隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 72話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 72 ~

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 雀ちゃんが行為をされることに、慣れていないのはもう分かりきっている。
 大切な恋人だからこそ、優しくしてあげたい。
 彼女のペースで、ゆっくりと愛してあげたい。

 だけど……。

 そんな可愛いカオを見せられてしまうと、自制心が砂浜に建てた砂の城のように、脆く崩れ去ってしまいそうだった。

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「へ、変になりそうで……っ」

 感じている自分に戸惑っているのか、わたしから隠れるように、押さえつける手を躱して、雀ちゃんは身体ごと横を向いてしまった。

 彼女の身体を跨いで膝をついていたわたしは、コロリと向きを変えた彼女に軽く目を見張った。

 行為の際、快感を与えられすぎておかしくなりそうで……という感覚はよく解る。だけど、今の彼女のように完全に逃げてしまう事はない。

 ――……あー……でも。…………若い頃はあったかも。

 記憶の引き出しを探ってみれば、奥の隅の方にあるむかしむかしの記憶。
 年上の彼氏に性急に求められて、快感の処理スピードは追いつかないし、そもそもの快感のキャパシティが大きくないから、自分ではどうにもならなくなって泣いてしまった記憶があった。

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 横向きになった彼女は息を整えているようで、身体がふくふくと動いている。

 彼女を抱く行為自体が初めてではないけれど……なんだろう。気持ち的に昂り過ぎて、経験を上手く活用できていないのかもしれない。

 だったら今夜の雀ちゃんはまったくの処女と考えて接した方がいいのかもしれない。
 そういえば、恋人の過去の恋愛遍歴に嫉妬するとか、ちょっと処女っぽい。

「変になりそうで、こわかった?」

 雀ちゃん。

 と、自分の中で出来る限り優しくて柔らかい声で、名前を呼ぶ。
 左腕を下にして横向きになっている彼女の右耳にその声は届いたみたいで、ぴくんと身体が揺れた。

 心細そうなその身体にゆっくりと自らの身体を寄せて、上から抱き締める。

「こわかった?」

 重ねて尋ねてみれば、彼女は、小さく小さく、コクと頷いた。

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「そっかぁ……。……ごめんね? こわかったんだね」

 まるで小さい子供をなだめるみたいに彼女の気持ちを口に出してあげる。そうしながら頭を撫でてあげれば、少し落ち着いた様子の雀ちゃんが恥ずかしそうに、首を巡らせてこちらを向いた。

「愛羽さんはいつも……こわくないんですか……?」
「こわくないよ」

 その質問には即答できる自信がある。
 だって、雀ちゃんにイロイロされて頭おかしくなりそうになっても、気持ち良くしてくれてるのは、他でもない大好きな雀ちゃんだもん。
 わたしは、雀ちゃんには全部、預けられるから大丈夫。

「……」

 雀ちゃんの頭を撫でながら、そう説明して口元に笑みを浮かべる。
 そんなわたしに対して、呆気にとられたような表情を見せた彼女は、目を瞬かせていた。

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「でも……雀ちゃんにでも、急に色々されたら、わたしもびっくりして、こわくなっちゃうかもしれない。だから、ごめんね?」

 本音言うとね? と声を潜めて、内緒話をするみたいに、彼女の右耳に顔を寄せる。

「雀ちゃんが可愛くて、ちょっと我を忘れてた」
「えっ……愛羽さんが……?」
「だからちょっと自分勝手なえっちだったかもしれない。ごめん」

 彼女から見て、金本愛羽という人物は冷静沈着なのだろうか。ものすごく意外そうな声色が返ってくる。

「で、でも私も、耐久力がなかったかもしれないです。ごめんなさい」
「耐久力って」

 そんな、いつも彼女がやっているゲームみたいな言い方しなくてもいいのに。
 ちょっと笑いを誘う彼女の言い回しに目元を緩めて、互いに視線を絡めて笑い合う。

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 雀ちゃんが、わたしの身体を軽く持ち上げて、仰向けにもどると、ぴたりと身体を寄せて、抱き締めた。
 体温を伝え合って、どちらからともなく唇を重ねる。

 快感とかそういうものを求めるのではないキスは、互いのごめんなさいの気持ちと、好きの気持ちを伝え合う。啄んで、啄まれて、唇を離して、おでこ同士をくっつけた。

「愛羽さんに触って欲しいです」
「うん。わたしも雀ちゃんに触れたいし、気持ち良くなって欲しいな」

 間近で見つめ合いながら、微笑む。

「わたしに、預けられそう?」
「恥ずかしいのもありますけど、愛羽さんを好きな気持ちは何よりも大きいので、大丈夫かと」

 まだどことなく堅い考えだけど、彼女の気持ちはさっきよりは解れたみたい。
 わたしはおでこをゆっくり離して、触れるだけのキスをした。

「ゆっくりしていくから、だめそうだったら、言って? それよりもっと、もっと、優しくするから」
「はい」

 余裕ができたのか、ちょっと照れた顔をするけれど、頷く彼女に安心した。

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