隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 43話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 43 ~

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「あ、いは……さん」

 さっきも同じような感じで呼ばれた気がする。

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 わたしの思う”さっき”が何分まえのことなのかは、わたしも、雀ちゃんも、分からない。
 だって、二人ともキスに熱中して、今し方彼女は、自分で処理し損ねた唾液をわたしの口内へ流して来たくらいだもの。

 それに対してわたしも、ツゥ……と彼女の舌を伝っておりてきた唾液を自ら舐めとり、喉を鳴らした。

 平常時では恋人とはいえ他人の唾液を飲むだなんて考えられない。
 だけど、興奮という状態は恐ろしいもので、感覚や考え方まで変化させてしまう。

 唾液を飲んでと言われれば飲むし、なんならむしろ、自分から吸い取ってしまうほど、相手の全てが欲しくなってしまう。

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 雀ちゃんの一部であった唾液を飲み込むと、わたしは心臓のもう少し奥まったところから全身へと痺れの波が広がってゆくのを感じた。
 まるで衝撃波のように身体全体を痺れが覆って、まだ触れられてもいないのに、子宮がきゅうと反応してしまう。

 彼女の首に回していた腕を解いて、濡れた唇を指で拭う。
 てらりと光るそれすらも、舐めてしまいたくなるけれど、そこはさすがに、止めておく。

「なんか、ゾクゾクするね、コレ」

 話しはしなくちゃいけない。分かっているんだけど、もっと雀ちゃんが欲しい。
 とりあえず、いつまでも立っているのもどうかと思うし、と言い訳を胸中に並べてベッドへ誘う。

 雀ちゃんのコトだから、ベッドじゃなくてソファで話をしませんか、とか言うんじゃないかと予想していたんだけど、意外にもすんなりと頷いてくれた。

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 ならば彼女の気が変わらないうちに、と手を引き、部屋の電気もつけずにベッドの傍まで行く。
 引っ張ってきた彼女と向き合う形で立ち、わたしは、彼女をベッドに押し倒した。

 思った以上に雀ちゃんがどさっとベッドに倒れ込んだものだから一瞬焦るけれど、「ちゃんと、教えてくれるんですよね?」と蓉子さんの話の追及を始めたものだから、まぁ大丈夫なんだろうと一人納得した。

 雀ちゃんの肩を押して仰向けに転がす。
 蓉子さんとの関係を簡単に説明しながら、彼女の体を跨いで座る。

 蓉子さんを引き合いに出して説得を試みるけれど、もっともなツッコミを頂いて、口を噤んだ。

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 ここに証人でも居るなら、証拠があって、話は手っ取り早くまとめられるんだけど、そんな人物はどこにもいない。

 わたしと蓉子さんが、二人の関係はただの師弟関係だと言っても、「そんなの口裏を合わせているだけだ」と疑われてしまうと、もう証明のしようがない。

 身から出た錆だ。わたしが嫉妬する雀ちゃんが可愛いから調子に乗って、あんな意味深な言い回しをしたからいけない。
 雀ちゃんに疑問と疑心を与えたのはわたしだ。

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 言葉を変えて色んな言い回しをしてみても、事実はひとつなので、代わり映えのしないわたしの言い分。
 けれど、言葉を重ねれば重ねるほど、嘘臭く聞こえやしないかと不安になり始めた。

 だからといって、説明や弁明を止めるわけにもいかない。
 なんと言えばいいのか分からなくなってきたとき。

「あんな嘘は嫌です。もうしないって約束してくれたら、今回は許してあげます」

 正直、助かった。

「うん。約束する。ごめんね?」

 即座に言いながらも、彼女から全ての疑問や疑心が無くなった訳ではないだろうとその瞳を探る。
 月明りではハッキリと雀ちゃんの表情を窺うことはできないけれど、晴れやかな顔ではないことは確かだ。

 我慢、させてしまっているのだろう。
 そうさせたくないという思いとは裏腹に、わたしが彼女に我慢を強いている。

 ――ごめんね。本当に。

 どうやったら彼女の心を晴れさせることが出来るのか。

 そもそも、心を曇らせたわたしに、そんな役割が果たせるのか。

 いや、でも、それが出来なかったからといって、努力を怠るのは恋人として、人として、良くない。
 出来る限り、雀ちゃんに伝えたい。

 わたしがどれほど貴女に惚れているのか。
 どれほど好きでいるのか。
 過去の恋人に頓着しなくても良いと思わせられるくらいに、わたしが雀ちゃんを好いているのか。

 伝えるにはどうしたらいいのか、思案しつつ、雀ちゃんと唇を重ねた。

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