隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ 13話


※ 隣恋Ⅲ~待ち合わせは企みの香り~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 そんな瞳で。

 そんな声で。

 私を誘ったのは貴女の過ちだ。

 もう止まれない。

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~ 待ち合わせは企みの香り 13 ~

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 ……しかし……どうも。

『早い』

 それが一番の印象だった。

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 べつにまだ、イかせるつもりはなかったのに……。
 指を締め付けられながら、私は考えた。

 きゅ、……きゅう、と断続的に痙攣するよう締め付けてくる彼女の温もりに充足感を感じながら、唇に付着したものをぺろりと舐める。
 それが、彼女の愛液なのか自分の唾液なのか判別はもうつけられないけれど、しょっぱい。ということは、私の唾液だけではないのは、確かである。

 ――彼女の味。

 そう考えただけで、ゾクンと腰の奥が痺れるような疼きを感じた。

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 一方愛羽さんはようやく身体を弛緩させ始めた。
 絶頂を迎えた際の強張りが、解けてきたのだ。

 私の髪を掴む手も、シーツを掴む指も、頭部を挟む脚も、ゆるみはじめた。
 疲れたように身体を弛緩させながらも、未だに荒い呼吸を繰り返している愛羽さんがイッてから、3分も経っていない。
 さすがに、すぐに再開するのは酷だろうと思う。
 ………………思うのだが……。

 ――……もっと欲しい。

 すぐにでも再開させたいのが、こちら側の気持ちだ。

 される側からすれば、結構迷惑な話だろうけれども、欲しいものは欲しいし、この気持ちを抑えるのは随分難しいと理解してもらいたい。

 呼吸を整えている愛羽さんに注目すれば、先程よりはすこし、落ち着きを取り戻していた。
 まだ、身体を余韻が支配しているのだろうか。

「は……は……、……ん……」

 若干甘声の混じる呼吸に、色気を感じてしまった。

 い、いやでも、でもな。
 一応声を掛けないと。「大丈夫ですか? 愛羽さん」って様子を尋ねないと。
 イカせた後放置ってのはよくないぞと自身に言い聞かせて私は息を吸った、が、その唇から言葉を紡ぐより先に寄越された呼びかけ。

「す……ずめちゃ……ん」

 呼吸優先の、途切れがちな声。蕩けた声音が、私をざわつかせる。

 思わぬ胸中のざわめきに返事が出来ないでいると、不意に、彼女の手が、私へ触れた。
 熱い、指先。

 まるで、私の指が侵入しているナカみたいに、熱い。

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 コクリ、と私は喉を鳴らし、彼女を見つめ返した。
 耳元で打つ心臓の音が、いやに、大きく感じる。

「……すずめ……?」

 蕩けた声で、名を、呼ばれた。
 気怠く、熱と艶の籠った、甘い声。

 クラリ、と。
 視界が歪んだようにも感じるほどの、妖艶さ。

 その鋭くも甘い鉤爪で、私の心臓は、きつく囚われた。

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 ドクドクドクドク。
 まるで全力疾走後のように心臓が速い。
 当然の常識で、心臓は胸にあるはずなのに、耳元でその音を聞く私の視線は愛羽さんから外せない。

 
 水の膜を張ったような、潤んだ瞳。
 見つめるこちらがチリリと焦がされてしまいそうな熱い炎を宿し、なおかつ、妖艶を欠かないその瞳。

 私の背中は悪寒にも似たものがゾクゾクゾクと走り、頭蓋骨の内部にはそれに相反するような熱い何かが籠った。

 ――ヤバ、い……。

 無意識にあがって、乱れる私の呼吸。
 なんで、見てるだけで。と疑問らしきものが浮かぶけれど、理由なんて知らない。

 見つめ合ってどのくらい経ったか、分からない。
 静かな空間に、ゴクリ。と自分の喉が、先程よりも大きな音を鳴らした。

 直後。

「……もっと」

 ぽつと渡された、愛羽さんの言葉。
 その先を、渇望するように、自身の耳が研ぎ澄まされていく。

 そんな私に彼女は告げた。

「貴女が欲しいの」

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 あまりの言葉の色香に私の頭が熱暴走を起こしそうになる。
 けれど愛羽さんはそんなものお構いなしで、私に、手を伸ばした。

 入れたままだった私の指を、さらに、押し込むように彼女の手があてがわれた。

「……」

 そこまで。

 そこまで色香で誘われて、もう、加減なんて、出来ない。

 めちゃくちゃにしたくて。
 ぐちゃぐちゃにしたくて。

 そうされた時、彼女がどんな顔をするのか見たくて。

 絶頂を迎えた時に、どんな声を聞かせてくれるのか知りたくて。

 私は添えられた愛羽さんの手へ口付けた後、囁いた。

「増やしたい」

 主語がない拙さを、私の恋人は補足力を以てして正しく理解してくれたようだ。
 添えられていた手がそっと浮く。

 許された自由の元、私はゆっくりとナカから指を引き抜いた。
 辛うじて声を零さなかった愛羽さんの息遣いは、震えながら酸素を肺へ引き込んだ。

 私は愛羽さんの指へ再度口付けながら、一度抜いた二本指に一本追加した三本の指を、彼女のナカへそっと戻したのだった。

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