※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 67 ~
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閉じた唇の向こうから、堪え切れずに漏れてくる声を、ひとつたりとも聞き逃したくない。
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「は、ぅっ……ん……!」
いわゆる下乳という部分にあたるのだろうか。
雀ちゃんの胸の膨らみがなだらかになってくるお腹に近い部分。ここからもう少し下へくだると、肋骨の一番下の骨が指に触れる。そんな場所の肌を強く吸いながら、額にあたる柔らかい胸の感触に、なんだか幸せを感じる。
――男の人がやたらと胸を揉んでくるのは、こういう感覚だからだったのかしら……だったら、分かる気がする。
温かくて、柔らかくて、吸い付いてくるみたいな肌。こんな枕があったら、絶対にいい夢が見られると断言できる。
そんな馬鹿な事を考えつつ、先程よりも強い力で吸う。
ここまでしてしまうと、痛いと思う。キスマークと言えば聞こえはいいけれど、要はうっ血だ。何に分類されるかというと、まぁ一般的に言えば怪我だ。
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やり過ぎたかも、なんて弱気な考えが脳裏を過ぎって、やっと彼女の肌を解放する。
目に映ったのは白い肌にくっきりと浮き出た紅い痣。左心房のそれよりもずっと濃い華を目にして、わたしの二の腕や肩、肩甲骨あたりの肌が粟立った。
彼女に印しているのは、愛情の証であり、それはまた別の呼び方では所有の証とも言われている。
――わたしだけの、ひと。
雀ちゃんがわたしを独占したいと思っている……と、思う。……多少は。
それと同じように、いや、もしかしたら彼女以上にわたしは独占欲が大きいかもしれない。
本当のところを彼女に直接聞いたことはないけれど、行動の端々にみられる独占欲。それは好意ととっていいと判断するけれど、その気持ちの大きさはわたしには見当がつかない。
好かれているとは思うけれど、それがどれくらいの熱量であるかは、測れない。
「彼女に好かれていなさそうな気がして不安」などとは全く思わないが、どのくらい好きなのか、独占したいと思っていてくれるのか。それはいつか聞いてみたい。
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一際濃い紅華にキスをして、顔をあげる。
さすがに、キスマークをつける事に執着しすぎて、痛い思いをさせてしまったかもしれない。
「ごめんね雀ちゃん、いたかった?」
言いながら、さり気に胸の頂きをチラ見してから、顔へと視線を向ける。
痛みなのか快感なのか分からないが、刺激のせいでさっきより尖っている気がした。
「い、たいことは……いたい、ですけど……」
口に手の甲を押し当てているからその表情の半分は隠れている。人間の表情は口で随分形成されるから、そうされると、どういう気持ちなのか、察し辛くなってしまう。
途切れ途切れなのは息が乱れているからだ。呼吸の間に紡がれたその言葉の続きを知りたくて、本当の気持ちを知りたくて、我慢なんてさせたくなくて、彼女の瞳を注視する。と、すぃと逸らされた。
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軽く目を見張る。
だって、彼女がこんなふうに視線を斜め下へと逸らすとき、雀ちゃんは必ず、何かを隠しているから。
もしもそれが、”こんなにキスマークを体中につけられるのは嫌だ”という考えだったとしたら……。想像するだけで冷や汗が出る。
「雀ちゃん? いやだったらちゃんとそう」
「い、いやとかじゃ、無くて」
わたしの言葉を遮る彼女の声が、軽く、震えている。
口元を隠す手はそのままだけど、先程と違うのは、チラチラとわたしを窺う視線。こちらを見ては、また斜め下へ。そこからまた、こちらへ。
何度かそれを繰り返したのち、小さな小さな声で。
「きもち、よくて」
と正直すぎるくらいに教えてくれた。
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