隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 42話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 42 ~

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 我慢をしないで欲しい。

 気持ちを伝えて欲しい。

 それはわたしの、身勝手な要求なのかもしない。

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 わたしの口内へ侵入してきた熱に、舌を伸ばしながら、ぼんやりと考える。

 だって、我慢で築き上げた関係は破綻しやすいという定義を持っているのはわたしだけだし、今現在、それを雀ちゃんに伝えて説明した訳でもない。

 本当の気持ちを隠さずに教えて欲しいというのも、こちらからはさっきの失言の裏にあったやましい気持ちを教えてもないし、彼女にばかり、隠さず教えろというのは、非常に身勝手な気がしてきた。

 ――ああもうなんでこんなに頭の中ぐちゃぐちゃなの。

 何も考えずに、ただただ抱き合って、快感に溺れて、体力の限界が来て、いつの間にか眠ってしまえたら、どれだけ楽だろう。

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 好きな気持ちは間違いなくあるのに、それ以外の気持ちが、純粋だった好きの気持ちに不純物を加えている。

 ――このキスで、好きな気持ちだけ全部伝わればいいのに。

 言葉を操る人間に生まれた時点でそれは無理な話だ。だってわたし達は伝達手段を多く持ちすぎているのだから。
 それらを使わずして、全てを伝えきるなんて出来ない。

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 玄関に入ったばかりのキスとは違って、すこし落ち着きを取り戻している雀ちゃんは、呼吸の間をとってくれながらも、ねっとりと舌同士を擦り、舐め合わせるキスをしてくれる。

 不覚にも、目的をもった作戦のキスなのに、脳が痺れてくる。

 ――雀ちゃんを興奮させる為のキスだったのに、自分がしてどうするのよ。

 自身を叱咤するけれど、二の腕あたりはもう鳥肌がたっている。
 熱同士が口内で直接絡まり合うそれは、無意識にわたしの口から甘声を誘い出す。

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 閉じた瞼の裏で、白色が一瞬ちらついた。
 目を閉じていると色なんて見えないはずなのに、気持ち良くなると一瞬過ぎるその白色。

 それを目撃したということは、自分は気持ち良くなっているというサインだった。
 わたしの口内を探るように動いていた雀ちゃんの舌が、抜き取られる。

「ちゃんと話してくれないと、先に進めませんよ?」
「終わってからじゃなくて……?」

 深いキスが終わってしまったことが名残惜しくて、思わず、口を突いて出たその言葉は、明らかに、ミイラ取りがミイラになってしまっていた。

「終わってからじゃなくて、今」

 すこしだけ強められた口調に、むっとしてしまう。

 だって、こんなに気持ちいいキスをしたのは雀ちゃんで、わたしを不覚にも興奮させたのは貴女なのに、おあずけだなんて。

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 こちらが誘っても素っ気無いキスしかしてくれなかった雀ちゃんをにらみあげる。

 ――もうすこしだけ。

 項を引き寄せても反発するみたいに後ろへ退こうとする彼女。
 だったらいいもん。わたしから行くから。

 踵を軽く持ち上げて背伸びする。

 少し強引だったか、雀ちゃんは驚いた気配を滲ませるけれど、わたしは構わず、重ねた唇を割るようにして、彼女の口内へ舌を挿し込んだ。

 舌は伸ばせば自然と硬さを増す。
 だけどそこを頑張って、舌から力を抜いて柔らかさを保てば、相手に気持ちいいキスだと思わせ易い。

 腕などの皮膚であっても、硬いもので撫でられるより、柔らかいもので撫でられたほうが気持ちいいのと同じ原理だ。

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 おずおずと絡んできた舌を可愛く思いながら、ある程度で呼吸の間を作る。
 息苦しさは時に判断力を失わせて媚薬のような効果をもたらすけれど、今はその時ではない。心地良さを前面に出して、雀ちゃんとのキスを長引かせたい。

 完全に自分の仕掛けた罠にかかって自爆しているわたしだけど、好きな人とのキスが気持ち良くて、もっとしたいという欲求が湧くのは当然だ、とだけ言い訳をしておく。

「ぁ、ぃ……はさん……」

 話しをしてからって言ったのに、と言いたげな雀ちゃんの瞳。ちらちらと欲情が見え隠れしていて、わたしは小さく笑った。

 ――自分だってもっとしたいくせに。

「もっと、キスさせて」

 そうやってじりじりと燻っている欲情を大きくさせたい。
 貴女以上に、欲情している女がここにいるの。

 お願い。
 もう少しだけ、貴女をちょうだい。

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