※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 32 ~
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見た目は女性で、体は男性な蓉子さんの正体について、付き合いの長い愛羽さんが知らない訳もなく。
私の上に跨って、私の言葉に項垂れていた愛羽さんは、小声で悪態をついた。
「ややこしい」
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項垂れ前髪で隠れていた顔がこちらへ向けられると、表情が窺えるようになった。
なんとも言えない表情だが、”ややこしい”の言葉は多分、蓉子さんに向けてのそれだろう。
「蓉子さんの性格も人格も性的思考も受け入れているけれど、ややこしいわね」
顔に掛かった髪を手で梳き耳へ流しつつ、愛羽さんはゆっくりと上体を倒す。
彼女の言う”ややこしい”には、棘も侮蔑も含まれていないから、なんというか、愛情あっての”ややこしい”んだと思う。
また、そういう部分を見せられると、嫉妬心が湧き上がってくるので、こちらとしてはとても困るのだが。
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私の顔の横、肩の上あたりに手を突いて、さらに上体を倒してくる愛羽さん。彼女の表情は、カーテンを閉めていない窓からの月明りでよく見える。
この部屋に入ってからベッドへ直行してきたので、もちろん照明は点けていない。
だから、私達の視界は月明りでもって保たれているのだ。
私が見上げる視界には、恋人の姿。
どうして私を押し倒して、上に跨っているのか。
そうしたいと玄関で思っていたのは、私の方なのに。
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「何もないという証拠が何もないってコトを初めて体験したわ」
「何もないのに、あんな言い方するから悪いんです」
隠していた関係性でもあるかのように「蓉子さんと、何があったか、知りたい?」だなんて言い回しをするからいけない。
そんな台詞を聞くまでは、まぁ多少の嫉妬はあれど、どんな関係なのだろうかとほぼ純粋に近い気持ちだったというのに。
「ごめんね? 蓉子さんとは本当に何もないの。バーのマスターと客っていう関係で、社会人になりたてだったわたしに社会に潰されない為の方法を教えてくれていた……そうね、わたしにとっても師匠って呼んでもいい人」
完全に上体を倒し、私にぴたりと寄りそう愛羽さん。ベッドに肘をついた手で私の髪を優しく撫でてくれる。
それでほだされたという訳でもないが、間近で見つめる彼女の目は嘘をついているようでもないし、それこそ、蓉子さん本人や店長を伝って情報収集は出来る。
それを理解していない愛羽さんでもないだろうから、ここで嘘を吐くのは愚策だと分かっているはず。
そして。
何よりも、良くない言い回しを用いた事を何度も謝っている恋人が、何もなかったのだと訴えるのだから、ここは信じるのが恋人としての役割ではないか。
「あんな嘘は嫌です。もうしないって約束してくれたら、今回は許してあげます」
「うん。約束する。ごめんね?」
即答に近い返答。
今まで付き合ってきて、愛羽さんが不真面目なひとではないと知っている。私に対して、誠実に向き合ってくれている。
今回はアルコールのせいもあったということで、私はようやく、溜飲を下げた。
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