※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 104 ~
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唇を離すのが、怖かった。
目を開けて、彼女の表情を確認するのが、怖かった。
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わたしが考える最高のプレゼントを、雀ちゃんに説明した事はない。そんなことをすれば、彼女の性格上、嫌がるというか遠慮するというか……表現は悪いが、頑固になると思う。
だから、何も言わずにこのスタンスを貫こうと思っているものの……。
まるでプロポーズのような情熱的な言葉をくれた雀ちゃんを突っ撥ねた事実はある。
そんな屁理屈をこねて、未来を約束してくれない人なんていらない。
そう言われたらどうしよう。嫌われたら、どうしよう。
恐怖が無い訳がない。
だって、雀ちゃんが好きだもの。
過去現在未来全部欲しいと言われて、嬉しさに心が震えた程、好きだもの。
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頭の隅で、「だからそんな固い頭もたずにサクッと約束しちゃえば丸く収まったのに」ともう一人のわたしが囁く。
ニタニタと意地の悪い顔付きで「これで嫌われたら元も子もないのに」と、嗤う。
「わかりました。でも、今は、くれるんですよね?」
その言葉に、ハッとする。
悪魔の囁きから、わたしの意識を引き剥がしてくれたのは、他でもない、雀ちゃんだった。
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「それは、もちろん。だって、わたしも雀ちゃんのこと、大好きだもの」
頷き、そう告げる。
「じゃあ、いいです。今はそれだけで我慢します」
「え」
どこかサッパリした雰囲気を漂わせ始めた雀ちゃんに、目を丸くする。
「だって、未来は現在のすぐ後でしょう? だったら、今を貰ったら、未来を貰ったも同然です。そう考えていないとやってられません」
どこか自棄っぱちな言い方だけど、これが、今彼女が出来る最大限の譲歩なのだろうことは、察する。
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過去を変えられないのは、本人も分かっている。
現在は貰った。
未来は、ほとんど貰った。
そんな認識にこじつける所はなんだか子供っぽいけれど、それでいい。
わたしとしても、それが一番助かる。
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「ねぇ、雀ちゃん」
「はい」
釈然としないのだろうか。
ちょっとだけ唇をとがらせた彼女に、申し訳ない気持ちが滲んで眉尻を下げた。
「わたしの現在は、貴女にあげたんだから。もう、ヘンに我慢しないで嫉妬したなら、嫉妬したって言っていいからね?」
普段、何かの話の折に触れて、むっとしているけれどすぐにそれを隠す彼女のフラストレーションが溜まりに溜まって、爆発しないかと心配だった。
「わたしは、貴女のものなんだから。怒っても、妬いても、いいのよ?」
隠さなくていいから。
我慢しなくていいから。
貴女の気持ちを、今みたいに、真っ直ぐぶつけて?
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「……もしかして、私が妬いてたら今まで、気付いてました……?」
ウン、と頷く。
「……全部?」
「んー、たぶん、ほぼ全部」
顔に、態度に、出易いことを自覚していなかったのだろうか。
雀ちゃんは驚愕の色を瞳に浮かべたあと、がっくりとうなだれた。
「滅茶苦茶かっこわるいじゃないですか……」
「妬くのは恰好悪くないと思うけど? わたしはむしろ素直に、妬いたって言ってくれるほうがいいな」
我慢されるよりもずっと。
隠されると、そこを突いていいものかどうかも、判断に困る。
つついて、地雷を爆発させたら、余計こじれるし。
「……本当に?」
「うん。だって、わたしは雀ちゃんのものなんだから、妬いて当たり前でしょう? それを隠して恰好悪いとか、思わないよ?」
ちら、と上目遣いにわたしの表情を確認する雀ちゃん。
別に嘘を言ってる訳じゃないから、穴が開くまで見て、確認してもらって構わない。
「じゃあ……正直に言いますけど……」
意を決したように、雀ちゃんは、口を開いた。
「蓉子さんには本当に嫉妬しました」
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