隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 74話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 74 ~

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 ゆらゆらと、舌の下側を彷徨っている熱いそれ。

 ――はやく、はやく。こっちに来て。

 そう言われているみたいに、熱く熱く、誘われた。

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 雀ちゃんの上唇を舐めるわたしの舌の、下側に何かが触れた。
 その正体を舌だと覚ると同時に感じたのは熱。

 雀ちゃんの興奮が熱を生み出しているのか、それとも元々にこんなにも高温だったのかは分からない。前者であれば、わたしとしてはなんとも胸をくすぐられる想いだが、その答えは、彼女にしか分からないだろう。

 わたしは前者が答えだと信じて、わたしの舌をくすぐる熱に、シフトチェンジする。
 軽く首を傾けて、雀ちゃんの舌の表面、他の言い方をすれば上側とでも言おうか。そこをねっとりと舐め上げた。

「ぁっ、は…っ」

 ――自分から誘ったくせに、その反応はズルイわ。可愛い過ぎるじゃない。

 短くあげた声は、口を開いているせいで、堪えがあまり効いていない。
 雀ちゃんは自分でもそのことに気が付いているのだろうか。狼狽えたように舌を引っ込めて、口を閉じた。

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 一方的に終わってしまったキス。取り残されたのはいやらしく舌を伸ばしたままのわたし。
 どこか冷静なままのわたしが頭の隅に居て、不格好な自分を嗤うけれど、聞こえない見えない気付かないフリをした。

「キス、もうやだ……?」
「ぁ、いや、えっと……」

 とりあえず舌を仕舞って、雀ちゃんの頬を撫でる。傾けていた首を反対へ傾け、尋ねた。
 たぶん、嫌という返答はないだろうけれど、優しくしたいから、ちゃんと聞いてから、次の行動を決めたい。

 もう、独りよがりは、したくない。

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 狼狽えた雀ちゃんは視線をきょろ、と泳がせたけれど、最終的にこちらへ瞳を戻してくれた。

「いやじゃ、ないです……その、はずかしくて……」
「声?」

 撫でていた頬が、引きつる。
 やっぱり彼女は、自分の喘ぐ声に、抵抗があるみたいだった。

「雀ちゃんの声、好きなんだけどなぁ」
「ゃ、そんな訳」
「あるの」

 ほとんど被せるように否定しようとした雀ちゃんの言葉を奪って、雀ちゃんの考えを否定した。

「雀ちゃんの可愛い声、大好きよ? 気を遣ってるとかそんなんじゃなくてね?」

 諭すよう、ゆっくり紡いだわたしの言葉に、彼女はなんとも言えない表情で目を見張っていた。
 その表情は、そんな訳ない。自分の声なんて。恥ずかしい。不安なのに。そんな様々な感情が混ざって、わたしに動揺を伝えてくる。

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「例えば、ね?」

 言葉を区切って、わたしは雀ちゃんの肩に顎を乗せるように、彼女の視界から逃げて、耳へ顔を寄せた。

 さすがに、顔を見せながらコレをするのは、恥ずかしい。
 だけど、コレをしたら、雀ちゃんも理解してくれるんじゃないかと思うから。

 静かに鼻から息を吸って、湧きあがりそうな羞恥心を沈めた。
 唇を薄く開いて、喉をきゅっと締める。高い声をあげるには、意図的にこうしなければならないから。

「……ぁ、ん……す、ずめちゃん……あん……っン、はぁん……」

 いつも、雀ちゃんに抱かれている時のぞくぞくする感覚を思い出して。
 吐息も詰めて、声を切羽詰まらせて。
 絞り出すようにあげた、嬌声。

 思った以上に、恥ずかしかった。
 自分で、意図的に喘ぐ行為。

 コキュルッ、とちょっと変わった音をたてて、雀ちゃんが生唾を飲み込んでいるのを確認してから、彼女の頬へとキスを贈る。このキスは完全に、わたしの照れ隠し。

「ね……今の、ちょっと興奮した……?」
「ち、ちょっと、どころじゃなく……」

 面食らったのか、いつも以上に素直に認めてくれた彼女に安心して、わたしは彼女の視界の内へと戻る。
 まだちょっと恥ずかしさは収まりきっていないから顔は熱いけれど。 

「雀ちゃんがそうやって興奮してくれるみたいに、わたしも、雀ちゃんの声聞くと、興奮するから……。だから、声、我慢してほしくないなぁ」

 恥ずかしいのは、分かるけれど。と付け加えれば、一拍おいて、何か気付いたように雀ちゃんが目元を緩めて笑った。

「恥ずかしいけど、やってくれたんですか? 私の為に」

 認めたくないけど、認めなきゃ話が進まない。
 揶揄うような台詞に、軽く口を尖らせ、半眼でにらむ。

「そーですー。誰でも恥ずかしいものなんですー」

 拗ねた口振りで言い返せば、なぜか、頭を撫でられた。
 おかしいな。なんか、いつの間にか彼女が優位になっている気がする。

 策に溺れるとはこのことかしら、と首を捻りたくなるけれど、それよりも一呼吸早く、雀ちゃんの手が、わたしの後頭部を引き寄せたおかげで、二人の唇が重なった。

 触れるだけのキスはすぐに解けたけれど、唇が離れた距離は、数センチ。
 至近距離で見つめた彼女の瞳は、心を決めた色が見え隠れしていた。

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