している。

 だから容易い。
 けれども、そうなるまでの工程を楽しみたいし、愛羽さんにも楽しんで……もといたくさん気持ち良くなって欲しいのだ。

 そう願っていながらも、私は堪え性の無い人間。
 待てのできない犬なのだ。

 さらさらの肌を撫で下ろす手は、下へと、向かう。

「……んっ」

 指が秘所へ近付いたことで、両手で顔を覆ったままの愛羽さんが声をあげた。

 ――かわいい。

 ほんの少し、繁みを撫でただけなのに。
 たったそれだけの刺激で、反応する彼女の敏感さが可愛い。

 そして。
 貴女のその反応が、私を煽るのだと当人は理解をしているのだろうか?

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 愛羽さんの証言によれば、繁みの奥はもう既にぐっしょりと濡れているそうだ。たぶん、私の指など少し力を加えるだけで簡単に飲み込んでしまうだろう。

 本音としては、すぐにでも温かなナカへこの指を突き立て、かきまわしてやりたい。けれど、そんな盛りのついたオス犬のような行為はしない。

 どんなに濡れていたとしても、ものには手順があるのだ。

 ――ゆっくり。じっくり、進めていかなければ。

 愛羽さんの脚を跨いだ私は手のひらで腰の辺りを撫でながら、前屈みになってゆく。着いていた膝を少しずつ後ろへやりながら、片腕だけで体重を支え、愛羽さんのへそのすぐ横辺りに、口付ける。

「ぅ」

 頭上から小さく反応があったし、跨いでいた愛羽さんの膝が一瞬震えた。
 可愛いなぁと目元を緩めたくなる一方で、頼むからどれだけ感じてもその膝を思いっきり曲げてくれるなよとヒヤとしている自身の内心を宥めた。

 私の股間にイチモツは無いが、蹴り上げられて痛くない訳がないから、若干、こわい。

「……」

 ―― 一応……安全保障に。

 お腹へのキスを徐々に足の方向へと移しながら、ずり、ずり、と自身の膝の位置をベッドの端へと退げてゆく。もちろん、移動に気を取られないよう彼女へのキスが主体であるし、移動を覚られないよう肌を撫でることも、忘れない。

 そしてようやくキスが脚の付け根へ到着する頃には、私の手が愛羽さんの膝上へと届いた。
 人の身体は、構造的に膝のお皿を押さえるよりも、膝上を押さえつけた方が身動きを封じられるから撫でるフリをしながら手を置いておく。

 キスをした鼠径部へ、そっと舌を這わせてみれば、案の定、びく、と跳ねようとする脚が安全保障によって押さえつけられた。

 あぶないあぶない。鳩尾にクリーンヒットするところだった。

 安堵しつつも、私は舌の先を力ませながら、鼠径部の窪みをツゥと辿る。

「……ぁっ」

 弱いんだよなぁ、ココ。

 整いかけていた呼吸の脇で、愛羽さんの声が甘くなる。
 舌が肌を這う度に、抑えきれない甘声が彼女の口から溶け出していった。

 しばらくそうして愛羽さんの可愛い反応を楽しんでいたのだが、物足りなくなってしまう。
 いけない癖だなと思うのに、彼女のより多くを求め続けるこの傾向は、今後無くなったりしない予感が強い。

「……はっ……ぅ、ん……」

 舌を尖らせ、脚の付け根の窪み全てへ舌が触れるように。
 それこそ、伸ばした舌をべったりと肌へ這わせれば、「ゃぁぅぅ……」と意味不明な声をあげ、悶えるように愛羽さんの身体が揺れた。

 きっと、イヤイヤをするみたいに首を振っていたんだろう。
 息遣いもだいぶ乱れているようだし、可愛くて仕方ない。

「愛羽さん?」

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「な、に……?」

 こちらの呼びかけに反応する声は妙に途切れながらも、震えていた。
 それだけで私の身体はゾクと反応を示し、次の愛撫にも熱を込めたくなる。

「かわいい」
「……ん、る……さい」

 ぬるりとする鼠径部に指を這わせながら言ってみせると、愛羽さんがいつもの通りに反抗した。
 だけどいつもみたいに勢いはないし、震える息で口答えをする彼女は、にやつきたくなる可愛さだ。

 私は堪らなくなって、両手をベッドに着いた。
 移動にさり気なさを加えることはなく、彼女の身体を踏みつけないようにだけ配慮しながらのそのそ四つん這いで歩き、久しぶりに愛羽さんの顔を真上から見下ろした。

 いつの間に、両手の覆いを外したのだろう。
 上気した頬の可愛いひとが、気恥ずかしそうに見上げてくる。

「好きです」

 ああこんなにも可愛いひとが、自分の恋人でいてくれてるんだ。
 愛羽さんを見下ろして、改めて感謝を抱きながら想いを告げ、私は彼女の頭の傍に肘を着く。

「ん」

 こくんと幼子みたいに頷いてくれた彼女のはにかみ。もうほんとに、可愛いったらない。
 きゅぅんと締め付けられるようなときめきに背中を押されて、私は大好きなひとに口付ける。

 本当はずっとこうしてキスしながら愛撫していたいけれど、体勢的になかなか難しいところがある。
 文字通り身体を重ねるセックスに慣れてきたとは言え、常にキスしながらの行為には無理があるし、実際やったらどこかが攣る。

 そんな馬鹿な想像をしながらの口付けは、いつの間にか、流れるように舌同士が絡んでいた。
 温かくて、柔らかい。互いに相手の舌を撫でては絡むそのキスは、離れる頃には頭がくらりとする。

 熱の吐息を零しながら瞼を開けば、愛羽さんと私はまだ、銀糸で繋がっている。

 ――エロい……。

 潤んで蕩けた瞳も、随分色気が溢れているが、濡れた唇に伝う糸だって相当えっちだ。
 惹かれて再び口付けて、終わるかなこれ、と内心ぼやく。

「ん、……ん」

 小さく漏れる声もまた、可愛いし、芳醇に色気を帯びている。
 それに興奮する自分が確かにいるし、より深く彼女に惚れ込んでいるなと自覚が改まる。

 ――次に……進みたい気持ちはあるけど……。

 疼く指が、ナカに触れたがっている。だけど、キスだってしていたい。

 矛盾の欲望を抱えながら、私はゆっくりと彼女の舌を舐めた。
 ざらつくような表面の触感。だがその奥には弾力があって、堪能するように強く押しつけたり、優しくなぞったりする。

 同時に自分の体を支える片腕とは逆で愛羽さんの髪を撫でてみると、彼女の腕が浮かび、私の首へ巻き付いてきた。

「……は、……雀ちゃん、好き……」

 キスの合間の熱い呼気と同時に囁かれた甘い言葉。
 眩暈がするほど、きゅんとした。

 ただ名前を呼ばれて、好きと言われただけなのに。

 心臓のもう少し奥をぎゅっと掴まれたみたいに苦しいような切ないような感覚。
 一歩間違えば、泣いてしまいそうな感覚。

 胸に湧き上がったその感覚を、押し出すように答えを返す。

「私も好きです」

 掠れる音で返して、再び口付ける。
 まだ心臓の奥が苦しくて、切なくて、それをぶつけるようなキスだった。

 首に掴まる腕に力が込められて、愛羽さんから漏れ出る声もまた、増した。

 何か、手の先まで痺れるような甘い切なさが湧き上がり、耐えるように、共有するように、私たちは相手を求めて口付けを繰り返した。 

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