※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 35 ~
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抱かれるのではなく、貴女を抱きたい。
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そう強く思った矢先。
「逃がさないから」
降ってくる低めの婀娜っぽい声。同時に先程から腕に押し付けられていた硬い感触が、ずずずと手首から軽く曲げた肘までを伝う。
「ン、ぐ」
痛みまではいかないが、その強く押し当てられたものが腕を這う感覚に声が出そうになる。唇で阻止して喉奥へと押し込めるように耐えたが、洩れた声を耳にした愛羽さんは、さも愉しそうに笑う。
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「爪、そんなに気持ちいい?」
囁く声にも愉悦というものは含められるらしい。
先程よりも声を抑えて、愉悦と揶揄いをふんだんに散らしたそれを、私の耳に届ける愛羽さんの瞳は、サディスティックな色が滲んで見える。
押し付けられていたものは、爪だったのか。とその正体を知って感心するが、一方ではそれどころではないと焦りが湧く。
だって、愛羽さんのSのスイッチが入りかけている。いやもう、もしかしたら完全にSが目覚めているのかもしれない。
マウントポジションを取られた時点でその事実はあったようなものだったが、気付くのが遅かった。
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「もっとしてあげたいけど、先にキスさせてね?」
誰も気持ち良くして欲しいだなんて言ってない。逆に、気持ち良くしてあげたいのだ。
私の内心も知らず、彼女はゆっくりと顔を寄せる。唇同士の距離があと5センチになってから、私を射貫くようなSっ気の溢れた瞳を瞼でゆっくりと覆うのだ。
「……」
そうされてしまうと、条件反射というか習性というか。
相手に合わせるようにこちらも目を閉じてしまうのだから、我ながら、この状況を打破しようという気があるのかと疑いたくなる。
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流されてはいけない。
そう心に強く思うものの、大好きな人の柔らかい唇を押し当てられると、応えるようにそれを啄んでしまう。
腕に立てられていた爪はいつの間にかいなくなり、代わりに指の腹が優しく肌を撫でている。
いわゆる万歳をすると、上から腕を押さえる相手に見せているのは、”気を付け”をしたとき体の横にくっついている面だ。つまりは、普段、他者から触れられる機会がない部分。
そこをやわやわと撫でられれば、くすぐったさがこみあげる。
「……っ」
大笑いする訳ではないが、くすぐったさについ、唇からふっと息が漏れた。
当然薄く開いた唇の隙を見逃す彼女ではない。熱い舌が侵入してきて、歯を撫でる。
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いけないと自分を諫めつつも、歯を越えてきた彼女のそれに、自らの舌を伸ばしてしまう。この性。どうにかしたい。
ヌル、と舌同士が触れて、絡まる。
微かな水音をたてて、私達は互いのそれを愛撫し合った。
「……はっ、……」
舌を舐られ、歯茎を撫でられ、上顎をくすぐられるキスでは、完全に主導権が愛羽さんのものだ。
呼吸の間も、彼女に与えられる。許された瞬間しか、私は酸素を貪ることができない。
掌握され、管理されたキスに、頭がぼーっとしてゆく。
もしかすると、深く貪られるような口付けと管理された呼吸の間のせいで、酸欠になってきているのかもしれない。
そんな状態にも関わらず、愛羽さんが誘うように舌を引けば、必ず追いかける自分に呆れてしまう。
……でも、だって。
魅力なのか、魔力なのか。
彼女から溢れるなにかに抗えず、求めてしまうくらい、私は愛羽さんに虜なのだ。
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