※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 107 ~
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小指の爪を濡らした水に目を見張り、それはどこから来たのかと探った。
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辿り着いた先は、雀ちゃんの前髪。
彼女は慌ただしくパジャマを着て、髪も拭かずにわたしの介抱をしてくれていたようで、肩にかけたタオルはしっとりと水分を多く含んでいて、前髪からは滴を垂らしていた。
それに比べてわたしはというと、のぼせたからだけど……自分の事しか目が行ってなかった。
水まで飲ませてもらったというのに。
これではどっちが年上か分からない。
年上としての役割を全うしたいとか思っておきながら、恥ずかしい姿を晒し続けている訳にはいかない。
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まだバツが悪そうに視線を逸らしている彼女の前から、手を退けて、「よいしょ」と体を起こす。
よく冷えたお水を飲ませてもらったおかげか、随分とフラつきは治まっている。
雀ちゃんが片膝をついている前に座って、彼女を挟むように脚を開く。
「嫌いになる気なんてさらさらないんだけど、嫌いになんてならないよ、って宣言したら、さっき言ったことと、支離滅裂になっちゃうもんねぇ」
お風呂場で、確約されていない未来を約束できないと言ったアレだ。
わたしは彼女の肩にかかっていたタオルを手にとり、水の滴る髪に被せた。そのまま、水分をタオルに移し取りながら、タオルで表情の隠れた彼女を見下ろした。
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彼女の髪の水分を優しく拭いながら、思う。
自分はどうしてこうも、頭の固い人間なのかと。優しくない人間なのかと。
「なんて言ったらいいのかな……。雀ちゃんの事は大好き。多分、何されても好き。泣かされても、喧嘩しても。あ、でも、浮気は無しね。それされたらわたし再起不能になるから」
「そんな事しませんっ!」
間髪入れず言ってくれる事に目を細め、喜ぶ。
まぁ、嫌われたくないと色んな事を我慢するくらいには、雀ちゃんに好かれているくらいだから、そのあたりは大丈夫だと思うけど。
「よね? 元カレとのこと、知ってる貴女だからそこは信用するし、二股とか出来る器用な性格じゃないと分析してるから。だからそれ以外……カップルで言う一般的な事の範疇だったら、雀ちゃんに何されても嫌わない気がするのよねぇ……わたし」
自分の気持ちを確かめるように、若干独り言に近くなりながらぽつぽつと話す。
手元では随分と、雀ちゃんの髪の毛は乾いてきた。
だけど、ドライヤーをとってこないと、完全には乾かせない。
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「嫌われるかもって怖くて、隠して、我慢して、ってところだと思うけど、そうやって本心を隠されちゃうほうが、不安かなぁ……」
「えっ」
わたしの言葉に、弾かれたように顔をあげた雀ちゃん。頭からぱさりと肩に落ちたタオルは、具合よく、元々かけられた位置に戻った。
「まっすぐな性格の雀ちゃんだからこそ、ポジティブもネガティブも振り幅が大きいと思うのね? だからそれを我慢するとなると、人一倍の苦労というか労力というかエネルギーを使うと思うの」
半乾きでしっとりした髪を撫でながら、彼女を見下ろす。
その手に握られていたストローを挿したペットボトル。
そういえば、わたしと同じようにお風呂に入っていたのだから、彼女も水分補給をしなければ。
「その大きいエネルギーを持続して生み出すのって、大変だと思う。それこそ、学校の勉強だってあるし、バイトだってある。貴女の世界は、わたし中心で廻していいものじゃないもの。あくまで、貴女の世界は貴女中心なの」
随分と哲学的な物言いだと内心苦笑しながら、彼女の持つペットボトルに手を伸ばす。
受け取ったそれのストローをくるりと雀ちゃんに向けて、口元によせてあげると、ぱくりと咥える彼女が可愛い。
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「だからもっと、嫌な事は嫌。悪い事は悪い。できない事はできない。そう言って、我慢を減らして、のびのびして欲しいなぁって思うの」
多分最初のうちは、正直になる方がエネルギー使うと思うけど、のちのち、溜め込まない方がいいと思うから。
喉が渇いていたんだろう。随分と吸い上げたミネラルウォーターを飲む彼女に、微笑んで、彼女の頭を撫でた。
「わたしの隣に居ることが、我慢を生み出すのはよくないと思うの。どっちかと言うと、わたしは思ったことを言っちゃう質だから」
彼女が口を離したストローをくるりと自分の方に向けながら、「ね?」と、わたしは小首を傾げてみせた。
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