※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 38 ~
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え゛……!?
そう思った時には、もう遅かった。
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なんで。
いつの間に。
キスの間…っていうか、私が蓉子さんのコトを考えている間か。
にしても何で私の両腕を縛って……?
「……ストッキング」
頭の上にまとめあげられている腕を、視界に入るまで下ろすと、腕に絡みついているのは肌色の伸縮性に富んだそれ。
こうまでして、私の腕を縛りたいのかと、ストッキングから愛羽さんに視線を移せば、弧を描く瞳。
「だって、雀ちゃんが納得してないんだもの」
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納得? 何を納得してないって?
腕をずっと宙に浮かせておくのも大変なので、枕の上にぼふと下ろして力を抜いた。愛羽さんの言う”納得”が、何を指しているのか分からずに首を傾げる。
「蓉子さんと何もないっていう事にあんまり納得してなさそう」
「……」
図星を指されて唇がぴくりと動く。それを目に留めた愛羽さんは私のシャツのボタンを上から外しつつ、眉尻をさげた。
「それでも理解はしてくれようとしてる所が、雀ちゃんらしいのよね」
……、どうも、私の思考は全部筒抜けらしい。
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蓉子さんと愛羽さんが昔恋愛関係であったり、体だけの関係であったり、師弟関係以外の何かしらがあったかもしれない。でも、なかったかもしれない。
その証拠は今ここに無いし、店長、蓉子さん、まーさんに尋ねて回っても、確たる証拠は得られないかもしれない。
それでも、今は愛羽さんが「師弟関係以外は何もなかった」と言うのだからそれを信じようとしている最中だ。
「わたしは貴女よりも歳が上で、人生経験もあるから……信じようとしても信じられない気持ちも分かるわ」
ボタンを外していた手が戻ってきて、私の頬を指の背で撫でる。
軽く、さらりと撫でてゆく指が優しくて、鼻の奥がツンと痛んだ。
私はそんなに優しくしてもらっていい人じゃない。
だって、愛羽さんをすんなり信じられない理由の大部分は、私にあるから。
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自分に自信がないのだ、私は。
こと、恋愛においては。
あのトラウマ以来、自ら進んで恋愛をしようとしてきた経歴はなく、相手から言い寄られれば身体を重ねるパターンばかりだった。
だから、求められる事実があれば、自分は好かれているし、それが自分の自信に繋がった。
だけど愛羽さんに告白したのは私だし、お付き合いをして仲良くなればなるほど、彼女の大人な部分を目の当たりにして、大学生の自分が幼く思える。
もし、もしもだ。
愛羽さんが蓉子さんと関係をもっていたとしたら……愛羽さんの目には私が随分、幼く拙く、映っていることだろう。
蓉子さんと一緒に過ごしたその後は、特に、私が出来損ないに見える筈だ。
だから、蓉子さんとはこうやって出会って、こんなふうに師弟関係を築いてきて今はこんな感じで会っているんだ、とか、もっとちゃんと教えて欲しいのを、我慢している。
聞き分けの無い子供だと思われたくなくて。
他人の過去に執着する小さい人間だと思われたくなくて。
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その背伸びが不格好だという事は自分でも薄々気付いているのに、知らんふりを決め込んで、必死に、彼女によく見られようと見栄を張る。
愛羽さんに嫌われたくない。
愛羽さんを自分だけの人にしたい。
出来ることなら、自分以外の歴代の恋人の記憶を消し去って、私だけと付き合った記憶で埋め尽くしたい。
でも、そんなことは不可能だから、せめて、聞き分けの良い理想的な恋人であろうと必死に体裁を繕う。
自然体では、蓉子さんみたいにやる事がスマートで粋な人間性は出せないから。
彼女の過去に執着なんてしない大人を、演じているのだ。
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