隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 47話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 47 ~

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「ぁっ、ちょ……くすぐっ、た」

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 ストッキングに縛られた両腕が、雀ちゃんの頭上から下ろされてきて、わたしの頭に触れる。若干押すようにしているのは、言葉通りくすぐったいからなのだろう。

「んん?」

 おへその横に咲いた華を、伸ばした舌先で撫でてから、わたしの行為を遮ろうとする両腕の結び目を捕まえた。

「それ、破いちゃダメよ?」
「え?」

 顔をあげれば雀ちゃんが頭を起こしてこちらを見ている。その表情はわたしが言った”それ”が何を指しているのか、理解しかねているようだった。

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 両手首を縛っているストッキングの余りを指で摘んで、ひらりと振る。

「こ、れ。破いちゃだめ」

 替え、あったかしら? と呟く。

 ――うーん、一応常に替えは用意しているから家にあったと思うんだけど……。

 記憶が定かでないから、雀ちゃんに釘を刺しておく。

 思い出すように左上へ向けていた視線を雀ちゃんに戻せば、頬を引き攣らせていた。

「あら。もう破いちゃった?」
「や、そういう訳じゃないですけど……」

 いざとなったらストッキング破ってでもわたしの下から逃げ出そうとでも画策していたみたいに、参ったという顔をしている。
 なんというか、こういう時でも彼女は、自分の保身よりわたしの言う事を守ろうとしたり、替えがないなら破る訳にはいかない、と人のことを優先して考える。

 そもそも今日は酷い事を言ったわたしだし、ストッキングなんてコンビニに行けばあるのだから、明日の朝早起きして買いにいけばいい、と言ったりしていいのに。

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 優し過ぎる彼女が、可愛くもあり気の毒にも思ってしまう。
 わたしの頭を押し返そうとしていた両腕を顔の真上まで持ち上げた彼女は、難しそうな顔でストッキングを一瞥して、こちらに視線を寄越した。

「ぜ、善処します」

 できるかどうかは不安だけど、と顔に書いてある。

 健気な言葉とその姿勢に、犬のような忠誠心を見る。普段から構うと喜ぶとこなんか特に、犬みたいで可愛いと思っていたからか、今は余計に、可愛い。

 つい、雀ちゃんのお腹あたりからずりずりと上へ這い上がって、彼女の両腕を押し上げて、鼻先同士が触れそうな距離まで近づく。

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「好きよ」

 目を瞬かせる彼女にもう一度好きと告げながら、その唇を奪う。
 数度啄んでから、唇を離し、今度は頬に、瞼に、額に、キスをする。

「ぁ……」

 微かに聞こえた雀ちゃんの声に甘さを感じとり、小さく笑む。
 そのまま、前髪の生え際、こめかみとキスを贈って、耳へ唇を寄せた。

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「好きよ。雀ちゃん」

 耳の傍なのだから、吐息で喋る。
 ここなら、どんな小さな声だって、気持ちは伝わるのだから。

「好き」

 軽くキスをしてから、耳の輪郭に沿って唇を触れさせていく。多分、くすぐったさ半分、気持ち良さ半分といったところか。彼女は逃げるように首を竦めてから、耳を遠ざけるように真横を向いてしまった。

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 つれない反応に、わたしはつい、拗ねるように口を尖らせた。
 くすぐったいのも、もう少し耐えてくれていたら、だんだん気持ち良くなっていくのに。

 経験からそう胸中で溢すけれど、そんなものは雀ちゃんには関係ないのだろう。
 その真っ赤な耳から察するに、今は恥ずかしくて、くすぐったくて、ちょっぴり気持ち良くて、どうしていいか分からない状態。

 首を竦めて逃げたのも多分無意識に近い行動で、耳の横に心臓があるみたいに大きい心音を聞きながら、少し乱れた息を整えようとしている真っ最中の雀ちゃん。

 いつもなら意地悪したくなっちゃう所だし、今も彼女の耳元へ擦り寄って「ねぇ、気持ちいいから、逃げちゃったの?」と囁きながらその真っ赤な耳朶へ舌を這わせたいくらいだ。

 だけどそれをしないのは、彼女が健気にもストッキングを破るまいとして両手の指を絡めて組んで、ぎゅっと握っているから。

 そんなふうに健気に言いつけを守る雀ちゃんをみたら、意地悪をしようだなんて気は失せるし、もっと、”好き”が込み上げる。

「大好きよ、雀ちゃん」

 囁いてから、わたしはゆっくりと彼女の髪を撫でた。

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