隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 41話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 41 ~

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 謝ると許してくれる彼女に、わたしは甘えていた。

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 エレベータで彼女の腕の中へ収まったわたしを、自宅へと引き込む雀ちゃん。
 エレベータや廊下という公共の場で話し込む訳にもいかないと思っていたわたしは、彼女の自宅の玄関に足を踏み入れてから、改めて、謝ろうとした。

 それを遮ったのは彼女で、壁に背中を押し付けられて、さらに、キスで言葉を遮られた。

 啄むというよりは、噛みつくと表現したほうがしっくりくるキスは、あっという間に深いものに変わって、わたしに快感と息苦しさを与えてくる。

 謝らなければいけない立場のわたしなのに、キスで気持ちよくされて良いのだろうか。疑問が浮かぶけれど、その答えを探す前に、意識は彼女の舌へと向けさせられる。

 生き物のようにうねり、口内を犯すそれに、首を竦めたくなる。
 いつもよりずっと性急なキスに痺れると同時に、そろそろ、息継ぎをさせて欲しいと彼女の肩を叩いた。

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 その後、不自然なくらいにあっさりと、わたしの暴言を許すと言ってくれた雀ちゃん。
 何か、もやもやしたものを感じて、彼女を見上げるけれど、その真意が掴めない。

 あんな、血の気が引いた顔をする程の暴言を、一晩言いなりになる交換条件で許せるのだろうか?

 聞き分けが良過ぎる。もっと、我侭を言っても構わないのに。

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 わたしが悪いことをしているのに、それに対する雀ちゃんの行動を我侭と表現するのもナンだが……。
 雀ちゃんは……年の割に、自制心が強すぎる。

 遠慮しすぎるというのか、どこか自分を律し過ぎていると思う。

 例えば嫉妬しても、次の瞬間には表情を変えて、「大人の付き合いって大変ですね」とわたしを気遣うような台詞を言うのだ。

 まだ若いのだから、「自分以外と食事に行く話をするだなんて!」と嫉妬して機嫌を悪くしてもいいと思うのに、そんなことはしない雀ちゃん。

 付き合いたての頃は、心の底から天使のようにいい子なんだと思っていたけれど、違うと分かった。
 最近は、度々見かける嫉妬の欠片と、それを覆いつくす自制心に、正直、もやもやしていたところだ。

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 もっと、自分を出していいのに。

 胸中で彼女に対して呟くけれど、それを口に出していい立場ではない。

 わたしは、先程の自分の失言に溜め息をついて、彼女の項へ手をかけ、引き寄せた。

「雀ちゃんのやきもちが可愛くて欲張り過ぎた罰ね。ごめんなさい」

 貴女に、我慢をさせて。
 と心の中で付け加えて、眼前にまで引き寄せた雀ちゃんと唇を重ねた。

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 雀ちゃんの性格として、性的に興奮すると箍が外れる傾向が強い。
 だから、ベッドやソファの上ではなく、この玄関でのイレギュラーなキスで興奮させて、本音を聞き出せないかと、仕掛けたのだ。

 顔から血の気が引く程傷付いたのなら、それを隠す我慢はさせたくない。

 雀ちゃんからすれば我慢して不満を口に出すほうが、不慣れでやりたくないと思うことであっても、「うそつきはきらいです」だなんて何重ものオブラートに包んだ言葉じゃなく、正直に直球で、心根を言って欲しい。

 我慢することに慣れさせてはいけないと、わたしは思う。

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 元カレと付き合っているとき、わたしは我慢をしていた。
 毎週毎週、火曜日の夜に行われる行為。

 その日どれだけ疲れていても、翌日どれだけ朝が早くても、わたしの予定を鑑みずに決行された行為や、減っていく日常会話。

 マンネリの関係を修復するにしても、別れるにしても、状況を打開する行動を起こさなかったわたしも悪い。そこで、我慢するのは、間違っていたのだ。

 これから長く一緒に居たいと思う雀ちゃんだから、我慢せずに、教えてほしい。言ってほしい。

 我慢で続く関係なんて、良好なものではないと思うから。

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