※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 40 ~
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―― 愛羽の場合 ――
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彼女の嫉妬は可愛いと思っていた。
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雀ちゃんと付き合ってきて徐々に判明したのは、彼女が独占欲が強いひとだという事。
例えばわたしが会社の男性社員に、「今度ご飯に行こう」とお誘いを受けたのだと話すと、むっとした表情をする。
でも、それは一瞬のことで、タイミングが悪ければ瞬きで見逃してしまうくらいだ。
次に現れる表情は決まって、眉尻を少しさげて困ったようなもの。
そして彼女は言うのだ。
「大人の付き合いって大変ですね」
と。
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そんな話をした日の夜は決まって雀ちゃんは、わたしを抱く。
限界まで焦らして強請る言葉を言わせることも多い。
たぶん、わたしが求める言葉で、どこか安心を得ているのではないかと思う。
時たま表に現れる、雀ちゃんの中にある劣等感。
それは年の差や社会人と学生という立場の違いなどから来るのか、はたまた、何か他の原因から来るのか。
それをわたしが知ることは出来ないが、気配を感じる事は出来る。
はっきりと雀ちゃんの言葉で聞いたことはないけれど、「会社の男性社員にわたしを取られるのではないか」というようなある種の強迫観念を抱いているよう見受けられる。
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その強迫観念の気配を感じる度に、わたしは言葉と行動で”雀ちゃんが好きだ”と再三伝える。
わたしは貴女のものだから大丈夫、という意味も込めてのことだが、いかんせん、人間というものは負の思想に負けやすい。
縋るようにわたしを求めてくれる必死な姿は、とても甘美だ。
心の底からわたしを好きだと伝わってくる。
だから、彼女の嫉妬を、可愛いと思ってしまった。
行き過ぎると、彼女を滅ぼす毒にもなると、露さえ思わずに。
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蓉子さんとわたしの関係を気にする雀ちゃんを見て、”あぁいつもの嫉妬かしら。可愛い”と呑気に思った。
そして、酔っていたこともあり、それをさらに焚き付けようと、意味深な言い回しが、わたしの口を突いて出た。
『蓉子さんと、何があったか、知りたい?』
元々、雀ちゃんと蓉子さんは知り合いだったみたいだし、知り合いにそこまで嫉妬するものではないだろう。
一方的な価値観でそう予想して吐いた煽り文句が、彼女を傷つけるとは欠片も思わなかった。
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明るい照明が照らすエレベータホールで見た雀ちゃんの横顔。
一気に血の気が引いていったその顔色に、酔いも醒める。
――いけない。やってしまった。
彼女の嫉妬が可愛いと思うあまり、それを煽り、果ては傷つけてしまった。
傷つけるつもりはなかったなんて言い訳は通用しない。そんな言葉は今すでに傷付いている相手には不必要であり、不適切だ。
すぐに先程の台詞を撤回するけれど、彼女はわたしを置いてエレベータへ無言で乗り込んだ。
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うちのマンションのエレベータには奥が鏡張りになっている。
そこに映る雀ちゃんは少し俯いて泣きそうな口元をしていて、自分の顔がエレベータ奥の鏡に映っているなど、気付いていない様子だった。
立ち止まった彼女は、くるりと、わたしに向き直る。
「うそつきは、きらいです」
意図的に震えを消された声。唇を引き結んだ雀ちゃんの瞳は、わたしを見つめた。
責めるようでも、疑うようでもある瞳の彼女は、両手を広げる。「おいで」という言葉こそないものの、その両腕はわたしを迎える以外のものではなくて、今のわたしにそんな資格はないのに、泣きそうになった。
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