隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 52話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 52 ~

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 しかし、えっちはもうちょっと、置いとくとして。

「でもね、雀ちゃん」

 もうひとつ、大切なことを伝えなくちゃ。

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「たとえ貴女が何か大きな失敗をしたとしても、わたしは必ず、隣に居るから」

 さっきの話で、”失敗しない事が格好良いんだ”なんて考えを持たせない為にも、言っておく。
 失敗をいけない事、恰好悪い事、と捉えてそうな雀ちゃんだから、自己評価が低いのかもしれない。

 さっきも言ったけれど、失敗しない人間なんていない。その後どう学習するか、挽回するか、それが大切なのだ。

 失敗を恐れて丹念に準備を重ねていくのもいいかもしれない。だけど、”絶対に失敗してはいけない”と強迫観念に駆られるのは違うと、わたしは思う。

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「失敗だけじゃなくて、問題が起きたときや、心配事があるとき、不安なとき、必ず貴女の傍に居る」

 大きく見開かれた雀ちゃんの目。月明りで、彼女の瞳が若干、潤んでいるのを見つけた。

「それだけじゃなくてやっぱり……楽しいとき、嬉しいとき、怒ったときも」

 両手で包み込んでいた雀ちゃんの手を彼女のお腹の上へと置いて、わたしはそれに覆いかぶさるようにして、また、彼女と顔の距離を詰める。

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「これからずっと、貴女と一緒に居たいと思ってるの」

 仰向けに寝転がった彼女の顔の上。
 両手と両膝をベッドに着いて、真上から泣きそうな顔を見下ろす。

「いい?」

 雀ちゃんは口をヘの字になるまで引き結んで、唇を震わせまいと力をいれるあまり、顎が固くなっている。
 わたしは、ベッドに着いていた片手を彼女の頬へと運び、撫でた。

「今日みたいに傷付けちゃう日もあるし、もしかしたらこの先、喧嘩しちゃう日もあるかもしれない。だけど絶対、ごめんなさいって言うし、仲直りもする」

 大人げない自分勝手な行動で傷付けた彼女の心は、必ず、癒すから。

「嫌な思いをさせてしまった倍以上、楽しくて幸せな思い出、いっぱい作れるようにするから」

 頬を撫でたあと、こめかみあたりから、髪へ指を差し込んで梳く。

「だから、一緒にいさせて……?」 

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 月の光に反射して光ったのは、雀ちゃんの目尻へ溜まった涙。
 白い光を反射する様子は綺麗だと思うと同時に、それがどんな意味を持つ涙なのかが気になる。

 予想としては、わたしの言葉に感極まった嬉し涙なんだけど……もしもその真逆だったら、どうしよう。

「いて、ください」

 涙は流さなかったけれど、震える鼻声で雀ちゃんは続ける。

「愛羽さんが居なくなるなんて考えられません。傍に、居てください」

 鼻声で、震えている声が、「ずっと、いなくならないで」と最後に付け加えてくれる。
 瞳は潤みきっていて、今にもその目尻からこぼれてしまいそうだけれど、表面張力でも働いているのか、それは流れ落ちない。

 泣く所なんて見せたくないんだろうと目尻の涙を攫うように、拭うように撫でてあげて、そのまま、頬を撫でる。
 この指先から”好き”が少しでも多く、伝わればいいと願いながら。

「ずっと?」
「ずっと」

 再度問えば、頷きながら答えてくれる雀ちゃんがかわいくて、大好きで。
 彼女がくれた言葉で、胸が苦しいくらいに幸せが溢れてくる。

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 貴女を傷付けた人間をこうも求めてくれるなんて。

「ありがと」

 胸が詰まって、それだけしか言えなかった。
 仕事の話からいつの間にか、こんな核心の話になっているけれど、そんなことは全く関係ない。

 いや、正確に言えば、そんなことを気にかけられる余裕すらなく、雀ちゃんがくれた言葉に、感動しているのだ。

 今日、ついさっきだ。わたしがこの子を傷付ける失言をしたのは。
 なのにも関わらず、いなくならないでくれと言ってくれた。

 そこまで、彼女にとって必要な人物のポジションを確保できていたことが嬉しいし、それを聞けたことも、ここ最近で一番、嬉しいと思えることだ。

 切なさできゅうきゅうと締め付けられる胸の奥から、幸せが溢れてきて、溺れてしまいそうだ。

「愛羽さん。……好きです」

 ――あぁ…も……この子は……。

 幸せで苦しい胸が、もっと、苦しくなる。
 ベッドに着いた手でシーツを握り込み、掠れる声で、わたしも告げた。

「わたしも、雀ちゃんが大好きよ」

 と。

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