※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 82 ~
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心臓に、矢が刺さった。
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「~~~~~……っ」
たぶん、雀ちゃんは駆け引きとか色仕掛けとか、そういう小細工を考える子じゃない。
それが分かっているから余計、彼女の言葉は威力がある。
真摯に見つめてくる潤みきった瞳に、わたしは視線を返しきれなくなる。
心の底から好きだと言われた事は嬉しい。けど、彼女がその前にされていたのは愛撫。つまり性的行為だ。
そのあとに、ああして告白をされると、全身全霊で好かれているのがひしひしと伝わってくる。
よく、少女漫画とかであるシーンだけど、ときめいて矢が心臓に刺さるコマ。
まさにあれだった。
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彼女の視線から逃げるように枕に額を押し付けた体勢で、ドッドッドッドッと全速力で脈を打つ心臓を片手で押さえる。
「どうしよう雀ちゃんが好きだし可愛い過ぎて心臓がいたい」
「え、……ええっ!?」
驚いたせいか、彼女の手の力が緩んで、絡めて握っていた手が解けた。
――これなら……。
未だドクドクと耳の傍に心臓があるような鼓動を聞きながら、わたしは思い切って身体を起こした。
わたしが見下ろす彼女からは見上げられ、その視線は驚きに満ちている。
「わっ」
自由になった右手で、わたしの真っ赤に染まった顔を観察する両目を覆って隠す。
抱かれている人よりも、真っ赤な顔をしたわたしを物珍しそうに、意外そうに見てくる目は、こうするしかなかった。
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「ちょ……愛羽さん……」
「だって恥ずかしいんだもん……」
もうちょっとそのままで居て……。と付け加え、わたしはジンジンと熱を帯びた心臓に恨み言を漏らす。
たった一言でここまで上下関係をひっくり返されるだなんて……情けない。
もう少し落ち着きなさいよね、と心臓に文句を言ったところで、どうにもならないし、その心臓はわたしの一部だし。
つまりは雀ちゃんにときめくのはもう仕方のない事と、諦めるしかないのだ。
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「好き過ぎて……困るわ……」
彼女の両瞼に手のひらをあて視界を遮ったまま、呟く。
見下ろす彼女は、視覚を失って動きようがないのか、口を引き結んでじっとしている。
わたしがじっとしていて、とお願いしたのだけど、素直にいう事を聞いてくれるあたり、優しいひとだと思う。
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「私だって、愛羽さんが好き過ぎて、たくさん嫉妬しちゃうから困りますよ」
引き結ばれていた唇が解けて、苦笑交じりに、彼女が言う。
確かに……蓉子さんにもしていたみたいだし、今の言い方からすると、嫉妬する張本人も、それなりに苦労があるのだろう。
そう思うと、好きな人と一緒にいる苦労というものは、種類は違えどそれぞれに降り掛かっていて、わたしも雀ちゃんもお互いに問題に向き合って、解決していかなければならないようだ。
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彼女の瞼に手を置いたまま、上半身を前へ倒す。彼女の心臓のあたりに唇を寄せてから、ゆっくり手を退けた。
視覚を取り戻した雀ちゃんだけど、この位置に顔を寄せれば、彼女の視界にわたしの赤い顔は入らないだろう。
――まだもうちょっと……恥ずかしいから……ごめんね?
心の中で謝って、わたしは雀ちゃんの胸にキスを落とした。
「ん」
短く上がる声には、まだすこし余裕がある。
わたしが恥ずかしがったせいで、彼女に生まれた余裕を今から少しずつ崩していかなければいけないのだ。
「わたしたちって、さ」
ちゅ、ちゅ、といくつもキスを落としながら、その合間に囁く。
「相手のこと、すごく好きなのね」
「ん、……そう、ですね」
啄んだ肌に、汗の塩気を感じるが、それすらも愛おしく思うくらい、わたしは雀ちゃんが好き。
彼女も同じように、あるいは、わたしよりも好きの気持ちが大きければいい。
そんなことを願いながら、雀ちゃんの胸の頂きを口に含んだ。
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