※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 106 ~
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ぐったりとリビングのソファに横たわる。
もちろん、ここまで自力歩行できる訳もなく、雀ちゃんの手を借りた。
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「……あ゛っづ……」
暑い……。体が芯から燃えているみたいに、暑い。
ソファを濡らす訳にもいかなくて、ざっと体の水滴を拭いて着たパジャマも本当言えば、脱ぎたい。
暑い。
「愛羽さん、お水飲めます?」
濡れた髪にタオルを巻いてまとめ上げているけれど、仰向けに寝転がればタオルから浸透してソファが濡れる。
それを避けるためにうつ伏せになって顔を横に向けているわたしの目の前に、ペットボトルが差し出された。
当然のように、蓋が開いていて、90度曲がるストローが挿してあって、飲み口がわたしに向けられている。
この天使みたいに優しくて、漫画に出てくるメイドさんのように気が利く雀ちゃんが、数分前に嫉妬心丸出しでわたしに情熱的で支配的なキスをしてくれていたのが、懐かしい。
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「ありがと……」
元気の欠片もないような声で言って、口の前まで寄せられたストローを咥える。無精過ぎるとは思うけれど、手を動かさなくても飲めるようにしてくれた雀ちゃんの好意に甘えた。
口の中を冷やし、食道を通って、胃に流れてゆく冷水が気持ちいい。
マグマのような体を瞬間的に、内から冷やしてくれるミネラルウォーターに感謝すると同時に、これを用意してくれた彼女に大感謝をした。
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「いきかえる……」
「大袈裟な」
ストローを離したわたしが言うと、雀ちゃんは苦笑を零した。
それから、表情を苦笑から申し訳なさそうなものに変えて、こちらを見下ろしてくる。
「すみません。私があそこでがっついたから……」
がっつく。
確かにその表現がしっくりくるくらいには、攻撃的なキスだった。
でも、それでいい。
というか。
「むしろ、嬉しかったよ?」
微笑むわたしの目に映ったのは、雀ちゃんの驚く顔。
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水を飲むときには動かさなかった手をゆっくりと持ち上げた。
目を丸くしたまま頬を撫でられる雀ちゃんは、わたしの言葉を待っている。
「さっきも言ったけど、我慢しすぎ」
ぴく、と撫でている頬がひきつる。
「元々、優しい性格だっていうのはあると思うんだけど、貴女は我慢するクセがついているもの」
「……」
自分自身でも、何か思い当たる節があるのだろう。
まん丸くしていた目をバツが悪そうに細めて、彼女はわたしから視線を逸らした。
先程お風呂場で、嫉妬を我慢していたのがバレていた、という真実を知った彼女の心中は、穏やかではないのだろう。
キョロ、と泳ぐ瞳の動きを追いかけながら、ひきつった頬を指の背でもう一度撫でた。
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「今夜からいきなり、もう我慢しないで、なんて言わないけど、明日からは今までの半分はわたしに素直に言うこと。努力できる?」
彼女の頬を撫でていた手の小指だけを持ち上げて、顔の前に差し出す。
明日から今までの半分、我慢を止める努力を約束できるなら、この小指に、小指を絡めてくれるだろう。
「……半分も正直になったら、多分、愛羽さん嫌がります」
「どうして?」
何故そんなにも、我慢したがるのかという疑問は前々からあったが、その端を今、見た気がした。
「もしかして、嫌われると思うから、我慢してるの?」
やっぱり、バツが悪そうに、頷く。
すぐに約束の小指が絡められなかった虚しさを誤魔化すように、わたしはぴょこぴょこと小指だけを軽く曲げたり伸ばしたり、振ってみたり。
そこに、ポタリと、水滴が落ちてきた。
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