※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 102 ~
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熱気の篭る浴室で、水音がたった。
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突然奪われた唇が解放されたのは、キスが始まってから、意外にも早かった。
”意外”だとか”早い”だとか、そんな考えが浮かんでしまうのは、わたしが無意識のうちに期待をしていたからなのかもしれない。
自分の潜在的な欲求が思考に影響していたことに羞恥心が湧くけれど、キスを解いてから、冷静さの中に熱を宿した瞳でわたしを見つめてくる彼女に気付いて、その胸の内になにを思っているのか、その事の方が気になった。
「愛羽さんの愛情全部が、欲しいです」
浴室独特のエコーがかかる環境で、その台詞は、卑怯だ。
「今日ので、足りないとか不満とか、そんなんじゃないんですけど、愛羽さんの全部が欲しい」
真っ直ぐに見つめて、わたしを射貫く視線に、鼓動があっという間にトップスピードまで押し上げられる。
「無理だって分かってます。駄目だって理解してます。こんな事言っちゃ困らせるだけだって」
でも、と雀ちゃんはより力を強めた瞳でわたしを痺れさせる。
「過去も現在も未来も、愛羽さんの全部を私だけのものにしたい」
強い光を宿した瞳が、情熱的な言葉と共に、わたしに浴びせかけられた。
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つい先程まで、わたしに喘がされて、揶揄われていた筈の雀ちゃんはいったい、どこに行ってしまったのだろう。
目の前に居て、わたしの心拍を異常なまでの数値に押し上げている人物は、本当にさっきの雀ちゃんと同一人物か。
「……ぁ……」
何か、言わなきゃ……。
そんな思いに突き動かされて、開いた口からは掠れた声しか出ない。
わたしは貴女のものだって、言いたいのに、その熱を帯びた真っ直ぐな瞳に気圧されて、言葉が出てこなかった。
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「なんて、ちょっと図々しいですよね」
ふわりと目力を緩めて、彼女が笑う。
「ひとの全部を、自分のものにしようだなんて」
フイと逸らされた視線に、影が差した。
彼女の言う、ひとの全部、の”ひと”は、他人という字があてがわれてもおかしくない寂しい響きをしていて、わたしは思わず、唾を飲み込んだ。
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飲み込んだ唾に切なさの成分でも混ざっていたかのように、わたしの胸はキュウキュウと締め付けられた。
喉の奥、心臓の少し上あたりが苦しくなって、いたい。
でも、たぶん。
これ以上の痛みを、彼女は今感じているんだろう。
わたしが即答で、「もちろんわたしは雀ちゃんのものよ」と言えば、その苦しみを与えなくて済んだのかもしれない。
でも、それは……違うと思うから。
あんなふうに真っ直ぐ想いをぶつけてくれた雀ちゃんだからこそ、きちんと、わたしの想いも、真っ直ぐ伝えたい。
上辺だけの、綺麗な言葉や想いだけじゃなくて、本当の気持ちをぶつけて、ぶつけられて、互いを理解していきたいと思うから。
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「雀ちゃん」
狭い浴槽の中で、居住まいを正そうと身動ぎすると、ギュギュッと擦れる音がたち、水面も揺れた。
「はい」
返事こそしてくれるものの、彼女の瞳は、わたしに向けられない。
「こっち見て」
拗ねている訳ではなくて、どちらかと言えば、ショックを受けている感じに近い印象をうけるその態度。
内心不謹慎だけど、わたしから予想していた返事をもらえなくてショックを受けている可愛い子、と微笑むけれど、面にはそれを絶対ださない。
こんな場面で笑顔を作りでもしたら、あらぬ誤解を受けてしまいそうだから。
まだ、わたしを見てくれそうにない雀ちゃんに、わたしは奥の手を使うことにした。
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