隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 79話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 79 ~

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 息がくすぐったいのと。
 気持ちいいのと。
 はずかしいのと。

 彼女が可愛くて仕方ないことが、よぅく分かった。

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「正直によく言えました」

 よしよし。と彼女の頭を撫でて、微笑んでみせると、雀ちゃんは口をへの字にした。
 眉がきゅっと寄せられているけれど、その顔の色が赤いから、可愛さが倍増している。
 本人は多分気付いていないんだろうけど、色んな感情を頑張って処理しつつ、わたしからの愛撫を受け入れている姿は、どうしようもなくそそられる。

 さっきから、胸がきゅんきゅんしてしょうがない。

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 撫でていた手を離し、先程咥えていた耳をちょんと触ってみせる。

「ここはもうしないでおこっか?」
「え、う…」

 可愛い過ぎる反応。
 まるで、「もっとココ舐めてもいい?」と言われる。そう信じて疑っていなかった雀ちゃんは、予想と真逆の提案に目を泳がせていた。

「……」

 左へ右へと泳ぐ視線を少しの間、眺める。
 たぶん、彼女の口からすぐに返答は出てこないだろうから、その返事を待ちながら、可愛い姿を拝ませてもらおう。

 そう、思っていたのだが。

「……もうちょっと、してほしい、です」

 わたしはどうも、高を括り過ぎていたみたいだった。

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 出来る事なら、聞き返して、もう一度、その口から言わせたかった。
 さらにどこをどうして欲しいのかも、言わせたかった。

「ん。いーよ」

 わるい悪戯心を自制心が組み敷いて、わたしは口元に優しい笑みを浮かべることに、成功する。
 彼女は自分の発言に照れまくっていて、わたしの笑みに一瞬目を留めたあとは、顔を隠すように背けてしまった。

 だけど、それをしても許されるほど、彼女は今頑張ってくれたから、良しとしよう。

「じゃあ、もうちょっとだけ、……ね…?」

 囁きながら彼女の耳朶へ近付く。
 心の中で、ちょっとだけに出来るよう努力はするからね、と謝りながら。

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 大好きな子に誘われると、煽られると、どうにも自分のコントロールがうまく出来ない。

 自画自賛するようだが、わたし自身年齢の割に仕事が出来る人間で、その仕事で培った自制心や冷静さというものがある。
 常人よりもそれは高い数値を誇っていると、そう思っていたのだが……その考えは間違っていた。

 どう間違っているかというと、仕事で培った自制心や冷静さは、仕事でしか使えないのだ。だって、仕事場に好きな子がいて煽ってくる訳ではないから。

 逆にもし、わたしがモテモテで好きな子から迫られまくった経験が豊富なら、どれだけ雀ちゃんに煽られても冷静でいられるけど、仕事では慌てまくってテンパって、ミスを出す人間になるだろう。

 だから、何事も、経験なのだ。
 恋愛は恋愛の経験しか積めないし、仕事は仕事の経験しか積めない。

 だからこんなにも、雀ちゃんに翻弄されてしまうのだ。

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 閃いたように、自分の中でその考えが展開されて、真理をみた気がした。
 ゆっくりと彼女の耳朶へ唇を近付けていたわたしは、寸前で動きを止め、息がくすぐったいと言われたのも忘れて、囁いた。

「うまくできなかったら、ごめんね?」

 と。

 それは耳を愛撫することを含めて、行為全てを指していたのだが、雀ちゃんはそうとは捉えられなかったようで、赤い耳をさらに赤くして、小さく告げた。

「愛羽さんは…その、上手ですよ……?」
「……」

 女の子と付き合うのも身体を重ねるのも、雀ちゃんが初めてなので、自分に技術があるとは思っていなかった。だから、その言葉に衝撃を受けたし、更に続いた彼女の言葉にもっと、衝撃を受けた。

「だから……私がこんなふうになっちゃうんです……」

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 ――こんなふう?

 雀ちゃんの言葉の意味を一瞬、理解しかねた。
 けれど、顔、耳、首までを真っ赤に染め上げて、さらにわたしが攻め立てている時はシーツに縋って嬌声をあげる彼女を思い出し、得心がいった。

 同時に、身体の底がカッと熱くなっていく。
 なにせ雀ちゃんの「こんなふうになっちゃうんです」は、「気持ちいいんです」とイコールであり、わたしへの賛辞でもあるのだ。 

 一瞬にして熱くなった身体を鎮めるために、深く息を吐く。

「んっ」

 だが、耳の傍でそんな事をすれば当然彼女の耳や首、肩に吐息がかかり、身体を跳ねさせた彼女は、声も漏らして、上気した顔をこちらに向けて、キッとわたしを睨んだ。
 泣きそうな顔で睨まれてもまったく怖くないけれど。

「く、くすぐったいって言ったのにっ」

 私は褒めたのになんて仕打ちだとでも言いたげな表情に微笑みを返して、謝る。
 赤い頬にキスを贈り、彼女の顎に指をかけた。

「お詫びに、ご奉仕するから」

 顎にかけた指でクイと向こうを向かせて、わたしは獲物である耳を見つめ、目を細めた。

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