隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 62話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 62 ~

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 目に留まったのは、縛られた両腕。

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 ストッキングを破いちゃダメ、なんて忠告、無視しようと思えばできる。
 そもそも、伸縮性のある素材なんだから、頑張れば自分で解ける。

 なぜ、雀ちゃんがそうしないでいるのか、理由は……。

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 先程の言葉にある。

『今は……愛羽さんからの気持ちをどんな形でも受け取りたいと思いますし』

 こう彼女は言った。
 だから多分、わたしがもっとひどい拘束をしたとしても、雀ちゃんは今夜ばかりは抵抗せずに受け入れるだろう。

「雀ちゃん……」

 その、献身的とも自己犠牲的ともいえそうな渇望。
 焦がれている理由はもちろんのこと、安心を欲しているからだ。

 わたしが、会社の男性社員でもなく、蓉子さんでもなく、雀ちゃんだけを求めているのだと、確認して安心したいのだろう。
 

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 わたしは彼女のシャツを握っていた手をゆっくりと解き、雀ちゃんの肩の横に置く。その手で体重を支えながら雀ちゃんの唇を奪うと、ベッドがぎしりと音を立てた。

「好きよ。貴女が」

 唇を離し、鼻と鼻が触れ合いそうな距離で囁く。部屋にあるのは時計の秒針が動く音程度で、他に聞こえるものはなく、わたしの声は十分、彼女の耳に届いただろう。

 耳に届くと同様、傷付き、不安に苛まれている心にも届いて欲しいと願うけれど、こればかりは、どうしようもない。

 わたしの不用意な発言が彼女を傷付けたのだから、もちろん誠心誠意、傷が癒えそのことを思い出さなくなるまでケアしていこうと思っている。だけど、わたしの一方的なケアだけではなくて、雀ちゃんの心の持ちようも、傷の治りに関係してくる。

 現に、「どんな形でもあなたの気持ちが欲しい」と言う彼女は、わたしの好意を確認して傷を癒そうとしている。そうした前向きな気持ちを持ってくれる雀ちゃんには本当に感謝しているし、それ以上に、わたしの全霊をかけて全ての好意を伝えたいと思う。

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 だけど、こんな事を雀ちゃん本人に伝えようものならば、まだ大学生の身には重たすぎるだろう。

「大好き」

 好きか、大好き。これが、彼女に使える最大級の愛の言葉。
 歯痒いけれど、仕方がない。
 愛の重さをこちらで調整していなければ、彼女が潰れてしまうかもしれないから。

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「私も好きです」

 ほら。こうして彼女は、喜んでくれる。
 照れくさそうにちょっと目尻に皺を刻んで、はにかむ。

 わたしが物足りなく思う言葉でも、こうして受け取って、喜んでくれるのだから、今はこれでいい。
 そう思い込むことにしよう。

「ん」

 頷いて、再び、唇を重ねた。

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 示し合わせたかのように絡み合った舌の熱と甘さを堪能してから、キスを解く。
 彼女より一足早く目を開けていると、ゆっくりと大好きな人の瞼が開いてゆく。

 マスカラをしなくても長い睫毛を羨ましく思いながら、わたしを瞳に映してくれた雀ちゃんに微笑む。

「好きよ」

 いつも、彼女がわたしにしてくれる事なんだけど、キスのあと、目があって笑い掛けられると、きゅんとする。
 彼女も同じかどうかは定かではないけれど、もしも同じ感覚なら嬉しいなんて思いつつ、わたしは微笑みを緩めて、彼女の頬にキスをした。

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