隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 61話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 61 ~

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 頭が、というよりは、顔が沸騰しそうなくらい、熱い。

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「愛羽さんの好きにしていいですよ?」

 なんて、言うもんだから。

 優しくて甘い表情を見せるもんだから。

 身体中の熱を顔に集めたんじゃないかっていうくらいに熱くなった。

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 ピト、と押し当てている額にはじわっと汗がにじむ。
 顔が一番熱いと思っていたけれど、身体も十分、体温上昇している。下着しか付けていないのに、その下に汗を刷いてしまいそうなくらいには、十分、熱い。

「……」
「あれ、照れちゃいました?」

 わたしが何も言わないもんだから、雀ちゃんがちょっと調子付いて、揶揄う声音を使う。
 普段なら、さらっと躱せるその声音も、今ばかりは、真向からとらえて、余計、照れてしまう。

「だ、って……」

 彼女の両脚を跨ぎ身体の両サイドに膝をついて、肘も同じように腰の両サイドにつく。そうしたまま、額をお腹にくっつけて、顔を伏せている。
 傍からみればかなり間抜けな格好だけど、多分雀ちゃんの視界からではそこまで間抜けには映っていないはず。

 そんなことはとりあえず置いておいて。

 わたしは込み上げる恥ずかしさのあまり、彼女のはだけたシャツを握った。

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 その行為に雀ちゃんが目を丸くしているだなんて露知らず、わたしは先程の彼女の言葉に打ち震えていた。

 ――だって……っ、す、好きにしていいとか……!

 女の子が使う台詞の中で一番危険度が高いその言葉を、わたしに使うだなんて。

 確かにわたしの性別は女で、子を成すための成分は雀ちゃんとでは全部そろえる事は出来ないけど……。でも。あんな台詞言ったら、相手に何されても怒れないのに。

 もし仮にわたしが男で、さっきの台詞を言われたら……確実に避妊具なしでしてしまう。そのくらい、破壊力が大きい言葉なのに。

 自分が何を言ったのか、分かっているのかしら。と、雀ちゃんを少しだけ、窺う。
 わたしは顔をあげて、チラッと上目遣いに盗み見ようとした。

 だけど。

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 バッチリと雀ちゃんと視線がぶつかる。

 考えてみれば、何が盗み見るだ。
 わたしと雀ちゃんしかこの空間にいないし、今のわたしは絶賛照れモード全開で、彼女の注目を集めるには絶好の状態だ。

 雀ちゃんがわたしを、見ていない訳がない。

「ぁ、ぅ……」
「なんか珍しい照れ方してますね」

 ぶつかった視線を逸らすに逸らせず固まっているわたしを、頭だけ起こした雀ちゃんが眺めていて、その視線は”面白い”とか”珍しい”とかビシバシ伝えてくる。

「だって……」

 さっきから、だって、しか言ってない気がする。
 けれど、それ以外の言葉が出てこない。出てくるとしたら、恥ずかしいとかこっち見ないでとかそんなものだ。

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 だめだめ、おちついて。
 心の中で呪文を唱えて、静かに息を吐く。どれだけ静かに吐こうが、彼女の素肌にわたしの呼気が触れていて、こちらの心境はバレているのだけど、今のわたしはそれにすら気付けない。

「雀ちゃんが、あんな……台詞言うから……っ」
「どちらかと言うと、私が照れながら言う台詞ではあるんですけどね」

 小さく笑う彼女が言うことは尤もだけど、なんというか、違うのだ。
 わたしの感覚では、相手に全てを投げ出していいという意味の台詞を与えらえたほうが、照れる。

 そんなこと言ってくれるの? とか。
 言われたからにはいろいろしていいの? とか。
 今から彼女にナニをしよう、と思い描いてしまっている自分のはしたなさとか。

 様々な感情が鬩ぎ合って、結局、どうしようもなく顔が熱くなってしまうのだ。

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「愛羽さんになら、何されても構わないですし」

 ――また、そういう……っ。

「いつも私はする側で、色んな事したいって思う気持ちも分かりますし」

 雀ちゃんてば……いつも、そんな事考えてたの?
 わたしが胸中で呟いたとき、彼女の声の色が変化した。

「今は……愛羽さんからの気持ちをどんな形でも受け取りたいと思いますし」

 真剣味を増したその声に、ドキリとする。
 そして、その言葉の意味にも。

 どんな形でも、わたしの気持ちを受け取りたいと言う彼女。

 それは……たぶん。
 まだ、心のどこかに、わたしが与えてしまった不安が、燻って、その煤で、彼女の心を濁しているのだ。

 だからこそ、どんな形でもわたしの気持ちが欲しいと雀ちゃんが言う。
 わたしにはその言葉に応える義務があるし、義務という固い道理抜きにしても、元々、これは”好き”を伝える為の行為だったはずだ。

 だから何の問題もない。

 わたしはゆっくりと顔を上げた。

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